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金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第16弾:兵庫県編~

1.兵庫県の地銀

兵庫県の産業は阪神、播磨の工業地帯における鉄鋼・造船・機械あるいは化学工業が中心です。

兵庫県には第一地銀である但馬銀行と第二地銀であるみなと銀行があります。

主要指標は下記表のとおりです。第二地銀であるみなと銀行の方が規模の大きい県となっています。

兵庫県の貸出シェアトップは地銀ではなくメガバンクである三井住友銀行です。同行の歴史をさかのぼると、新しい順にさくら銀行、太陽神戸銀行、神戸銀行となります。この神戸銀行は1936年、行政主導の「一県一行主義」に基づき、当時兵庫県下の業績の安定していた7行が合併してできた銀行です。このような経緯があるため、現在でもシェアトップは三井住友銀行となっています。

但馬銀行対みなと銀行比みなと銀行
経常収益(H29.3)14,750百万円0.352,971百万円
コア業務純益(H29.3)*11,134百万円0.27,325百万円
修正OHR(H29.3)*290.3%82.1%
経常損益(H29.3)1,705百万円0.29,995百万円
自己資本比率(H29.3)*38.8%6.8%
従業員(直近)712名0.32,237名
県内貸出シェア不明不明
*1 臨時のものを除いた、銀行本業の収益性を示す指標
*2 経費÷業務粗利益で算出。効率性を示す指標で低い方が良い。地銀の加重平均値は70.3%
*3 両行とも国内基準。国内基準では4%以上が義務付けられている。

2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較

では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。

(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)

(1)但馬銀行

共通ベンチマークは五つすべて掲載しています。

選択ベンチマークは9項目です。内容はオーソドックスな項目は多いものの、経営者保証ガイドラインの活用数については掲載している銀行が多いのでほしかったですね。また、担保・保証に過度に依存しない融資についての項目もあればベターでしょう。

数値面では、事業性評価融資の実数についての記載はありますが、全体に占める割合の記載はありません。やはり、実数より割合の方がイメージが付きやすいので掲載した方がよいでしょう。

独自ベンチマークはありません。

(2)みなと銀行

共通ベンチマークは4つ掲載しています。事業性評価融資についての掲載がありませんが、ほとんどの銀行が掲載しているのでぜひ掲載してほしいところでした。

選択ベンチマークは3項目です。この3項目はどれも重要ではあるのですが、やはり他行と比べるともっと多くの掲載がほしいですね。

数値面では、ソリューション提案に関するベンチマークが他行より高いです。ソリューションを提案している割合が、先数で30%、残高ベースで54%ですが、他行平均は10%~20%程度です。

独自ベンチマークは「環境・農業ビジネス支援」です。 

3.定性面の比較

但馬銀行の中期経営計画(平成29年度~平成31年度)の基本方針は「トップライン収益の拡大」「経営の効率化・リスク管理の充実」「内部管理態勢の強化」「人材育成と活力ある組織づくり」の4つです。地域密着についてのテーマがないのは珍しいかもしれません。

金融仲介機能のベンチマークとの関連は不明確です。構成としてはテーマごとに関連するベンチマークが載っていますが、どのように捉えているかについての説明はないため、数字が羅列している印象です。 

みなと銀行の中期経営計画(平成29年度~平成31年度)の基本方針は「地域活性化への持続的貢献」「お客さま本位のコンサルティング機能の発揮」「筋肉質な経営基盤の確立」の3つです。 一つ目の基本方針の中で事業性評価についてはっきり述べられている点が印象的でした。

金融仲介機能のベンチマークと同計画の関連は比較的わかりやすく、計画の基本方針の中の一部を金融仲介機能の発揮と絡めています。ただし、ベンチマークが分かりやすく説明されているとは言い難い印象です。質・量ともに物足りないのではと思います。

全体的な印象です。

兵庫県においての地銀は、冒頭に述べた事情により、他県における地銀のようなプレゼンスを発揮するのは難しいかもしれません。しかしながら、地域密着の金融機関としての存在意義を大事にし、その地域ならでは、その金融機関ならではの戦略を立て、関係者が正しく理解できるように情報発信していかなければ、現状の地銀を取り巻く厳しい逆境を打ち破ることはより一層困難となるでしょう。

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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。

(参考)

(1)二行が共通して掲載している項目

共通ベンチマーク

1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移

2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況

3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数

4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)

選択ベンチマーク

19 M&A支援先数

21 事業承継支援先数

(2)一行のみが掲載している項目

①但馬銀行のみが掲載している項目

共通ベンチマーク

5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)

選択ベンチマーク

12 本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合

18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)

20 ファンド(創業・事業再生・地域活性化等)の活用件数

22 転廃業支援先数

28 中小企業に対する経営人材・経営サポート人材・専門人材の紹介数(人数ベース)

40 外部専門家を活用して本業支援を行った取引先数

43 取引先の本業支援に関連する中小企業支援策の活用を支援した先数

独自ベンチマーク

なし

②みなと銀行のみが掲載している項目

選択ベンチマーク

14 ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合

独自ベンチマーク

1 環境・農業ビジネス支援

(3)各行における金融仲介機能のベンチマーク

但馬銀行(平成29年8月公表)

https://www.tajimabank.co.jp/news/important/torikumi2908.pdf

みなと銀行(平成29年6月公表)

http://www.minatobk.co.jp/about/pdf/fif.pdf#zoom=100

(4)各行における中期経営計画

但馬銀行(平成29年度~平成31年度)

https://www.tajimabank.co.jp/about/disclosure/pdf/disclose/disclose17/03.pdf

みなと銀行(平成29年度~平成31年度)

http://www.minatobk.co.jp/about/pdf/mmp_201703.pdf

(5)各行における指標の引用元

基本的には各行のWebサイトより引用しています。修正OHRについては「月刊 金融ジャーナル2017 9月号」より引用しています。貸出シェアについては適宜情報が掲載されている各種サイトより引用しています。

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。