金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第22弾:山口県編~
1.山口県の地銀
山口県は高齢化先進国で、瀬戸内沿岸には医療関連産業が集積しています。
山口県には第一地銀である山口銀行と第二地銀である西京銀行があります。
主要指標は下記表のとおりです。他県同様、第一地銀である山口銀行が西京銀行よりも規模が大きいです。
山口銀行 | 対西京銀行比 | 西京銀行 | |
経常収益(H29.3) | 79,100百万円 | 2.8 | 28,200百万円 |
コア業務純益(H29.3)*1 | 17,200百万円 | 4.1 | 4,243百万円 |
修正OHR(H29.3)*2 | 65.5% | – | 73.7% |
経常損益(H29.3) | 26,900百万円 | 4.1 | 6,500百万円 |
自己資本比率(H29.3)*3 | 17.6% | – | 8.2% |
従業員(直近) | 1,682名 | 2.2 | 776名 |
県内メインバンクシェア(H28.10) | 60% | 11% |
*2 経費÷業務粗利益で算出。効率性を示す指標で低い方が良い。地銀の加重平均値は70.3%
*3 山口銀行は国際基準,西京銀行は国内基準。国際基準では8%、国内基準では4%以上が義務付けられている。
2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較
では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。
(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)
(1)山口銀行
共通ベンチマークは5つ掲載しています。
選択ベンチマークは12項目です。重要なベンチマークは概ね記載しています。「中小企業に対する経営人材・経営サポート人材・専門人材の紹介数」がやや珍しいです。ただし、担保保証に依存しない融資はもう少しほしいです。
数値面では、メイン先数の取引先に占める割合が低めです。他行平均が5割弱であるところ、当行は26.1%(H29.3期)です。
独自ベンチマークはありません。
(2)西京銀行
共通ベンチマークはありません。「共通」である以上、一つもないのはやはり寂しいですね。
選択ベンチマークは5項目です。担保・保証に依存しない融資関連が多いです。しかし、これらのベンチマークと表裏一体である事業性評価融資についてのベンチマークはあった方がよかったですね。また、M&A支援数や事業承継支援数、販路拡大支援数も多くの銀行で掲載しているので掲載した方がよかったのではないかと思います。
数値面では、新規融資件数に占める経営者保証に依存しない融資の割合が高いです。他行平均20%程度であるところ、当行は59.5%です。
独自ベンチマークはありません。
3.定性面の比較
山口銀行の中期経営計画(平成28年度~平成30年度)は山口フィナンシャルグループとして策定されています。そのため、広島県編(第18弾)で述べたことを繰り返します。特徴的な点は、基本目標が「金利競争からの脱却」「プロダクト・アウトからの脱却」です。両者はどの銀行も課題とは思いつつも、正面から取り組みにくいテーマですので評価できます。
金融仲介機能のベンチマークは金融仲介の取組みの自己点検・自己評価のツールとして活用・公表するとあります。しかしながら、見せ方としては、掲載しているベンチマークが順番に羅列されているだけであり、特に定性的な説明はありません。もっと効果的にベンチマークを説明することはできたのではないでしょうか。
西京銀行の中期計画(平成29年度~平成31度)の基本戦略は「顧客数の拡大」「取引深耕」「接点拡大」「有価証券、IT戦略」です。特徴的な点は、医療介護を重点分野とした点、数値目標に「医療機関取引先数」、「年金振込指定件数」などユニークなものがある点、手数料無料のケースを前面にアピールしている点です。
金融仲介機能のベンチマークとの関連についての言及はありません。内容としては、取組についての情報は充実していますが、上述したようにベンチマーク数自体の記載が少ないので、数字のイメージがつきにくい印象はあります。特に、独自ベンチマークとしてそのまま活用できそうな数値もたくさん載っていたので、余計もったいないように感じました。また、高齢化が進んでいる地域(山口県は高齢化率全国4位)という特色を踏まえ、医療介護を重点分野としたのは分かりやすかったです。
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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。
(参考)
(1)二行が共通して掲載している項目
共通ベンチマーク
なし
選択ベンチマーク
11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)
(2)一行のみが掲載している項目
①山口銀行のみが掲載している項目
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)
5 事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数
12 本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合
15 メイン取引先のうち、経営改善提案を行っている先の割合
16 創業支援先数(支援内容別)
山 18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
19 M&A支援先数
21 事業承継支援先数
28 中小企業に対する経営人材・経営サポート人材・専門人材の紹介数(人数ベース)
39 取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数
43 取引先の本業支援に関連する中小企業支援策の活用を支援した先数
独自ベンチマーク
なし
②西京銀行のみが掲載している項目
共通ベンチマーク
なし
選択ベンチマーク
1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)
7 地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び、無担保融資額の割合(先数単体ベース)
8 地元の中小企業与信先のうち、根抵当権を設定していない与信先の割合(先数単体ベース)
10 中小企業向け融資のうち、信用保証協会保証付き融資額の割合、及び、100%保証付き融資額の割合
独自ベンチマーク
なし
(3)各行における金融仲介機能のベンチマーク
山口銀行(公表日不明)
西京銀行(平成29年5月公表)
(4)各行における中期経営計画
山口銀行(平成28年度~平成30年度)
西京銀行(平成29年度~平成31年度)
(5)各行における指標の引用元
基本的には各行のWebサイトより引用しています。修正OHRについては「月刊 金融ジャーナル2017 9月号」より引用しています。貸出シェアについては適宜情報が掲載されている各種サイトより引用しています。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。