金融仲介機能のベンチマークを項目ごとに見る ~第六弾:選択ベンチマーク21-25~
前回に引き続き、金融仲介機能のベンチマークを各々のベンチマークごとに見ていきます。
目次
選択ベンチマーク21
事業承継支援先数
(掲載率)
7割程度です。
(全体に占める割合など)
与信先に占める割合(数値は独自算出)では、最大値が13%、平均が1%です。
(寸評)
選択ベンチマーク19のM&A支援先数と並び、非常に多くの銀行が掲載している項目です。M&A支援先数と同様、銀行間のばらつきが大きいのが特徴です。事業承継は日本全国の課題でもありますから、平均が1%という数値をもっと高めることは可能でしょう。
選択ベンチマーク22
転廃業支援先数
(掲載率)
2割弱の銀行が掲載しています。
(最大や平均値)
最大値が百弱、平均が三十程度です。
(寸評)
前項目の事業承継と転廃業はある意味表裏一体の関係でもあります。事業承継をできずに苦しみながら延命している企業は非常に多いので、どのように収益化するかは課題ですが、今後の地方経済にとって避けられないテーマでしょう。
選択ベンチマーク23
事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合
(掲載率)
両者2割前後です。
(全体に占める割合など)
実抜計画策定先数の条件変更先に占める割合では、最大値が5割弱、平均が1割弱です。
同計画策定先のうち未達先の割合では、最大値が5割弱、平均が2割弱です。
(寸評)
共通ベンチマーク2「金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況」でも述べましたが、経営改善計画のなし先は条件変更先のうち3割です。4割を占める不調先に計画なし先が含まれることも多いので、実際には3割より大きいと思われます。つまり、条件変更先のうち、多くの先は経営改善計画を策定していません。
一方で、実抜計画策定先数の計画未達割合は2割弱と低い水準です。
このような点を考慮すると、積極的に実抜計画を策定すべきといえます。
選択ベンチマーク24
事業再生支援先におけるDES・DDS・債権放棄を行った先数、及び、実施金額(債権放棄額にはサービサー等への債権譲渡における損失額を含む、以下同じ)
(掲載率)
10%台です。
(最大や平均値)
いずれも最大値は40前後、平均は10前後です(金額の単位は億円)。
(寸評)
事業再生に携わっている現場の感覚からすると、本来必要である水準には到底及びません。銀行の企業文化として、いまだに一部ではこれらの抜本的支援に拒否反応を示すところがあるようです。ただし、企業の財務実態からはこれらの支援が必要なのは明らかなので、今後どこかのタイミングで大きく増えることになるでしょう。
選択ベンチマーク25
破綻懸念先の平均滞留年数
(掲載率)
1行のみです。
(最大や平均値)
1行しかありませんが、3.6年です。
(寸評)
ほとんどの銀行が掲載していません。一方で、再生・低迷期にある企業に対してどの程度銀行が本気で取り組んでいるかを示す指標となりえますので、もっと多くの銀行が掲載することを望みます。
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※最大値、最小値、平均等の数値はH29.3の数値を用いています。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。