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事業再構築補助金のデメリット②~実務的な注意点と対応方法~

前回は事業再構築補助金を利用するにあたっての総論的なデメリットについて説明しましたが、今回は実務的なデメリットです。注意点と言いかえてもよいかもしれません。

解決策を知っていれば簡単に対処できることばかりですので、もし知らないことがあったらさっと目を通していただければ嬉しいです。

大人気であるがゆえの補助金難民発生のおそれ

事業再構築補助金は本年度において最も注目されています。

それは、予算の規模が非常に大きいためです。

そのため、他の補助金に比べ補助限度額も高くなり、他の補助金では通常補助の対象にならない建物費も補助対象となっています。

これだけであれば一見よいことのように見えますが、非常に人気があるがゆえの副作用が発生するかもしれません。

というのも、事業再構築補助金の申請を支援する専門家が不足するかもしれないということです。

順を追って説明します。

まず、事業再構築補助金を申し込むには認定支援機関という専門家の支援が必要とされています。

認定支援機関とは、経営を相談できる相手を見つけにくい経営者のために国が用意した制度で、経営者が気軽に相談できる専門家のことです。

多くの補助金はその効果を高めるため、自社の経営分析や市場分析などを申請書に記載すべき内容に定めていますが、それらを自力で作成することが困難な場合は認定支援機関の支援で申請書を作成することになります。

認定支援機関側の視点で見ると、事業再構築補助金の申請を支援するのにそれなりの時間と労力を割くことになります。

元より認定支援機関の中でも得意・不得意な分野があり、全ての認定支援機関が補助金の申請支援をするわけではありません。

また、補助金によって申請する難易度・労力にもレベルがあって、一般的に補助額が大きい補助金ほど難易度が高くたくさんの労力が必要となり、時間が取られることになります。

事業再構築補助金は新しい制度のため、どの程度の難易度になるかまだわかりませんが、業界においてはものづくり補助金と同程度の難易度ではないかと言われています。

ものづくり補助金の申請支援の労力は結構なもので、他のメジャーな補助金である小規模事業者持続化補助金よりも大変だと言われています。

また、補助金の採択率は公募が始まってから1回目が高くなりやすいと言われることもあり、近々開始が予定されている公募のタイミングで申請が殺到する可能性があります。

そうすると、認定支援機関側の労力の余裕という点でみると、一申請あたりの労力が大きく(質)、申請件数も集中する(量)ということで、質量の両面から人手不足の可能性が出てきます。

この結果どうなるかというと、申請金額の低い申請は受け付けられない可能性があるということです。

なぜなら、認定支援機関への報酬は(着手金+)成功報酬とされていることが多く、採択額が大きいほど報酬額が大きくなります。

一方で、認定支援機関の手間としては採択額が異なっても大きくは変わりません。ということであれば、限られた労力を分配する立場としては、たくさんの報酬が見込まれる申請金額の大きいものを優先することが合理的になるわけです。

全ての案件を受けきれるなら問題ないですが、認定支援機関の許容量が限界を超え、一部を断らざるを得ないとしたら、報酬額の順で判断することになるでしょう。

この結果、申請金額の小さい事業者は認定支援機関に断られる可能性が出てきます。

つまり、事業再構築補助金難民が発生する可能性があるということです。

こうならないためには、早めの対応が有効です。

例えば、知り合いの認定支援機関に早いタイミングで相談するべきです。

知り合いに認定支援機関がいなければ同業などに紹介してもらうのも良いでしょう。

いずれにしても、公募が始まってからいざ動こうとしても、支援してくれる認定支援機関が見つからないという事態になりかねませんので、そのような可能性については頭の片隅に入れておいたほうがよいでしょう。

投資実行のタイミングが縛られる

次のデメリットは投資をするタイミングが縛られることです。

具体的には、補助金の交付決定以降の設備購入が原則とされています。

もう少し細かく見ると、

公募開始→締め切り→採択→交付申請→交付決定

という段階を経ることになります。

また、今回の補助金は大注目されており、同じタイミング(1次募集)で申込みが殺到する可能性があることは上述したとおりです。

この結果、認定支援機関だけでなく、設備を納入する業者側も対応が忙しくなる可能性があります。

認定支援機関ほど業務の内容が集中することはないかもしれませんが、現在の公表されている資料でいくつかの事例が紹介されており、そのような事例に該当する場合、業者側も同じような仕事が集中する可能性があります。

よって、大事なことは業者側とスケジュールのすり合わせを早めにしておくになります。

一方、「原則」として設備購入は補助金交付決定後だと述べました。

つまり、「例外」があるということです。

これは、事前着手の申請をし、承認されることで、採択前であっても2月15日以降の設備購入であれば補助対象となりうるという場合です。

しかし、この場合においては採択前の購入ですので、採択されるかどうかは不明です。

つまり、購入してしまっても採択されなければ補助の対象とならず、投資全額が自己負担となる可能性があるということです。

この点はくれぐれもご注意ください。

補助金入金までの資金繰りが厳しくなる

補助金を活用するに当たり、自分で用意しなければならない金額を答えることできますか。

例えば事業再構築補助金における中小企業の場合、補助率が2/3なので1/3だけ用意すれば良いと思っていませんか?

