金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る ~第43弾:三重県編~
1.三重県の地銀
三重県の基幹産業は製造業であり、工業製品出荷額は全国9位です。また、第一次産業においては緑茶生産額が全国3位、松坂牛が日本を代表する高級肉といった特徴があります。
三重県には第一地銀である三重銀行、百五銀行及び第二地銀である第三銀行があります。このうち、三重銀行及び第三銀行は2018年4月に経営統合し、三十三フィナンシャルグループとなる予定です。
主要指標は下記表のとおりです。三十三フィナンシャルグループとなっても百五銀行のシェアには届きません。
三重銀行 | 対第三銀行比 | 百五銀行 | 対第三銀行比 | 第三銀行 | |
経常収益(H29.3) | 26,873百万円 | 0.8 | 70,668百万円 | 2.2 | 31,879百万円 |
コア業務純益(H29.3)*1 | 3,382百万円 | 0.7 | – | – | 5,200百万円 |
修正OHR(H29.3)*2 | 84.2% | – | 80.2% | – | 79.6% |
経常損益(H29.3) | 4,397百万円 | 0.8 | 11,772百万円 | 2.2 | 5,344百万円 |
自己資本比率(H29.3)*3 | 7.9% | – | 9.5% | – | 8.3% |
従業員(直近) | 1,327名 | 0.9 | 2,480名 | 1.8 | 1,400名 |
県内貸出シェア(H29.3) | 13% | 34% | 14% |
*2 経費÷業務粗利益で算出。効率性を示す指標で低い方が良い。地銀の加重平均値は70.3%
*3 全行とも国内基準。国内基準では4%以上が義務付けられている。
2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較
では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。
(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください。
また、同ベンチマーク値の高低について他行と比較することがありますが、項目によっては銀行間で定義や集計方法が異なることがあります。そのため、必ずしも同じ前提での比較ではなく、参考程度である点くれぐれもご留意ください)
(1)三重銀行
共通ベンチマークは5つ掲載しています。
数値面では、三重県の三行ともいえることですが、事業性評価融資の割合が低いです。三重銀行においては、全体に占める先数の割合が4%、残高ベースの割合が4%です。他行平均は各10%、20%程度です。
選択ベンチマークは13項目です。重要な項目はカバーされています。
数値面で特徴ある項目は少ないのですが、あえて言えばM&A支援先数の13件はやや少ないかもしれません。
独自ベンチマークはありません。
(2)百五銀行
共通ベンチマークは5つ掲載しています。
数値面では三重銀行と同様、事業性評価融資の割合が低いです。先数で5%、残高ベースで13%です。
選択ベンチマークは19項目です。多いだけあって、M&A支援件数や事業承継支援件数以外にも、本業支援や再生関連の項目数が多いのが特徴です。
数値面では、全取引先に占めるメイン取引先の割合がやや高めです。平均は40%台半ばのところ、当行は59%あります。
独自ベンチマークは11項目です。数は多いのですが、同じような項目もあり、若干だぶついている印象です。
(3)第三銀行
共通ベンチマークは5つ掲載しています。
数値面では、他二行と同様、事業性評価融資の割合が低いです。先数で3%、残高ベースで3%です。
選択ベンチマークは6項目です。
数値面では、事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数が936件とこの規模の銀行としては多いです。また、転廃業支援先数も65件と多めで、平均の倍程度あります。
独自ベンチマークはありません。
3.定性面の比較
(1)三重銀行.
三重銀行の経営計画は「成長 ~地域とともに~」です。計数目標が「地元(三重・愛知)貸出金末残」という地域性を打ち出している点がややユニークです。重点分野は、持続的成長に不可欠な間口拡大、トップライン収益の増強の二つです。
金融仲介機能のベンチマークは施策・実績・ベンチマークがうまくミックスされていて、分かりやすい説明になっています。一方で、どのテーマも同じウェイトに見え重点項目が分かりにくかったので、メリハリをつけた説明にすればもっと良かったのではないでしょうか。
(2)百五銀行
百五銀行の経営計画は「Nest COMPSS 140」です。重点分野は「働き方改革」「トップライン改革」「地域を支えともに成長」の3つです。具体的な取り組みとしては、事業性評価やコンサルティングを前面に出しています。
金融仲介機能のベンチマークは、細かく分けられたテーマごとに取り組みと共に説明されており、分かりやすいものです。しかし、独自ベンチマークのうち似た項目が複数ある場合があり、やや多すぎる印象です。例えば、M&Aについては、選択ベンチマークとしてM&A支援先数があるほか、独自ベンチマークとしてM&A新規相談件数およびM&Aセミナー開催回数があります。
(3)第三銀行
第三銀行の経営計画は「“ジャンプ アップ!” ~お客さまとともに~ 飛躍のステージ ver.2」です。営業力強化のために業務プロセス、営業戦略、営業体制といった各側面から改革を打ち出しています。
金融仲介機能のベンチマークについては、定性情報による補足はほとんどありません。大きな改善余地があるでしょう。
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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。
(参考)
(1)各行が掲載している金融仲介機能のベンチマーク
①三重銀行
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)
5 事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数
11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)
12 本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合
14 ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合
16 創業支援先数(支援内容別)
18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
19 M&A支援先数
20 ファンド(創業・事業再生・地域活性化等)の活用件数
21 事業承継支援先数
39 取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数
42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数
43 取引先の本業支援に関連する中小企業支援策の活用を支援した先数
独自ベンチマーク
なし
②百五銀行
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)
11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)
12 本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合
13 本業支援先のうち、経営改善が見られた先数
14 ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合
15 メイン取引先のうち、経営改善提案を行っている先の割合
16 創業支援先数(支援内容別)
18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
19 M&A支援先数
20 ファンド(創業・事業再生・地域活性化等)の活用件数
21 事業承継支援先数
22 転廃業支援先数
23 事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合
24 事業再生支援先におけるDES・DDS・債権放棄を行った先数、及び、実施金額(債権放棄額にはサービサー等への債権譲渡における損失額を含む、以下同じ)
33 運転資金に占める短期融資の割合
39 取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数
40 外部専門家を活用して本業支援を行った取引先数
42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数
43 取引先の本業支援に関連する中小企業支援策の活用を支援した先数
独自ベンチマーク
1 新規開業支援実施件数
2 商談会・セミナー開催回数
3 海外事業展開サポート件数
4 コンサルティング実施件数
5 環境関連提案実施先数
6 環境関連融資実行額
7 M&A新規相談件数
8 M&Aセミナー開催回数
9 当行メインの要注意以下先に対する本業支援先数
10 当行メインの要注意以下先に対する経営改善計画策定支援先数
③第三銀行
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
5 事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数
11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)
18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
19 M&A支援先数
21 事業承継支援先数
22 転廃業支援先数
独自ベンチマーク
なし
(2)各行における金融仲介機能のベンチマーク
三重銀行
百五銀行
第三銀行 p.7~
(3)各行における経営計画
三重銀行
百五銀行
第三銀行
(4)各行における指標の引用元
基本的には各行のWebサイトより引用しています。修正OHRについては「月刊 金融ジャーナル2017 9月号」、県内貸出シェアについては同「増刊号 金融マップ2018年版」より引用しています。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。