金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第31弾:香川県編~
1.香川県の地銀
香川県には建設機械関連、造船関連、自動車部品関連などの分野で国内トップクラスの企業が中核的企業として存在しており、金属加工、金型、溶接等の高度な基盤技術を持つ協力企業が多数集積しています。
香川県には第一地銀である百十四銀行及び第二地銀の静岡中央銀行があります。
主要指標は下記表のとおりです。他県同様、第一地銀である百十四銀行の方が大きいです。
百十四銀行 | 対香川銀行比 | 香川銀行 | |
経常収益(H29.3) | 82,154百万円 | 2.8 | 29,024百万円 |
コア業務純益(H29.3)*1 | 13,046百万円 | 1.7 | 7,777百万円 |
修正OHR(H29.3)*2 | 74.0% | – | 65.3% |
経常損益(H29.3) | 17,011百万円 | 2.2 | 7,600百万円 |
自己資本比率(H29.3)*3 | 9.2% | – | 10.2% |
従業員(直近) | 2,327名 | 2.3 | 1,031名 |
県内貸出シェア(直近) | 35% | 16% |
*2 経費÷業務粗利益で算出。効率性を示す指標で低い方が良い。地銀の加重平均値は70.3%
*3 両行とも国内基準。国内基準では4%以上が義務付けられている。基準では4%以上が義務付けられている。
2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較
では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。
(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)
(1)百十四銀行
共通ベンチマークは5つ掲載しています。
数値面の特筆事項はありません。
選択ベンチマークは5項目です。担保・保証に依存しない融資関連、M&A支援件数や事業承継支援件数はあった方が良いでしょう。特に、担保・保証に依存しない融資関連では経営者保証ガイドラインの活用数、M&A支援件数や事業承継支援件数については相談件数の掲載はあるので、あと一歩踏み込んでほしい印象です。
こちらも数値面での特筆事項はありません。
独自ベンチマークはありません。
(2)香川銀行
共通ベンチマークは5つ掲載しています。
数値面の特筆事項はありません。
選択ベンチマークは7項目です。担保・保証に依存しない融資関連やM&A支援先数はあった方が良いです。
数値面では経営者保証ガイドライン活用数の割合が低いです。当行は4%ですが、他行は10%前後が多いです。また、事業承継支援件数も一桁と低いです。一方、地域経済活性化支援機構の活用数は5件とこの規模の銀行としては多いです。
独自ベンチマークはありません。
3.定性面の比較
(1)百十四銀行
百十四銀行の経営計画は「チャレンジ・バリュー・プラス」です。テーマは「事業基盤の強化」「営業力の強化」「市場運用の強化」「経営基盤の充実」です。標準的な内容です。
金融仲介機能のベンチマークの見せ方としては取組や事例とセットで掲載する一般的な方法です。一方、テーマとして海外ビジネス支援への取り組みやファンドの活用、担保保証に依存しない融資があるので、これらについては定性情報のみではなく金融仲介機能のベンチマークをしっかりと掲載してほしいですね。担保保証~については経営者保証ガイドラインの活用数は多くの銀行が掲載していますが、経営者の保証ではなく、信用保証協会の保証や物的担保についてのベンチマークを掲載している銀行は多くありません。本当に担保・保証に依存しないのであれば、経営者保証以外の保証についても言及しないと説得力がないでしょう。
(2)香川銀行
香川銀行の経営計画では「新たな収益機会への挑戦」「持続可能な経営態勢の構築」「5年後を見据えた営業態勢の確立」を経営戦略としています。敢えて特筆するとすれば、徳島銀行、大阪の大正銀行とトモニホールディングスを形成していますが、このシナジーを活用しようとしている点です。
金融仲介機能のベンチマークの見せ方は百十四銀行と同様オーソドックスなものです。その上で、推進体制や取り組みについての説明がベンチマークの説明に比べ多すぎる印象です。例えば、成長段階における支援というテーマに26ページを割いていますが、そこで掲載されているベンチマークは販路開拓と事業承継支援数の2項目のみです。ベンチマークのもっと効果的な活用が出来たのではないかと思います。
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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。
(参考)
(1)各行が掲載している金融仲介機能のベンチマーク
①百十四銀行
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)
11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)
18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
23 事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合
42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数
独自ベンチマーク
なし
②香川銀行
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)
11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)
16 創業支援先数(支援内容別)
18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
21 事業承継支援先数
23 事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合
42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数
独自ベンチマーク
なし
(2)各行における金融仲介機能のベンチマーク
百十四銀行
香川銀行
(3)各行における経営計画
百十四銀行
香川銀行
(4)各行における指標の引用元
基本的には各行のWebサイトより引用しています。修正OHRについては「月刊 金融ジャーナル2017 9月号」、県内貸出シェアについては同「増刊号 金融マップ2018年版」より引用しています。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。