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金融仲介機能のベンチマーク①~金融機関の意識の差は歴然~

金融機関を判断するためのツールとした最近始まった金融仲介機能のベンチマーク

このコラムでも度々登場している金融仲介機能のベンチマーク。これは、金融庁主導の元、今年から開示されることになった地方の金融機関が自ら公表する多数の指標のことです。目的はいくつかありますが、一番大きいのは顧客が取引金融機関を判断するための判断材料とすることでしょう。すべての金融機関が開示すべき共通ベンチマーク5項目と、金融機関が任意に選べる選択ベンチマーク50項目から構成されます(※)。

金融行政方針転換の大きな柱として非常に期待されています。大きな特徴は、金融機関の自主性を尊重している点です。つまり、共通ベンチマークという一律のくくりはあるものの、それ以外の選択ベンチマークによって各行の特色については各行の判断に任せるとした点です。

開示の姿勢について金融機関ごとの意識の差が出ている

さて、この金融仲介機能のベンチマーク、現時点において半分強の地方銀行が公表しております。しかし、その公表の姿勢について非常に大きな温度差があると感じています。この制度が始まる際、批判内容の一つとして金融機関ごとの規模が違うのだから、ベンチマークを比較しても意味がないという意見を度々目にしました。これは確かに一理あるのですが、ここでいう公表の姿勢から感じるのは、それ以前の問題です。具体的には、共通ベンチマークしか公表しなかったり、共通ベンチマークすら一部を公表しなかったりする金融機関があることです。

上述したように、各行の自主性を尊重するために選択ベンチマークの項目を多数設けています。しかし、共通ベンチマークしか開示しないのであればまったくその金融機関の特色が見えてきません。また、共通ベンチマークを「共通」としたのは、地方経済の最重要な担い手としての地方金融機関にとって普遍性を持つ指標だからでしょう。にも関わらず共通ベンチマークの一部を公表しないというのは、果たして多数の利害関係者にきちんと情報提供をする気があるのかという疑念を抱かせます。もちろん、上記のような金融機関は全体のごく一部、全体の1~2割程度です。しかし、ベンチマーク未公表の金融機関が自行の弱みを開示したくないというネガティブな理由により未だ開示していないとしたら、積極的に開示をしない金融機関の割合はもっと大きくなるでしょう。

今はまだこれらのスタンスの違いは明確ではありません。しかし、時間が経つうちにやがて金融機関の二極化という大きな流れになっていくのではないかと感じています。

今までにない判断材料を積極的に活かそう

この金融仲介機能のベンチマークは、財務情報など一律の指標に限られない点に大きな意味があります。財務情報を比較しても、財務的健全性や収益性の多寡は分かるかもしれませんが、ある銀行がどの分野に注力しているのかは非常にわかりずらいのです。逆に言えば、今までは違いの分かりにくかった金融機関を自分で判断するための、絶好の機会だとも言えるでしょう。

事業者や行員にとっては金融機関を正しく判断するための材料です。

金融機関の経営者にとっては自分の思いやメッセージを伝えるための有用なツールです。

関係者が積極的に利用することで自ずと金融機関の淘汰が進み、あるべき形に収斂されていくのでしょう。

(※)詳細な内容はこちらをご覧ください。

http://www.fsa.go.jp/news/28/sonota/20160915-3/01.pdf

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。