事業承継における世代間のずれをどう乗り越えるか①~後継者側で大切なこと~
世代間の違いを乗り越えるヒントは相手を尊重することから始まるのではないか
先日訪問した事業者の課題は事業承継がスムーズに進んでいないことでした。
創業者世代と後継者世代で断絶があるのですね。
この事業者には経営改善のためのコンサルをしていました。経営改善のための方向性を決めなければいけないということで、前回訪問時に世代間でよくよく話し合ってくださいということを伝えました。そこで今回改めてその内容をフィードバックしてもらったのですが、やはりまだ不十分に感じました。
今回のケースにおいて世代間の違いとして浮き彫りになったのは、簡単に言うと新規顧客を開拓するか、常連客を大事にするかです。つまり、後継者世代は今までのやり方ではいずれ経営が立ち行かなくなってしまうため、何とか試行錯誤をして現状を打開したい。しかし、創業者世代の腰が重いため、なかなか前に進めないという認識。
一方の創業者世代は、このままでは難しいかなあという何となくのイメージはあるけれども、常連さんは今のままの会社をほめてくれるので、新しく何かをすることで常連さんが来なくなったらいやだなあと。
このような構図はほかの多くの会社にも当てはまるのではないでしょうか。
新しい世代は時代に合った新しいやり方を志向し、古い世代は今までのやり方を変えたくないと。
僕が今回書きたいのは、この図式をどう乗り越えるかです。
一見経営の改善という視点からは新しい世代の方がより柔軟に見えて正しそうです。しかし、事業承継も人と人の問題。人が絡む限り、正しいかどうかという単純な話では済まない。
どういうことかというと、創業者世代も内心今のやり方では厳しいという認識はあるのです。しかし、新しいやり方を全面的に認めてしまうと、それまで長年続いたやり方を否定することになる。それはそのままこれまでの自分自身を否定されるようで、ここが引っかかって進まないのではないかと思うのです。つまり、理性でなく感情が邪魔しているということですね。後継者はこの感情の部分を大切にしてあげなければならないということですね。
そんな甘いことは言ってられないよ、とお思いでしょうか。
僕はそうは思いません。
より大切なのは、やり方そのものではなく、創業者世代への敬意だということが分かればいろいろな方法が考えられるのではないでしょうか。
創業者世代が残した良い部分というのはたくさんあって、その全てが時代遅れで今はもう通用しないということはありません。大事なのは、創業者の思いをしっかりと把握し、形を変えて表現することなのかなと思います。
事業承継がいったんこじれるとリカバリーはすごく難しくなります。
元々はちょっとしたやり方の違いが発端なのでしょうが、それが徐々に感情的に積もり、憎しみになる。やがて、相手の言うことや存在を全否定してしまう。こうなってしまうと、言動の是非の問題ではなくなってしまうので、完全に八方塞がりの状態です。前に進みようがありません。悲しいことですが、このようなケースは現実に散見されます。
逆に言うと、自分が尊重されているという感覚があれば多少のことは妥協できるものです。
小手先のテクニックだと心に響きませんので、心からリスペクトし、それを伝える努力は必要だと思いますけれど。
今回は事業承継における後継者側の大事なポイントを書きました。
次回は創業者側のポイントを書こうと思います。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。