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現金主義のデメリットを正確に理解していますか

今日は千葉県の水産加工業者を訪問し、期中の会計処理基準を変更するための打ち合わせに行ってきました。現金主義から発生主義に変更するためにはどうすればよいかです。発生主義のメリットについて述べるよりも、現金主義のデメリットについて説明する方が何が問題なのか分かりやすいと思います。そこで、今回は現金主義のデメリットについて述べようと思います。

発生主義が推奨されている

会計処理のタイミングには現金主義と発生主義の二つがあります。現金主義とは、売上や費用の計上タイミングを現預金の入出金のタイミングで認識する基準です。発生主義は、入出金のタイミングではなく取引の行われたタイミングで収益・費用の認識をする基準です。そのため、現金取引ではギャップが生じませんが、かけ取引においてはずれが生まれてきます。

多くの中小企業が、期中は現金主義で試算表を作成し、決算時に発生主義に調整するという方法を採っています。これは、発生主義の方がより手間がかかるためです。しかし、現金主義では適正な損益が把握できないため、発生主義が推奨されています。ここでいう適正な損益が把握できないとはどういうことでしょうか。

1年経たないと損益が把握できない

現金主義だと、決算を迎えるまで正確な損益が把握できません。例えば、今日訪問した会社の試算表では在庫は一切計上されていませんでした。棚卸をしていないからです。そのため、在庫にかかった材料や人件費は全て費用として計上されているのです。しかし、当然在庫の売上は計上されていません。そのため、売上総利益の段階で赤字になってしまっているのです。この会社は決算時の1年に1回しか棚卸をしません。よって、1年間は全く赤字なのか黒字なのか不明なのです。これでは勘の経営以外に方法はありません。どんどん赤字を膨らませていたとしても、それに気付くのは1年後なのです。

銀行が融資できない

正確な損得が決算まで把握できないということは、決算まで融資をできないということです。銀行が融資するには回収可能性を見ます。回収可能性の根拠は収益性、つまり営業利益や経常利益です。決算時にはそれらがきちんと計上されるので問題ないでしょう。しかし、上記のように、棚卸されていないことによる赤字の試算表を入手したところで、回収可能性の判断はできないでしょう。そのため、融資をしたくてもすることができないのです。経営者としても、資金需要は決算のタイミングに限られるはずはありません。ここにミスマッチが生じるのです。

会計事務所もアドバイスできない

現金主義の試算表では顧問の会計事務所もアドバイスしようがないのです。
現金主義であっても試算表自体は毎月作成するでしょうから、毎月会計事務所が訪問することは多いと思います。通常は直近の試算表を基にアドバイスしたり相談したりするのでしょうが、現金主義だと経営の実態が数値に表れていない状態です。このような状況ではアドバイスのしようがないのです。

以上により、現金主義でいることのデメリットを理解できたと思います。現金主義でいることは、会社の損益の状況が1年に1回しか分からず、必要な借入も適時にできません。これは、大げさでなく致命的な経営上のハンデを抱えることになります。そのため、多少の手間やコストをかけてでも、発生主義の試算表を毎月作成すべきです。

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。