税理士の選び方
どのような税理士と探すかはいうまでもなく非常に重要です。
しかし、業界外部の方からは内実が見えにくいため、どのように税理士を選べば良いかわからず困っている方も多いでしょう。
特に、税理士の交代は頻繁にするものではないので、現在の税理士以外の税理士を知らなければ比較のしようもないでしょう。
今回は、そんな方のためにどのように税理士を選べば良いかお手伝いができればと思います。
目次
税理士も唯一の正解はない
まずはじめにお伝えしたいのは、このような税理士が良いとか、こんな税理士が悪いという話をするつもりはありません。
今回の記事を書くにあたり、一般的な税理士への不満を調べてみましたが、その中には社会人として基本的なことができていないケースもあります。
確かに中にはそのような方もいらっしゃるかもしれませんが、現実にはごく一部だと思いますのでそのようなケースは論外として触れません。
今回お伝えしたいのは、税理士選びでミスジャッジをしてしまうと企業も税理士もハッピーにならないということ。
企業が自社に会う税理士を選ぶ上で正しい判断をして、企業にも税理士にもwin-winの関係を築いてもらうことです。
税理士ができることを知ろう
正しく税理士を選ぶためには、まず税理士に何ができるか正確な知識を得ることです。
というのも、トラブルとなる原因の一つに税理士への過剰な期待があるからです。
税理士のできること、できないことを正しく理解すれば期待ギャップは解消されます。
まず、税理士はその名の通り税務の専門家です。そして、税務は会計と密接な関係にありますから、会計にも詳しくなります。
しかし、一口に税務と会計に詳しいと言っても、その中での専門性は多岐に分かれます。
具体的には、法人税や消費税はほとんどの税理士が詳しいものの、相続税は実務で携わるのは限られます。
また、組織再編税制など特殊な税制についても詳しい税理士は限られます。
外部からは税理士という以上、税金なら何でも詳しいイメージがありますが、実際には携わる実務経験によって得意分野が異なってくるということです。
これは、同じ専門職である医師でも外科や内科などに分かれたり、弁護士でも企業法務や民事など得意分野が異なることと同じです。
税務ですら得意分野が異なるので、税務以外の分野についてはなおさら人ごとに異なります。
経営の知識がどの程度あるかはその税理士の意欲や経験に大きく左右されます。
特定の業界に詳しいかどうかもそれまで経験したことがあるか否かによるので一般的には期待できません。
この辺りのことは実際に仕事をしてもらうまでわからないことも多いですが、中にはWebサイトなどで得意分野を載せているケースもあるので、事前にわかるのであれば選ぶ際の手助けとなるでしょう。
いずれにせよ、全ての分野に精通した税理士はまずおらず、逆に何も得意分野がない税理士もまずいないということです。
つまり、あいまいなイメージで良い税理士を探そうとするよりも、自社のニーズを得意分野にしている税理士に頼むことが最善ということです。
繰り返しになりますが、目的もあいまいなまま過剰な期待を抱くと高確率でがっかりしてしまいます。
価格か品質か
さて、では税理士に頼む上での自社のニーズとはどのようなものでしょうか。
まず、価格の安さを重視して選ぶケースが圧倒的に多いかと思います。
価格は明確に順位付けができるので、一番わかりやすい指標ですからね。
しかし、この場合には落とし穴があります。
格安の場合は品質については一切期待できないということです。
前節で税理士ごとに得意分野が異なると書きましたが、格安の場合は得意分野以前の問題です。
なぜなら、会計事務所に限らずどんな会社でも赤字商品しかなければ経営は行き詰まるからです。
例えば、最近は無課金のスマホゲームが流行っています。
多くの人にとって無料なのはありがたいと思えるかもしれませんが、無課金ゲームという性質のビジネスモデル上、どこかで回収する仕組みになっています。
例えば、一部のヘビーユーザーに多額の課金をしてもらったり、無料ユーザーを始めにのめり込ませた上でどこかのタイミングで課金しないと進むのを難しくして課金させるなどです。
逆に、課金をしなければ運営を維持できなくなるのでそのゲームも早い段階で終了してしまいます。
つまり、無料や格安は消費者にとってありがたいことのように見えますが、そのしわ寄せは必ずどこかにくるということです。
税理士に格安を求めるのであれば、その会計事務所にとって経営を成り立たせるためには二つしか方法はありません。
別の機会でたくさんお金をもらうか、手間を極力かけないようにするかです。
前者はお願いした企業にしてみれば騙されたように感じるでしょう。
後者は元々最低限のことしか求めないのであればそれでも良いでしょうが、一定のサービス水準を求めているのであればトラブルの元になります。
