再生に強い士業は何が違うのか
士業選びに失敗して欲しくない
我々は企業再生の分野をメインに行なっております。
そのため、仕事柄様々な専門家や士業と関わるのですが、実は必ずしも企業再生の分野に強い士業は多くありません。
一方、企業再生の分野は企業にとって正に存続の可否を決定づけるものです。
そのため、あまり経験のない士業に依頼してしまうと取り返しのつかないダメージを被るリスクが高いのです。
なので、士業選びは絶対に失敗して欲しくないと思います。
では、企業再生の分野において経験豊富な士業は何が違うのでしょうか。
いくつかの士業について見ていこうと思います。
公認会計士
企業再生局面における公認会計士の役割は財務調査及び事業計画策定が中心になります。このうち、財務調査においては再生経験の有無はあまり影響しません。
差が出るのは計画策定の内容です。
具体的には、各再生スキームにおいては一定の数値基準(債務超過解消時期など)を満たす必要があります。これをクリアするために、どのように計画を練り込むかで差がつきやすいのです。
また、返済計画の策定や担保の取り扱い、新規融資の反映の仕方についても分かりやすい差が出ます。
これらは金融機関の考え方にダイレクトに左右されるからです。
さらに、モニタリングにおいても違いが出ます。
計画期間中、計画通りに推移することは稀で、計画と実績に差が出るのが通常です。これは計画の作り込みが甘いという理由ではなく、どうしても計画作成時に読みきれない要因が出てきてしまうからです。そのため、差異の原因を分析して、適切に対応策を取らなければならないのですが、慣れていないとうまくリカバリー出来ないのです。
税理士
企業再生においては、この局面に限定して使える特殊な税制が多数あります。しかし、使用局面が限られているが故に、経験がある税理士がほとんどいないのが実情です。
具体的な税制としては、不動産の評価損を税制上も損金にできる企業再生税制、これの個人版である個人版再生税制、架空資産などの実在性のない資産を債務免除益と相殺することができる特殊な取り扱いなどがあります。
また、良い事業のみを残して悪い事業を清算するような第二会社方式など、組織再編を絡めた再生スキームにおいても組織再編税制という大変複雑な税務知識が求められることになります。
抜本的な再生局面においては多額の債務免除益が発生するのが通常で、よって税金を発生しない手当をできているか否かがスキーム選択のネックになってきます。
不動産鑑定士
経営改善計画などでは固定資産評価額を用いることが一般的ですが、再生計画になると不動産について不動産鑑定士による鑑定評価が必要になるのが一般的です。
この場合において金融機関の一番の関心ごとは保全の多寡です。
つまり、担保不動産の評価額です。
この点、普通の鑑定士は何のために鑑定をするのか分かっていない場合がほとんどです。
実務上、継続使用を前提とした正常価格や早期処分を前提とした特定価格などの複数の目的の価格を出してもらうのですが、いずれかを出してもう一方は単純に掛目をかけるだけの方法がほとんどです。
しかし、目的の観点から鑑定額算出過程を精査していくと、計算前提を変えた方が良い場合もあり、その結果大きく鑑定額が変わることがあるのです。
この鑑定額の多寡もスキームの選択に影響、場合によっては再生計画の可否にすら影響するので大変重要です。
中小企業診断士
再生局面においては、当然事業内容の改善が求められますので、中小企業の事業の専門家である中小企業診断士による事業調査が必要になってきます。
しかし、上述した士業の中でも最も実力のブレが大きいのがこの専門家です。
何が問題かというと、実務経験が豊富な診断士がほとんどいないのですね。
もっともらしい報告書を書くことはできるのですが、肝心の改善方法の内容がありきたりになっているケースが非常に多いのです。
身も蓋もないことを言えば、再生計画において一番大切なのは計画数値そのものではなく、どのような改善施策を実施するかです。
言い換えると、どれだけ中身のあるアクションプランを作成し、それを計画期間中に実行に移すかです。
特に、中小企業では限られたお金や人員で計画を実行に移さなければなりません。
そのため、頭でっかちではなく、しっかりと会社を前に進ませることができる中小企業診断士が求められるのです。
失敗は許されない、依頼は慎重に!
その資格を持っていない人からすると、その資格を持っている人はみんなすごい、専門家だと一緒くたにしがちです。
しかし、上述したように同じ士業であっても経験の有無によって最終的な成果に雲泥の差がついてしまいます。
企業の再生はおそらく一生に一度だけでしょう。
そのため、経験のある士業に依頼し、必ず再生を確実なものにしてください。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。