経営を深め、相談する場

計画作成(第3回)〜将来を考える:行動と数値〜

コンセプト〜言語化し、自覚を強める〜

現状分析が終わると、その分析結果を基に将来どうするかを決めていきます。「計画」とは将来のことなので、この部分が計画作成の肝となります。具体的には、将来の行動と数値の2つを決めていきます。ここで大切なのが、コンセプトを決め、それに基づき将来の行動計画や数値を決めるという流れです。コンセプトとは、全体を貫く基本的な考え方のことです。例としては、「素材・加工方法とも最高で無添加である本物の商品を地元高齢者に届ける」などです。弊所の場合は「経営を深め、相談できる場を作る」です。コンセプトは計画作成に必須ではないですが、コンセプトがあることにより、個々の行動がバラバラになるのを防ぎ、統一感を持たせることができます。統一感がなぜ大事かというと、従業員も判断・行動しやすくなるととともに、顧客にも一貫したイメージが伝わりやすく、支持を得やすいためです。また、経営者自身も判断のブレが少なくなります。コンセプトを熟慮して言語化することにより、自覚が強まるからです。コンセプトは現状分析の結果を基にしますが、一方で自社の経営理念など自社固有の事情も考慮して決めるべきです。その方が納得感が高いだけでなく、他社との違いを打ち出しやすいからです。以上のような大きなメリットがあるため、コンセプトを作ることは非常に大切です。

行動計画〜実現可能かつ効果が高いものを〜

コンセプトが固まったら、それに基づき行動計画を作ります。行動計画とは、実行すべき行動をリストアップし、それぞれの行動ごとに実行責任者とスケジュールを立てたものです。アクションプランと言われることもあります。ここでのポイントは、中小企業は人的・金銭的リソースが十分ではないことが多いため、たくさんリストアップしたとしてもその中で優先順位を付けることです。多くの施策を同時に全て実現しようとしても、全て中途半端になってしまうという失敗がよく起こります。そのならないために、行動計画は実現可能なものに絞るべきです。ただ実現可能であっても効果が薄ければ意味がないので、実施して効果が大きいものでなければなりません。この効果の大きさを図るためにも、各施策の経済的影響(売上✕千円増加、費用✕千円削減など)を見積もることが重要です。経済的影響を見積もることにより、将来においてその施策がうまくいったのか否かを判断する材料にもなります。

数値計画〜願望ではなく、コミットメントである〜

数値計画で大事なのは、願望ではなく達成が実現できそうなレベルにすることです。ここは誤解されていることが多いのですが、計画は目標ではありません。計画を作り慣れていない経営者の方は、特に売上を右肩上がりの計画にすることが多いです。これは目標値として設定しているからです。目標は、そうなればいいなという願望が多分に含まれています。その分難易度は上がります。しかし、計画で数値を作ることの意味は、将来のシミュレーションをすることにあります。つまり、計画で想定した売上水準ではこの程度の利益を稼げ、その利益だと現状の返済計画を達成でき、現預金水準もある程度は維持できる、など色々な数値計画が全て繋がっており、それらが一定の仮定だとどうなるかを事前に予測することが目的です。そのため、目標としての水準で計画を作成した結果、例えば売上実績が計画水準に届かないと、結果として利益も計画より下振れ、資金水準も下振れます。現実の経済活動では資金はなんとか回さなければならないので、金融機関や仕入先、または税金や社会保険などへの返済・支払いを遅らせることになります。そうすると、返済計画や貸借対照表も計画と違ってきます。つまり、この状態では計画を作る意味がほぼなくなります。このように、数値計画は全て繋がっているので、どれかの見通しが甘ければ他の数値計画にも影響を与えます。このような理由があるため、計画数値は目標値ではなく実現可能な水準とする必要があります。

売上計画

一般の数値計画では売上は損益計算書計画に含まれ、独立して作らないことも多いですが、できれば損益計算書と別に作るべきです。理由は、費用改善や採算性の改善だけでは業績回復に足りない場合もあり、そのような場合には売上を増加させる必要がある。その場合に雑な売上計画だとどう増やすかイメージできないためです。そのため、単価×数量など業種によって計算式は異なりますが、いずれにせよ売上を各項目に分解し、具体的にイメージできるレベルまで落とし込むことが大切です。

