金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第24弾:徳島県編~
1.徳島県の地銀
徳島県はLEDや医療関連分野が強く、製造業の比率が他県より高いです。
徳島県には第一地銀である阿波銀行と第二地銀である徳島銀行があります。
主要指標は下記表のとおりです。他県同様、第一地銀である阿波銀行が徳島銀行よりも規模が大きいです。
阿波銀行 | 対徳島銀行比 | 徳島銀行 | |
経常収益(H29.3) | 54,403百万円 | 2.1 | 26,184百万円 |
コア業務純益(H29.3)*1 | 17,743百万円 | 2.8 | 6,379百万円 |
修正OHR(H29.3)*2 | 60.5% | – | 68.0% |
経常損益(H29.3) | 18,983万円 | 3.1 | 6,191百万円 |
自己資本比率(H29.3)*3 | 11.1% | – | 9.3% |
従業員(直近) | 1,312名 | 1.3 | 984名 |
県内貸出シェア(直近) | 46% | 21% |
*2 経費÷業務粗利益で算出。効率性を示す指標で低い方が良い。地銀の加重平均値は70.3%
*3 両行とも国内基準。国内基準では4%以上が義務付けられている。
2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較
では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。
(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)
(1)阿波銀行
共通ベンチマークは5つ掲載しています。
数値面ではメイン先のうち経営指標が改善した割合は少ないです。他行平均が7割程度のところ、当行は4割台です。
選択ベンチマークは7項目です。項目として珍しいのは企業誘致数です。本業支援関連や担保・保証に依存しない融資関連はあった方が良かったと思います。
数値面ではメイン取引先の全取引先に占める割合が高めです。他行が4割強程度が多いところ、当行は6割強あります。一方、経営者保証ガイドライン活用先数の割合は低めです。当行は3%程度ですが、他行は10%前後あることが多いです。
独自ベンチマークはありません。
(2)徳島銀行
共通ベンチマークは5つ掲載しています。
数値面では 、事業性評価融資先数の割合が少ないです(2.3%)。しかし、同残高ベースの割合では13.7%となり、残高が大きい先を重視していることが分かります。なお、他行は各10%程度、20%程度です。
選択ベンチマークは10項目です。M&A支援数や担保・保証に依存しない融資関連はあった方が良かったと思います。
数値面ではメイン取引先の全取引先に占める割合が3割弱と少ないです。阿波銀行が逆に高めである点を考慮すると、第一地銀と第二地銀の特徴が顕著に表れた県と言えるでしょう。
事業承継支援数の25件も他行と比べて低いです。
独自ベンチマークは4項目です。面白いのが「店舗ネットワーク等を活用した販路開拓支援」です。やはりベンチマークは具体的であるほど銀行の意図が伝わってきますね。
3.定性面の比較
阿波銀行の経営計画(平成29年度~平成31年度)は「Sparkle 125th」です。基本戦略は事業性評価など8項目あります。「攻めのGRC戦略」や「オベリスク管理の高度化」といった珍しい言葉が出てくるのが目を引きます。
金融仲介機能のベンチマーク自体の説明はありません。構成はテーマ・取組・ベンチマークをセットにした一般的なものですが、分量が少なく物足りない印象です。独自ベンチマークも含めてもう少し特徴が欲しいですね。
徳島銀行の経営計画(平成28年度~平成30度)は「Evolution and Creation to the Future」です。徳島銀行は香川銀行、大阪の大正銀行とトモニホールディングスを形成しているため、同計画にもその影響があります。基本戦略の一つには「グループシナジー実現による営業基盤の拡大」があり、その実施項目としても大阪戦略が定められています。経営目標指標としても大阪地区貸出金残高が設定されています。
金融仲介機能のベンチマークは地域経済活性の取り組みに対しての自己評価ツールという金融庁の見解をそのまま記載しています。構成はスタンダードでわかりやすいものです。また、ベンチマークの位置づけではないですが、取組目標値と実績値が両方掲載されていたのは取り組みの本気度を測るものとして好感が持てました。
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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。
(参考)
(1)二行が共通して掲載している項目
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)
2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)
11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)
21 事業承継支援先数
(2)一行のみが掲載している項目
①阿波銀行のみが掲載している項目
共通ベンチマーク
なし
選択ベンチマーク
12 本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合
17 地元への企業誘致支援件数
19 M&A支援先数
独自ベンチマーク
なし
②徳島銀行のみが掲載している項目
共通ベンチマーク
なし
選択ベンチマーク
14 ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合
16 創業支援先数(支援内容別)
18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
23 事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合
39 取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数
42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数
独自ベンチマーク
1 事業性融資新規取引先数
2 店舗ネットワーク等を活用した販路開拓支援
3 海外進出・海外展開支援を行った先数
4 経営改善支援を行った先、うち債務者区分が改善した先、改善先の割合
(3)各行における金融仲介機能のベンチマーク
阿波銀行 p.13~
徳島銀行
(4)各行における経営計画
阿波銀行(平成29年度~平成31年度)
徳島銀行(平成28年度~平成30年度)
(5)各行における指標の引用元
基本的には各行のWebサイトより引用しています。修正OHRについては「月刊 金融ジャーナル2017 9月号」、県内貸出シェアについては同「増刊号 金融マップ2018年版」より引用しています。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。