企業の再生を阻害するものは何か
条件変更が繰り返されている
少し前になりますが、金融庁が企業再生の状況について調査した結果を平成28年の六月に公表しました。
その結果、条件変更先(借入金の返済が厳しいため、返済条件を当初の条件から伸ばした会社)のうち初回条件変更から5年以上経過した企業の割合が4割に上ることが判明しました。
このことは何を意味するかというと、長期にわたり条件変更を繰り返し、返済負担を先延ばしにしている実態が判明したということです。
そして、調査ではその原因として金融機関側と企業側の両方の面から挙げています。
金融機関側の課題
金融機関側の課題としては、経営トップの姿勢や業績評価体制などいくつか原因がありますが、一番大きい理由は担保・保証へ依存している点です。
つまり、何かあっても保全がされているので取りっぱぐれがなく、何かあるまでは安定的に金利収入を確保しているため、企業の業績が悪くても経営を改善するインセンティブはないということです。
現状、この点については金融庁が強力に推し進めている事業性評価融資の浸透次第で大きく変わりうると思っています。
つまり、現状は担保や保証で保全されている分までしか融資をしませんが、今後このような企業に対して事業の中身次第で保全額を超える融資がなされる可能性があるということです。
通常の事業性評価融資と再生局面での事業性評価融資で異なる点は、2つあると考えています。
1つ目は、再生局面にある企業は必ず業績悪化の原因となった窮境原因があるということです。この窮境原因の特定をなおざりにして真の経営改善はありません。よって、窮境原因を解消出来なければ融資できないということです。
2つ目は、経営者に危機感を持ってもらうということです。
業績が順調な企業であれば、金融機関の担当者よりも経営者の方が立場が強いケースも多いのではないでしょうか。コントロールが不能な経営者もいると思います。それでも金融機関にとってはお客様なので強く出ることができないのではないでしょうか。
しかし、経営改善局面では金融機関側の企業に対して金融支援を実施することになります。そのため、通常のケースよりも経営者も聞き分けが良くなります。そのため、この機会に密な対話を通じて経営者にはっきりと危機感を持ってもらう必要があるのです。
会社側の課題
調査では、金融機関だけでなく企業側にも原因を認めています。
それは、金融円滑化法以降の積極的な条件変更対応によるモラルハザードです。言い換えると、経営者がリスケに慣れてしまい、それが当たり前と思ってしまっているということです。
資金繰りが苦しい一番の理由は借入金の返済ですから、リスケにより金利のみ払っているのであれば、目先は何とかやり過ごせるのです。
そのため、経営改善へのインセンティブが働かないのです。
しかし、本業が赤字ですと、会社の財産や役員の個人財産を投げ打って延命することになりますが、いつまでも続くわけはありません。時間が経過するごとに事業の価値が毀損しているのです。
このような場合、当然一番良いのは経営者が自ら危機感を持ってもらうことです。
また、金融機関や顧問税理士の立場からは、近い将来に確実に来る現実を丁寧に説明して理解してもらうことではないかと思います。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。