つまり、一定の品質を求めるのであれば相場の報酬は必要ということです。
品質を求める場合、前節で述べたように税理士ごとに得意分野が異なってきます。
例えば、当社では経営改善や資金繰り改善が得意です。
他の税理士の中には、相続に強い税理士や税務調査に強い税理士、特定の業界に詳しい税理士もいるでしょう。
このような中で、自社の解決すべき課題は何かを明らかにすることで自ずとどのような税理士を選べば良いかわかってくるでしょう。
どうやって探すか
さて、どのような税理士を捜せば良いかわかったとして、次はどのように探せば良いかです。
同業者に相談する
一番多い方法は企業の同業者から紹介してもらうことです。
評判の良い税理士は、お客様も同業者に紹介したくなるので、もし新しい税理士を探しているのであれば仲の良い同業者に相談してみるのもよいでしょう。
この場合は紹介される側の税理士も責任を感じるので、それなりの担当者をつけるインセンティブがあるという面もあります。
一方で、紹介された税理士とトラブルになってしまうと、紹介してくれた同業者と気まずくなってしまうため、万が一不満を感じても我慢しがちになるというデメリットがあります。
会計事務所のWebサイトで判断する
次に多いのはネット検索で個別の会計事務所のWebサイトを調べる方法です。
この場合、その事務所の得意分野がわかるのであれば選ぶ際の手助けになります。
つまり、メリットとしては自社のニーズに応えてくれそうな会計事務所を探しやすい一方、見つけ出すまでは手間がかかるというデメリットがあります。
この場合は、もしもその税理士と合わなければ紹介の場合のように誰かに気兼ねすることなく税理士を再度変更できるというのもメリットの一つと言えるかもしれません。
銀行から紹介してもらう
どの銀行もそれなりに知っている税理士がいるものです。
特に、事業再生など専門性の高い分野は毎回同じ会計士・税理士に頼むケースも多く、得意分野を把握した上で紹介されるケースがほとんどです。
しかし、この場合に注意しなければならないことがあります。
紹介された税理士にとっては銀行は言わばお得意様であるため、場合によっては企業寄りではなく銀行寄りの判断をするケースもあり得ることです。
例えば、企業としては自分による経営の存続を希望するにもかかわらず、銀行ではM&Aや破産が望ましいと判断していれば、この税理士が銀行の本音を代弁するケースもあります。
銀行は企業への債権者という立場上、同業者や次節の士業からの紹介ほど利害関係がないわけではないので、この辺りはデメリットと言えるでしょう。
付き合いのある士業に相談する
社労士や司法書士、弁護士など付き合いのある士業がおられるのであれば、その方に相談するのも良いでしょう。
士業間のネットワークがあるケースも多いため、良い税理士を知っているのであれば紹介してくれるかもしれません。
ただ、この場合はその士業も税理士の実際の仕事ぶりを知らない可能性もあるので、同業者からの紹介ほど安心するのは難しいかもしれません。
紹介サイトを利用する
先ほどネット検索で個別の会計事務所のWebサイトを調べる方法を述べましたが、例えば「地域名 税理士」などで検索すると上位に来るのはまとめサイトのような、特定の地域におけるいくつかの税理士事務所を比較したサイトでしょう。
これはこれで一つの目安になるため探す方にとってはありがたい存在です。
一方、このようなサイトを運営しているのは税理士も含めた業者紹介サイトが多いです。
紹介サイトを利用する場合のメリットは探す手間を任せられるため、企業の負担が軽くなることです。
一方のデメリットは品質に不安がある点です。
これは税理士の質が低いということではなくて、紹介サイトはそのビジネスモデル上紹介料を税理士からもらうことと、紹介サイトの仕組み上どうしても低価格が優先されやすいという理由があるからです。
税理士からしてみれば、「割りの悪い」案件と言うことになります。
低価格の問題点は前節で述べたとおりです。
よって、手間を軽さと低価格を選ぶのか、品質を選ぶのか、自社のニーズに応じて利用すれば良いでしょう。
まとめ
税理士を探す方法として色々な書きました。
実際に成約まで繋がるケースの多い順に並べましたが、この中でおすすめは同業者からの紹介と会計事務所のWebサイトで判断する方法です。
まず同業者に相談してみて、そこで適当な税理士が見つからなければネット検索で個別の会計事務所を探してみるという手順がおすすめです。
いずれにせよ、その税理士の得意分野が自社のニーズに合っているかを確認することは大切です。
冒頭にも書きましたが、唯一正解の税理士はどこにもいません。
ほとんどの税理士は良心的な方ばかりです。
税理士選びの失敗は期待ギャップが原因となるケースがほとんどです。
期待ギャップを無くすために自社に合った選択をし、こんなはずじゃなかったを少しでも減らせればと思います。