最終的にはその通りなのですが、いったんは全額を自前で用意しなければなりません。

なぜなら、補助金は採択されたとしても、入金のタイミングはそれよりもかなり後になるためです。

一方で、工事業者などへの支払いはそれよりかなり早いことが通常です。

そのため、いったんは全額を自前で用意しなければならないということです。

補助金申請に慣れている方ならば当たり前のことですが、初めての方は事前にどう対応するか決めておきましょう。

自社の預貯金でまかなえるのであればそれが理想ですが、事業再構築補助金における投資額は大きくなる可能性が高いので、たとえ一時的にせよ全額を自前で用意するのは大変かもしれません。

そんなときは金融機関へつなぎ融資を打診することをおすすめします。

つなぎ融資とは、一時的に資金繰りが厳しくなったときのために金融機関が貸し出す融資です。

「一時的」がポイントです。

つまり、通常の運転資金と違って、補助金が入金されれば資金繰りの厳しさは解消されるため、金融機関としては安心して融資できます。

そのため、通常の融資よりも事業者にとってのハードルはかなり低くなります。

金融機関へ提出する資料も補助金が採択されたことを証明する資料が多く、返済の時期も補助金入金のタイミングと同じタイミングになります。

また、金融機関にとってのリスクが低いためあまり頻繁に目にしませんが、補助金のつなぎ融資においても信用保証協会が活用できます。

自己負担分を金融機関に融資してもらうにはそれなりに返済可能性を納得してもらえないといけないので難易度が上がりますが、補助金部分については採択されていればまず融資してくれます。

そのため補助金入金までの資金繰りに不安があるようでしたら、ぜひつなぎ融資を検討してみてください。

補助金も課税される

これも資金繰りに影響するので注意してください。

事業再構築補助金も他の補助金と同様、課税されてしまいます。

例えば、1,500万円の投資をして、2/3の1,000万円の補助金を得たとします。

実効税率が仮に23%だとすると、1,000万円×23%=230万円の税金の支払いが決算後に必要になってきます。

このタイミングでの資金繰りが厳しければ、圧縮記帳という税務上のテクニックを使うことができます。

これは、補助金1,000万円の部分と同額の損(1,000万円の圧縮損)を計上することで、「課税の繰延」をすることです。

「課税の繰延」である点に要注意です。

これはどういうことかというと、仮に圧縮記帳をしない場合、その1,000万円は固定資産の減価償却費として複数年に渡って計上されます。例えば10年の耐用年数と仮定すると、毎年減価償却費が100ずつ計上され、その分支払う税金が減ります。

(※減価償却とは、固定資産の費用計上するタイミングを複数年にわたってすることです。複数年にわたって費用計上されたものを減価償却費といいます。費用計上されれば、その分課税所得が減り、税金も減ります)

圧縮記帳をした場合は毎年の減価償却費100は発生しないので、将来支払う税金を減らすことはありません。

上記の計算例で説明しますと、圧縮記帳を適用した場合は初年度の税金230万円を支払わずに済みますが、その代わり翌年から減価償却費が計上されない分23万円×10年=230万円の税金を支払うことになります。つまり、10年間で支払う税金の合計額は変わらないということです。

ひらたく言えば、圧縮記帳をすれば当期の税金が一気に減り、圧縮記帳をしなければ来期以降の税金を複数年に渡って減らすということです。

このため、圧縮記帳は長期的に見て税金の金額自体を減らすわけではないため、「課税の繰延」と言われます。

当期の支払う税金が減るため、経営者にとってはお得に見えますが、実際には来期以降も含めた税金支払額合計には影響ありません。

それどころか、圧縮記帳をつかうと中小企業経営強化税制など有利な税制のメリットが小さくなる可能性もあります。

(※中小企業経営強化税制とは一定の設備を取得した場合に有利な税制を受けられる制度です。事業再構築補助金に比べ難易度がはるかに低いので検討しても良いでしょう。ご参考までに税制措置・金融支援活用の手引き 

そのため、適用にあたっては資金繰りと将来の税額両方の観点から検討が必要となるので、顧問税理士とよく相談してください。

まとめ

今回は事業再構築補助金の実務面におけるデメリットを解説してきました。

デメリットと解決策という対応で表現すれば

(1)補助金難民発生→早めに認定支援機関を見つける

(2)投資実行のタイミングに縛りがある→事前承認制度を検討

(3)補助金入金まで資金繰りが苦しくなる→つなぎ融資で乗り切る

(4)補助金に課税される→圧縮記帳を検討

ということになります。

上記のデメリットはあるのものの、それ以上に大きなメリットがあるため大変期待されているのが事業再構築補助金です。

事業者の方に置かれましては、上記のデメリットを確実に克服し、本補助金を効果の高いものとしてくださることを切に願っています。