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金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る ~第38弾:佐賀県編~

1.佐賀県の地銀

佐賀県は農業が盛んです。二毛作によって耕地利用率が20年以上連続で全国首位です。

佐賀県には第一地銀の佐賀銀行、第二地銀の佐賀共栄銀行があります。

主要指標は下記表のとおりです。他県同様、第一地銀である佐賀銀行が第二地銀である佐賀共栄銀行を規模において圧倒しています。

佐賀銀行対佐賀共栄銀行比佐賀共栄銀行
経常収益(H29.3)43,058百万円7.85,515百万円
コア業務純益(H29.3)*113,000百万円17.2755百万円
修正OHR(H29.3)*264.0%83.1%
経常損益(H29.3)3,300百万円5.6585百万円
自己資本比率(H29.3)*37.7%8.2%
従業員(直近)1,500名4.0376名
県内貸出シェア(H29.3)37%8%
*1 臨時のものを除いた、銀行本業の収益性を示す指標
*2 経費÷業務粗利益で算出。効率性を示す指標で低い方が良い。地銀の加重平均値は70.3%
*3 両行とも国内基準。国内基準では4%以上が義務付けられている。

2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較

では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。

(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください。

また、同ベンチマーク値の高低について他行と比較することがありますが、項目によっては銀行間で定義や集計方法が異なることがあります。そのため、必ずしも同じ前提での比較ではなく、参考程度である点くれぐれもご留意ください)

(1)佐賀銀行

共通ベンチマークは5つ掲載しています。 

数値面では平均に近い項目が多いです。

選択ベンチマークは20項目です。数も多く、重要な項目は記載されています。珍しいところでは、労働生産性の向上に資する対話を行っている取引先数、企業誘致数、本業支援の支店業績評価に占める割合などがあります。

数値面では、地元の中小企業与信先のうち無担保与信先割合が低いです。平均60%程度のところ、当行は6%です。一方、本業支援の支店業績評価に占める割合は若干高いです。掲載行自体少ないのですが、10%台が多い中当行は24%です。

独自ベンチマークはありません。

(2)佐賀共栄銀行

共通ベンチマークは2つです。どの銀行でも重視されている事業性評価融資や、経営計画で強化項目とされている再生関連(貸出条件変更数など)はあった方がよかったでしょう。

選択ベンチマークは6項目です。経営者保証ガイドラインの活用数、M&A支援件数や事業承継支援件数といった重要なものは欲しかったですね。一方、本業支援を担当している支店従業員数の割合は比較的珍しい項目です。

数値面でもこの項目は37%と高いです(他行平均は20%台)。

独自ベンチマークはありません。

3.定性面の比較

(1)佐賀銀行

佐賀銀行の経営計画における重点項目は事業性評価、地方創生、全体生産性向上です。

金融仲介機能のベンチマークも上記計画と整合しています。すなわち、上記重点項目のうち、事業性評価、地方創生というテーマに基づいてベンチマークが設定され、具体的な取り組みと共に説明がされています。

一方、個々のベンチマークについての説明はほとんどなかったので、この点については改善の余地がある点でしょう。 

(2)佐賀共栄銀行

佐賀共栄銀行の経営計画における課題は「地域活性化への貢献」「収益基盤の拡大」「人材育成の強化」です。この中で言及されている「再生支援への取組み強化」がやや特徴的です。

金融仲介機能のベンチマークは質量ともに物足りないですね。例えば、クラウドファンディングについての取組みが詳しく説明されていますが、ベンチマークがあればもっとイメージしやすかったろうと思います。 また、経営計画で再生支援の取組強化を定めているのであれば、これらに関する共通ベンチマーク及び選択ベンチマークはやはり欲しかったです。

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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。

(参考)

(1)各行が掲載している金融仲介機能のベンチマーク

①佐賀銀行

共通ベンチマーク

1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移

2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況

3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数

4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)

5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)

選択ベンチマーク

1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)

2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)

5 事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数

7 地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び、無担保融資額の割合(先数単体ベース)

9 地元の中小企業与信先のうち、無保証のメイン取引先の割合(先数単体ベース)

11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)

12 本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合

13 本業支援先のうち、経営改善が見られた先数

14 ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合

16 創業支援先数(支援内容別)

17 地元への企業誘致支援件数

18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)

19 M&A支援先数

20 ファンド(創業・事業再生・地域活性化等)の活用件数

21 事業承継支援先数

24 事業再生支援先におけるDES・DDS・債権放棄を行った先数、及び、実施金額(債権放棄額にはサービサー等への債権譲渡における損失額を含む、以下同じ)

34 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している支店従業員数、及び、全支店従業員数に占める割合

35 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している本部従業員数、及び、全本部従業員数に占める割合

36 取引先の本業支援に関連する評価について、支店の業績評価に占める割合

39 取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数

独自ベンチマーク

 なし

②佐賀共栄銀行

共通ベンチマーク

1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移

4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)

選択ベンチマーク

1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)

2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)

14 ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合

16 創業支援先数(支援内容別)

18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)

34 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している支店従業員数、及び、全支店従業員数に占める割合

独自ベンチマーク

なし

(2)各行における金融仲介機能のベンチマーク

佐賀銀行

https://www.sagabank.co.jp/outline/kinyu_chukai2016.pdf

佐賀共栄銀行

https://www.kyogin.co.jp/uploads/files/news_release/2017/29.06.02-005.pdf

(3)各行における経営計画

佐賀銀行

https://www.sagabank.co.jp/outline/20180328.pdf

佐賀共栄銀行

https://www.kyogin.co.jp/uploads/files/about/plan/11thchuukei.pdf

(4)各行における指標の引用元

基本的には各行のWebサイトより引用しています。修正OHRについては「月刊 金融ジャーナル2017 9月号」、県内貸出シェアについては同「増刊号 金融マップ2018年版」より引用しています。

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。