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事業再構築補助金のデメリット①~お得だからと不要な投資にご用心〜

事業再構築補助金の公募が間近に迫っています。

一兆円を超える予算が組まれた大型補助金のため、申請を計画している事業者さんも多いでしょう。

しかし、補助金のメリットを聞く機会は多い一方で、デメリットについてはあまり聞きません。

このため、補助金を無事もらえることにはなったものの、こんなはずじゃなかったということがよく起こります。

そこで、今回は事業再構築補助金のデメリットをご紹介します。

分量の都合で複数回に分けてご説明する予定です。

初回は補助金をもらいたいがために、不要な投資まで補助金で行ってしまう危険について説明します。

事業再構築補助金申請前の最終確認にでも使っていただければと思います。

補助金ありきで考えることで判断を間違える

補助金は返さなくてよいから得だということで、不要な投資や、やるべきでない投資をしてしまうケースが意外に多いです。

結果として多額のお金をかけたにもかかわらず、赤字が拡大しかねません。

良識のある専門家であれば事前に注意してくれるなど、色々な方が口をすっぱくしておっしゃっているので聞いたことのある方も多いでしょう。

しかし、それだけたくさん言われるということは、とても大切なことであるということと、そのようなケースが後を立たないという現実の裏返しでもあります。

長くなりますが、本項の内容は補助金を利用する上での本質的なことなので、聞いたことがあるよという方も再度ご確認いただければ幸いです。

補助金で投資することの、何が悪いの?

補助金を使って投資する。一見何の問題もなさそうです。

しかし、ここには大きな落とし穴があります。

タダでもらえるお金の誘惑はものすごく魅力的なので、補助金をもらう段階では補助金の採択を最優先しがちです。

その結果、将来の見込みを実際以上に楽観的に考えてしまうという判断の歪みを引き起こしやすくなります。

具体的には、申請にあたり数年間の数値計画を作る必要がありますが、非現実的な数値にしてしまう可能性があるということです。

この場合、補助金を無事もらえたとしても悲惨な結果になることになります。

例としてグループ補助金のケースで説明します。

グループ補助金とは、東日本大震災の被災事業者が施設を復旧するために設けられた補助金です。

私は以前東北で被災事業者の支援をしておりました。

グループ補助金は関東では多少情報格差があったようですが、東北では認知度が非常に高く、ほとんどの事業者が利用しておりました。

そして、多くの被災事業者は震災前と同規模の工場や設備を申請し、取得しました。

しかし、中には設備復旧までの期間に販路の一部を失った事業者もおりました。

残念なことに、そのような事業者は工場設備を補助金で再取得しても、稼働率は非常に低いままです。

しかし、電気代や水道代などランニングコストは稼働率に関わらず設備の規模が大きいほど多額になってしまいます。

この結果、売上は伸びないけれども固定費の負担が大きく、固定費を回収できないという状況に陥ることになりました。

繰り返しになりますが、補助金を申請する段階では、補助金をもらうことが第一となり、設備取得後の売上の実現可能性やランニングコストまで本気で考えることは難しいでしょう。

しかし、投資効果の見積もりが甘いがために不要な投資をしてしまうと、たとえその投資金額の大部分を補助金でまかなったとしても、結果として苦しむのは事業者さん自分自身ということは肝に銘じた方がよいですね。

不要な補助金を申し込まないためには

このような状況に陥らないためにはどうすればよいでしょうか。

一つの方法は、数値計画における損益を分解し、現実にイメージできるかどうかで判断するということです。

飲食店の数値計画を例にあげます。

飲食店の売上は客単価×客数で計算できます。

年間の売上を客単価と客数に分解してもピンときませんが、これをさらに分解していきます。

年間の売上を12で割って月の売上を計算でき、それを営業日数で割って一日あたりの売上を計算でき、さらに営業時間数で割ることにより1時間あたりの客単価×客数にまで分解できます。

当然時間帯によって客数は大きく違いますから、ピーク時と非ピーク時での客単価×客数は別に計算します。

さらに、席数なども考慮し、ピーク時の客数はこのくらい、暇な時間帯は何人くらいというくらいまで分解できれば、経営者が実感できるレベルになります。

さすがにこんなにたくさんの客は現実には難しいだろうなと思うこともあれば、いや実際はもっとたくさん入るんじゃないかななど、リアリティのあるイメージができます。

上記の流れをひとことで言えば、経営者の実感レベルまで数値を分解し、現実的に達成可能かどうかの腹落ちをするということです。

その結果、ちょっと非現実的な想定だったかなと思ったら投資をやめる選択肢も検討に入れても良いでしょう。

特に、事業再構築補助金は業態転換や新しい業種へ進むことを奨励している面があるので、数値計画の正確な予測はなお困難になります。

そのため、補助金を使った投資がうまくいく自信がないなら今回の補助金利用は見送るというのも賢明な判断です。

それでも補助金を利用したい場合は

しかし、一方では既存のビジネスではコロナ禍という現状において限界を感じており、なんとか現状を打破したいがために事業再構築補助金にいちるの望みをかけておられる事業者の方も多いでしょう。

そのような方に向けては、補助金を利用しない選択肢よりも、補助金が採択されたあとに、どうすれば計画数値を実現できるか考えることをおすすめします。

すでに書いたように、補助金申請の際につくる数値計画は楽観的になりがちなので、計画を下振れることは普通に多いです。

そのような現状を踏まえた上で、どうすれば計画を達成できるかを考えるということです。

計画と比べて利益が下振れるのは、売上が下振れるか費用が上振れるかの2つがありますが、実際に多いのは売上が下振れるケースです。

なぜかというと、費用は自社でコントロールできる項目が多いため比較的正確に見積もることができる一方、売上はお客次第の面があり自社で直接コントロールできないので精度が下がるためです。

そのため、どうすれば売上を増やせるかを考えることが必要になってきます。

今回はそれがテーマではないので詳しくは書きませんが、一般的には販売のターゲットを明確にする、ターゲットは自社の何に魅力を感じてくれてるか分析する、その魅力をターゲットへ確実に伝えるための施策を実施する、という流れが王道です。

特に、自社のアピールポイントがあいまいなために同じような広告・宣伝ばかりしている場合は上記の流れをまず考えるのがよいでしょう。

補足しますと、事業再構築補助金の申請においても、事業計画に含めるべきポイントとして会社の強みが挙げられており、申請書作成の過程でそれらを把握することはしていると思います。

しかし、不思議なことに申請書ではきちんと把握しているにもかかわらず、実際の広告宣伝や販売促進になると自社の魅力をわかりやすくターゲットにアピールできていないことが多いようです。

結局のところ、人間というのは必要な時だけ頑張って、のど元過ぎれば熱さを忘れるという性質があるようです。

けれどこれではうまくいくものもうまくいきません。

事業者の方におかれましては、補助金をもらうまでの期間だけ頑張るのではなく、その後も計画を実現するための具体的な詰めについて真剣に考えていただくことで、事業再構築補助金を活用する効果が大きくなります。

まとめ

長くなりましたが、ここで言いたいことは、

補助金をもらうことによって逆に経営が苦しくならないかちゃんと判断してからやりましょうねということ

②失敗のリスクも承知した上で補助金をもらうなら、計画通りに行かないことが普通である現状を踏まえた上で計画に近づけるための具体的な方法を考えましょうということ

です。

思ったより長くなったので今回はここまで。

次回は、事業再構築補助金難民が発生する可能性があることや補助金入金までのつなぎ融資など他のデメリットについて説明する予定です。