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金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第8弾:群馬県編~

1.群馬県の地銀

群馬県には第一地銀である群馬銀行と第二地銀である東和銀行があります。

主要指標は下記表のとおりです。群馬銀行が規模としては圧倒しています。

群馬銀行対東和銀行比東和銀行
経常収益(H29.3)19,136百万円3.040,106百万円
経常損益(H29.3)34,552百万円3.310,496百万円
従業員(直近)3,172名2.11,494名
県内貸出シェア(H25.3)41%4.210%

2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較

では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。

(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)

(1)群馬銀行

共通ベンチマークは五つすべて掲載しています。

選択ベンチマークは28項目掲載しています。他県の銀行と比べて非常に多いのですが、ここまで多いと他県で掲載されていて、当行で掲載されていない項目が気になります。具体的には、本業支援に関連する支店や本部の従業員数、業績評価関連の5項目が一つも掲載されていません。

また、事業性評価融資の割合が先数1%、残高4%と、定義の違いを考慮しても他県と比べて著しく低い点も特徴的です。

独自ベンチマークは「営業店支店長による、当行独自の経営環境アンケート実施先数」など6項目あります。個人的には行員による「提案制度の提案件数、採用件数」が面白いですね。

(2)東和銀行

共通ベンチマークは五つすべて掲載しています。

選択ベンチマークも50項目すべて掲載しています。ただし、「地元への企業誘致支援件数」や「ファンドの活用件数」など実績がゼロの項目もベンチマークとして掲載しているため、意図が不明です。

中には「融資申込みから実行までの平均日数(債務者区分別、資金使途別)」や「地元への融資に係る信用リスク量と全体の信用リスク量との比較」など当行しか掲載していない項目もあり非常に貴重なのですが、やはり全項目掲載してしまうと強調したい点がぼやける印象です。

独自ベンチマークについても、「日銀短観(全国、前橋)と当行企業経営調査における製造業の業況判断」などユニークなもの含めて18項目掲載しています。しかし、「経営改善・事業再生支援(経営改善・事業再生支援件数)」など選択ベンチマークと類似の項目もあり、過剰な印象を受けます。

3.定性面の比較

群馬銀行の中期経営計画(平成28年度~平成30年度)は「VT-プラン」です。特徴的だと思ったのが、事業性評価の対象を産業別に分け、群馬県に集積する「ものづくり企業」を主な対象とした点です。地域の特性を活かした設定といえるでしょう。また、銀証連携としてグループ会社のぐんぎん証券との連携を重視している点も目を引きました。

金融仲介機能のベンチマークの位置づけとしては、同計画において「価値ある提案」がキーワードとなっており、それを実現する一環としてベンチマークを公表するという構図になっています。内容面としても、数あるソリューション例を経営課題別に例示するなど、分かりやすいものです。また、ソリューション提案に関するアンケートを独自ベンチマークとしているのですが、外部機関を利用することで顧客の「本音」を聞こうとするなど、取り組み姿勢に説得力があります。

東和銀行の経営強化計画(平成27年度~平成29年度)は「TOWAお客様応援活動」という顧客支援活動を軸としています。目を引いたのは、この活動を強化するために、投信セールスに特化した投信プロモータという人員を配置した点です。

金融仲介機能のベンチマークも「TOWAお客様応援活動」の取り組み状況を説明するために使われるという位置付けです。ただし、そのための説明で用いられているのは独自ベンチマークばかりで、共通ベンチマーク及び選択ベンチマークは上記説明が終わった後に順番に羅列されているだけなので、これらのベンチマークがどのような位置付けなのかは必ずしも明確ではありません。上述したように、選択ベンチマークの一部は他の銀行が掲載していない項目もあるので、見せ方次第では非常にオリジナリティを出せたのではないかと思います。

いずれにせよ、群馬県は両行とも非常に多くのベンチマークを掲載していた点が特徴的でした。

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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。

(参考)

(1)二行が共通して掲載している項目

共通ベンチマーク

              1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移

              2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況

              3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数

              4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)

              5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)

              選択ベンチマーク

              1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)

              2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)

              5 事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数

              7 地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び、無担保融資額の割合(先数単体ベース)

              8 地元の中小企業与信先のうち、根抵当権を設定していない与信先の割合(先数単体ベース)

              11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)

              13 本業支援先のうち、経営改善が見られた先数

              14 ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合

              15 メイン取引先のうち、経営改善提案を行っている先の割合

              16 創業支援先数(支援内容別)

              17 地元への企業誘致支援件数

              18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)

              19 M&A支援先数

              20 ファンド(創業・事業再生・地域活性化等)の活用件数

              21 事業承継支援先数

              22 転廃業支援先数

              23 事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合

              24 事業再生支援先におけるDES・DDS・債権放棄を行った先数、及び、実施金額(債権放棄額にはサービサー等への債権譲渡における損失額を含む、以下同じ)

