金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る ~第41弾:大分県編~
1.大分県の地銀
大分県は温泉が有名です。別府温泉や由布院温泉をはじめとする温泉は、源泉数、湧出量ともに日本一です。
大分県には第一地銀の大分銀行、第二地銀の豊和銀行があります。
主要指標は下記表のとおりです。他県同様、第一地銀である大分銀行が第二地銀である豊和銀行を圧倒しています。
大分銀行 | 対豊和銀行比 | 豊和銀行 | |
経常収益(H29.3) | 49,000百万円 | 4.8 | 10,148百万円 |
コア業務純益(H29.3)*1 | 9,600百万円 | 5.7 | 1,679百万円 |
修正OHR(H29.3)*2 | 75.3% | – | 77.9% |
経常損益(H29.3) | 9,100百万円 | 11.4 | 795百万円 |
自己資本比率(H29.3)*3 | 10.3% | – | 8.0% |
従業員(直近) | 1,658名 | 3.4 | 488名 |
県内貸出シェア(H29.3) | 42% | 11% |
*2 経費÷業務粗利益で算出。効率性を示す指標で低い方が良い。地銀の加重平均値は70.3%
*3 両行とも国内基準。国内基準では4%以上が義務付けられている。
2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較
では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。
(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください。
また、同ベンチマーク値の高低について他行と比較することがありますが、項目によっては銀行間で定義や集計方法が異なることがあります。そのため、必ずしも同じ前提での比較ではなく、参考程度である点くれぐれもご留意ください)
(1)大分銀行
共通ベンチマークは5つ掲載しています。
選択ベンチマークは7項目です。数は少ないですが、経営者保証ガイドラインの活用先数、M&A支援件数、事業承継支援先数などの重要なものは載せています。
数値面では、M&A支援件数が197件とやや多いです。二桁が全体の平均です。
独自ベンチマークはありません。
(2)豊和銀行
共通ベンチマークは5つです。
数値面では、条件変更先のうち、順調以上の先の割合が8割以上と大変多いです。通常は逆に不調先が8割以上です。また、事業性評価融資割合の偏りも通常とは逆です。全体に占める割合について、一般的には残高ベースの方が先数よりも大きいのですが、当行では先数5%、残高ベースで4%と先数の方が小さいです。
選択ベンチマークは5項目です。担保保証に依存しない融資、M&A支援件数、事業承継支援先数などはあった方がよかったでしょう。一方、本業支援担当者の全体に占める割合や本業支援の業績評価に占める割合、運転資金に占める短期融資の割合は珍しい項目です。
数値面では上記の本業支援担当者の全体に占める割合が高めです。支店従業員で53%、本部従業員で25%がいずれも掲載行の中ではトップで平均の二倍近くの数値となっています。
独自ベンチマークは当行が大きく力を入れている販路開拓コンサルティング(Vサポート)関連が目立ちます。重点分野を強調するにはわかりやすい指標です。
3.定性面の比較
(1)大分銀行
大分銀行の経営計画の基本テーマは「Best Quality」です。それを受けて、高付加価値の実現に向けた営業の実践を最重要の課題としています。
金融仲介機能のベンチマークは取組みとベンチマークが別々に説明されています。やはり定性情報とベンチマークという定量情報を有機的に理解するには一体で見せた方が良いと思います。
また、経営計画で質の高さを最重要視しているのであれば、これにまつわる何らかの独自ベンチマークが欲しいところです。
(2)豊和銀行
豊和銀行の経営計画における取組方針は、「地域への徹底支援による地方経済の活性化」「営業力・収益力の強化」「経営基盤の強化」です。
金融仲介機能のベンチマークは定性情報がほぼなく、数値の羅列に近い状態です。独自ベンチマークを掲載したり、業績評価関連など希少なベンチマークを載せているので、定性情報も併せて載せた方が分かりやすかったと思います。
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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。
(参考)
(1)各行が掲載している金融仲介機能のベンチマーク
①大分銀行
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)
11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)
16 創業支援先数(支援内容別)
18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
19 M&A支援先数
21 事業承継支援先数
33 運転資金に占める短期融資の割合
独自ベンチマーク
なし
②豊和銀行
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)
33 運転資金に占める短期融資の割合
34 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している支店従業員数、及び、全支店従業員数に占める割合
35 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している本部従業員数、及び、全本部従業員数に占める割合
36 取引先の本業支援に関連する評価について、支店の業績評価に占める割合
独自ベンチマーク
1 販路開拓コンサルティング(Vサポート)の契約数等
2 事業再生に向けた支援目的の債権処理
(2)各行における金融仲介機能のベンチマーク
大分銀行
豊和銀行
(3)各行における経営計画
大分銀行
豊和銀行
(4)各行における指標の引用元
基本的には各行のWebサイトより引用しています。修正OHRについては「月刊 金融ジャーナル2017 9月号」、県内貸出シェアについては同「増刊号 金融マップ2018年版」より引用しています。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。