金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第6弾:秋田県編~
1.秋田県の地銀
秋田県には第一地銀が二つあります。秋田銀行と北都銀行です。
主要指標は下記表のとおりです。秋田銀行が規模としては勝っています。
秋田銀行 | 対北都銀行比 | 北都銀行 | |
経常収益(H29.3) | 42,164百万円 | 1.8 | 23,908百万円 |
経常損益(H29.3) | 5,800百万円 | 2.2 | 2,653百万円 |
従業員(直近) | 1,400名 | 1.7 | 848名 |
県内貸出シェア(H27.10) | 51% | 1.7 | 31% |
2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較
では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。
(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)
①2行が共通して掲載している項目
共通ベンチマークについては、全項目を両行とも掲載しています。
選択ベンチマークについては「ソリューション提案数等」など4項目です。内容はオーソドックスなものばかりです。
数値面の比較については、規模の大きい秋田銀行の数値が北都銀行のものより大幅に下回る項目もあり、単純に二行間で比較する難しさがあります(定義や集計方法が異なる可能性)。そのため、同じ銀行のベンチマークを時系列でみることに、より意味があるのでしょう。そういった視点から眺めてみると、北都銀行における事業性評価に基づいて融資を行っている先数等やソリューション提案先数等の割合は13.9%→22.0%、23.4%→32.0%(両者融資残高ベースにおけるH28/3からH29/3の推移)と大きく増えています。
②秋田銀行のみが掲載している項目
19項目あります。主要な分野としては、担保保証に依存しない融資3件、本業支援5件、事業再生関連3件といったところでしょうか。ユニークな項目としては、「取引先への平均接触頻度、面談時間」でしょう。また、「取引先の本業支援に基づき行われる個人表彰者数、及び、全個人表彰者数に占める割合」も他の銀行ではまず見かけない項目です。
独自ベンチマークには「ビジネスパートナーシッププロジェクトによって売上、営業利益率、労働生産性および従業員数の増加が見られた先数、及び、同先に対する融資残高」があります。平成28年10月に始まったビジネスパートナーシッププロジェクトに基づいて設定されています。
③北都銀行のみが掲載している項目
「創業支援先数(支援内容別)」の1項目です。創業期におけるベンチマーク関連は北都銀行の方がよいため、秋田銀行はライフステージ全般を重視している一方、創業期は北都銀行が特に力を入れている分野なのでしょう。
独自ベンチマークは「当行が関与した秋田県内の再生可能エネルギー事業規模および融資実行額」「秋田県内企業等の当行バンコク駐在員事務所活用件数」「当行バンコク駐在員事務所が関与したタイ王国からのインバウンド誘客数農業経営体与信先数」3項目です。これらの独自ベンチマークは平成27年2月に公表された「地方創生北都プラン」に基づいて設定されています。
3.定性面の比較
秋田銀行の中期経営計画(平成28年度~平成30年度)は「≪あきぎん≫みらいプロジェクト」です。その基本戦略の一番目に「地域活性化戦略」があり、その中で事業性評価やコンサルティングに触れています。
そのため、ベンチマークの公表資料においてもそれらの取り組みをより詳細にする形で説明されています。注目したいのは唯一の独自ベンチマークの基となった「ビジネスパートナーシッププロジェクト」なのですが、詳細な説明がないのが惜しいですね。
また、販路拡大についても事業性評価と同じ分量の紙面を割いているので重視していることが分かります。
北都銀行の中期経営計画(平成29年度~平成31年度)において特徴的な点は、同じフィデアグループとして山形県の荘内銀行と一体として作成している点です。つまり、広域金融グループとしてシナジーや効率化への志向が色濃くみられることです。
金融仲介機能のベンチマーク説明資料においてはもう少し具体的です。つまり、事業性評価活動の推進と地方創生北都プランの実践の二つを取り組みの柱にしており、選択ベンチマークや独自ベンチマークもこれを基に策定されています。
事業性評価の点で面白いのは、対象の事業先を明確にしている点です。上記プランに関連する先や秋田県経済の維持に必要な先、抜本的解決を必要とする先をその対象としています。
地方創生北都プランには8つの重点分野がありますが、その中に農林の高付加価値化支援とグローバル戦略による秋田ブランド確立というものがあります。独自ベンチマークの3つはこの分野に関連したものです。また、上記取り組みの事例を豊富に記載している点もわかりやすいものでした。
(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。
(参考)
(1)二行が共通して掲載している項目
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
14 ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合
18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
19 M&A支援先数
21 事業承継支援先数
(2)秋田銀行のみが掲載している項目
選択ベンチマーク
1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)
2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)
4 取引先への平均接触頻度、面談時間
5 事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数
7 地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び、無担保融資額の割合(先数単体ベース)
9 地元の中小企業与信先のうち、無保証のメイン取引先の割合(先数単体ベース)
11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)
12 本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合
13 本業支援先のうち、経営改善が見られた先数
15 メイン取引先のうち、経営改善提案を行っている先の割合
17 地元への企業誘致支援件数
23 事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合
24 事業再生支援先におけるDES・DDS・債権放棄を行った先数、及び、実施金額(債権放棄額にはサービサー等への債権譲渡における損失額を含む、以下同じ)
33 運転資金に占める短期融資の割合
34 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している支店従業員数、及び、全支店従業員数に占める割合
38 取引先の本業支援に基づき行われる個人表彰者数、及び、全個人表彰者数に占める割合
39 取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数
42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数
43 取引先の本業支援に関連する中小企業支援策の活用を支援した先数
会における検討頻度
(3)北都銀行のみが掲載している項目
選択ベンチマーク
16 創業支援先数(支援内容別)
独自ベンチマーク
1 当行が関与した秋田県内の再生可能エネルギー事業規模および融資実行額
2 秋田県内企業等の当行バンコク駐在員事務所活用件数
3 当行バンコク駐在員事務所が関与したタイ王国からのインバウンド誘客数
(4)各行における金融仲介機能のベンチマーク
秋田銀行(平成29年5月11日公表)
北都銀行(平成29年6月16日公表)
(5)各行における中期経営計画
秋田銀行(平成28年度~平成30年度)
北都銀行(平成29年度~平成31年度)
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。