損益計算書(PL)

PLは各科目ごとに計算します。削減可能な項目を探したり、逆に増える項目があればそれも反映します。PL作成を通じて、費用はどのような項目から構成されているか自然と理解していきます。必要な利益を達成するために費用削減で達成できなければ、いくら売上増加が必要か、売上計画と行ったり来たりすることになります。営業利益及び償却前営業利益がどの程度の水準になるか把握することが大切です。特に、返済計画表でわかる返済額を賄えるだけの収益を生み出しているかは必ず把握しておきましょう

参考:経営者の必修科目(第1回)〜損益計算書の見方と注目すべき指標〜

貸借対照表(BS)

BSでは各科目とも金額を据え置くことが多いですが、役員貸付金や関係会社貸付金など解消すべき項目はいずれゼロを目指します。PL同様、BS作成を通じて各科目の構成をざっくり理解します。債務超過の場合は、資産超過になるかが大切です

参考:経営者の必修科目(第2回)〜貸借対照表の見方と注目すべき科目〜

キャッシュフロー計算書(CF)

PLとBSを作成すれば、CFは差額で自動的に算出できます(間接法CFの場合)。そのため、PLやBSのように何かを決めるということは有りません。ここで把握すべきは、本業からいくら稼いでいるか(営業CF)、そのうち投資にいくら回せるか(投資CF)、残りで借入を返済できるか(営業CFー投資CF=FCF>財務CF)、その結果現預金はいくら残るかを理解することです。なお、PL,BS,CFを併せて財務三表と言い、企業の財務状態を表す基本的な資料になります。

カテゴリ別損益

カテゴリ別分析とは、得意先別や商品別などの各カテゴリ別に損益を分析したもので、現状分析における採算性分析で作ったものの計画版になります。これも売上計画と同様、一般の計画では必須ではありませんが、自社の収益力の核となる情報なので可能な限り作るべきです。例えば利益率の高い得意先への販売量を増やしたり、逆ざやとなっている得意先との取引をやめるなど行動計画がダイレクトに反映します。

参考:経営改善の手引き(第2回)〜費用を減らす:採算による取捨選択〜

返済計画

現状の返済計画表から作ります。ここでの目的は、月額の返済額やいつから増減があるかを大まかに理解することです。そして返済額とPLで把握した償却前営業利益のバランスが取れているかを把握します。もし返済額>償却前営業利益であればいずれ資金が不足するので、リスケや新規融資の検討も視野に入ります。また、全体の借入の中で信用保証協会が保証している額は金融機関の関与姿勢に大きく影響するので、できれば信用保証協会による保証額も把握したいです。

設備投資計画

新規の設備だけでなく、更新投資など必要な投資を網羅します。緊急に必要となる修繕はPLの修繕費に折り込みます。もし設備取得に新規融資が必要なら、金融機関も設備投資計画があることで理解しやすくなります。また、補助金は(特に金額の大きい補助金ほど)設備投資を補助するものが多いのですが、補助金を計画的に利用するのにも役立ちます。大型の補助金は毎年公募されることが多く(ただし各公募期間は短い)、設備投資計画があれば具体的にどの補助金を利用すればよいか判断しやすいためです。

税金計画

税金計画は、法人税等の計画になります。繰越欠損金があれば均等割しか発生しない一方、多額の利益が出れば利益に対し2,3割の税金が発生します。資金繰りに直接大きな影響を与えるので、利益が増える見込みが大きいならどの程度法人税が増えるか把握するのが必須です。

まとめ

・現状分析を基に、将来の計画を作る

・計画の実現可能性を高めるためにコンセプトを決め、行動計画や数値計画に反映する。

・行動計画は実現可能かつ効果の高い施策に絞る。経済的影響も見積もる。

・数値計画は願望としての目標値ではなく、実現可能な水準にする。売上計画、PL、BS、CF、カテゴリ別損益、返済計画、設備投資計画、税金計画がある。