              26 事業清算に伴う債権放棄先数、及び、債権放棄額

              28 中小企業に対する経営人材・経営サポート人材・専門人材の紹介数(人数ベース)

              30 金融機関の本業支援等の評価に関する顧客へのアンケートに対する有効回答数

              33 運転資金に占める短期融資の割合

              39 取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数

              40 外部専門家を活用して本業支援を行った取引先数

              42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数

              43 取引先の本業支援に関連する中小企業支援策の活用を支援した先数

              44 取引先の本業支援に関連する他の金融機関、政府系金融機関との提携・連携先数

              48 取引先の本業支援に関連する施策の達成状況や取組みの改善に関する取締役会における検討頻度

(2)一行のみが掲載している項目

①群馬銀行のみが掲載している項目

選択ベンチマーク

なし

独自ベンチマーク

    1 営業店支店長による、当行独自の「経営環境アンケート」実施先数

    2 資格保有者数の資格別内訳

    3 スキル認定(法人営業・審査)の状況

    4 海外研修・海外視察団の派遣

    5 事業計画に記載されている取引先の本業支援に関連する施策の内容

6 提案制度の提案件数、採用件数

②東和銀行のみが掲載している項目

選択ベンチマーク

              3 法人担当者1人当たりの取引先数

              4 取引先への平均接触頻度、面談時間

              6 事業性評価に基づく融資を行っている与信先の融資金利と全融資金利との差

              9 地元の中小企業与信先のうち、無保証のメイン取引先の割合(先数単体ベース)

              10 中小企業向け融資のうち、信用保証協会保証付き融資額の割合、及び、100%保証付き融資額の割合

              12 本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合

              25 破綻懸念先の平均滞留年数

              27 リスク管理債権額(地域別)

              29 28の支援先に占める経営改善先の割合

              31 融資申込みから実行までの平均日数(債務者区分別、資金使途別)

              32 全与信先に占める金融商品の販売を行っている先の割合、及び、行っていない先の割合(先数単体ベース)

              34 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している支店従業員数、及び、全支店従業員数に占める割合

              35 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している本部従業員数、及び、全本部従業員数に占める割合

              36 取引先の本業支援に関連する評価について、支店の業績評価に占める割合

              37 取引先の本業支援に関連する評価について、個人の業績評価に占める割合

              38 取引先の本業支援に基づき行われる個人表彰者数、及び、全個人表彰者数に占める割合

              41 取引先の本業支援に関連する外部人材の登用数、及び、出向者受入れ数(経営陣も含めた役職別)

              45 事業性評価に基づく融資・本業支援に関する収益の実績、及び、中期的な見込み

              46 事業計画に記載されている取引先の本業支援に関連する施策の内容

              47 地元への融資に係る信用リスク量と全体の信用リスク量との比較

              49 取引先の本業支援に関連する施策の達成状況や取組みの改善に関する社外役員への説明頻度

              50 経営陣における企画業務と法人営業業務の経験年数(総和の比較)

   独自ベンチマーク

      1 ビジネスマッチング支援件数    

      2 ご提案活動提案件数(補助金申請、大学との共同研究、専門人材確保、海外進出などのご提案件数)

      3 補助金申請支援件数(ものづくり補助金や創業補助金などの補助預金申請を支援した件数)

      4 専門人材支援(専門人材の支援先数、取引成立先数)

      5 大学との共同研究支援(協同を支援した件数、共同研究を開始した件数)

      6 外部機関等と連携した販路拡大支援(支援件数、成立件数)

      7 外部専門機関との連携により、海外進出を支援した件数

      8 経営改善・事業再生支援(経営改善・事業再生支援件数)

      9 抜本的な事業再生支援(DES、DDS、債権放棄等)(実施件数、実施金額)

      10 抜本的な事業再生支援による地元経済への効果(保全された雇用(人)、保全された売上高(億円))

      11 公的資金の活用を通じた地元経済への貢献度

      12 TOWAお客様応援活動実施による貸出金利息への効果

      13 日銀短観(全国、前橋)と当行企業経営調査における製造業の業況判断

      14 当行企業経営動向調査(群馬・製造業)における業況判断とお客様応援活動の取組状況

      15 貸出残高と貸出事業所先数の推移

      16 貸出金利の推移

      17 与対金利鞘の推移

      18 総貸金利鞘の推移

(3)各行における金融仲介機能のベンチマーク 

群馬銀行(平成29年10月3日公表)

http://www.gunmabank.co.jp/about/csr/benchmark/pdf/benchmark02.pdf

東和銀行(平成29年7月公表)

http://www.towabank.co.jp/whatsnew/20170711.pdf

(4)各行における中期経営計画

群馬銀行(平成28年度~平成30年度)

http://www.gunmabank.co.jp/ir/hosin/pdf/setsumeikai.pdf

東和銀行(平成27年度~平成29年度)

http://www.towabank.co.jp/whatsnew/20150821-2.pdf

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。