金融仲介機能のベンチマーク②~選択BMの中で重視されている項目は何か~
多くの金融機関が重視している項目は販路開拓、M&A、事業承継
金融仲介機能のベンチマーク(※1)が、各行からある程度出揃いました。共通ベンチマーク5項目については、どの項目についても全体の9割程度の銀行が公表しており、掲載率について項目間の差がありません。一方で、選択ベンチマーク50項目については、項目数が多いこともあり、項目間の差が非常に大きくなっています。このうち、比較的どの銀行も力を入れていると思われる項目は販路開拓、M&A、事業承継の3つです(※2)。これらの項目については全体の6,7割の金融機関が掲載しています。やはり選択ベンチマークであっても、いずれの金融機関にとって非常に重要な項目ということでしょう。
事業価値向上の基本は売上向上、売上向上の基本は販路開拓。
後継者難は日本全国が抱える共通した課題。
これらを軽視できる地方金融機関は今の日本には存在しないといっても過言ではないのでしょうか。
金融機関間の比較は現時点では困難
一方で、これらのベンチマークを金融機関ごとに比較しても現時点ではほとんど意味が無いように思います。金融機関ごとの規模が違うから注力の実態が分かりにくいというよくある批判が理由ではなく、おそらく金融機関ごとに集計方法が異なるためです。例えば、事業承継のベンチマークについては、金融庁のWEBサイトには「 事業承継支援先数」とのみ記載があります。この「支援」の内容が金融機関ごとにばらばらではないかということです。一口に事業承継支援といっても、自社株の評価から専門家の紹介や実行支援までその内容は様々です。具体的に「支援」の内容を明確に説明している金融機関もありますが、そうでない金融機関もあります。その結果、あまり規模の大きくない金融機関でも膨大な数の「 事業承継支援先数」を記載していたり、逆のケースも見受けられます。どちらが正しいということはありません。「支援」の定義が各行ごとに異なるのは自然です。ここで強調したい点は、各行間の比較ではなく、むしろ同一行の中で数値の時系列での推移や定性的な説明に意味があるという点です。
ぜひ自分の目で確かめてほしい
販路開拓、M&A、事業承継といった項目は選択ベンチマークではあるものの、非常に重要な項目なので、今後どのようにこれらに関する開示を充実させるかは、取引金融機関を判断するうえで重要な試金石となります。特に、自社の販路開拓、M&A,事業承継を考えている会社にとっては非常に有益な情報になるのではないでしょうか。通常の会社であれば複数の金融機関と取引していることが多いと思います。その中から一番自社の課題に強そうな金融機関に相談してみるのも一つの合理的な方法となるでしょう。
(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。
(※2)具体的な項目名は以下になります。
18. 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
19. M&A支援先数
21. 事業承継支援先数
(注)本コラムにおける集計数値は、2017年5月14日現在公表されている情報に基づいて我々が独自に集計したものです。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。