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金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第14弾:奈良県編~

1.奈良県の地銀

奈良県は神社仏閣や遺跡が多く、観光産業が発達しています。 

奈良県には第一地銀である南都銀行があります。地方銀行は一行のみです。

主要指標は下記表のとおりです。

南都銀行
経常収益(H29.3)74,210百万円
コア業務純益(H29.3)*113,700百万円
修正OHR(H29.3)*274.4%
経常損益(H29.3)16,059百万円
自己資本比率(H29.3)*39.2%
従業員(直近)2,615名
県内貸出シェア(H29.3)49%
*1 銀行の本業の収益性を示す代表的な指標
*2 経費÷業務粗利益で算出。効率性を示す指標で低い方が良い。地銀の加重平均値は70.3%
*3 国内基準。国内基準では4%以上が義務付けられている。

2.金融仲介機能のベンチマーク項目

では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。

(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)

共通ベンチマークは5つ掲載しています。数値面では事業性評価融資が大きく増えています(取引先に占める残高ベースでH28:13%→H29:30%)

選択ベンチマークは13項目です。オーソドックスな項目が中心です。担保・保証に過度に依存しない融資に関連するベンチマークの掲載はほしかったですね。

数値面では、メイン先数の全取引先数に占める割合が他行より高いです。40%から50%程度が他行のほとんどであるところ、同行は65.5%です(H29.3期)。

独自ベンチマークはありません。

3.定性面

南都銀行の中期経営計画(平成29年度~平成31年度)は「活力創造プランⅡ~変革と挑戦~」です。観光振興、林業や医薬品などの地場産業に力を入れている点、他県である大阪府への営業戦略が具体的である点などが特徴的です。

金融仲介機能のベンチマークは、同計画における「地域経済力の創出」を基本的な考え方とし、地域の活性化に向けた取り組みを強化するためベンチマークを用いるとしています。

内容面では、事業性評価の具体的な中身についての記載がありますが、市場環境や競争環境の分析など、極めて普通な点がもったいない印象です。必ずしも変わっている必要はありませんが、ある程度は独自性が欲しかったですね。

また、独自ベンチマークはなしと上述しましたが、独自ベンチマークなのか、ただの分かりやすく説明するために数値を用いているだけなのか、判断に迷う項目はありました。他行では独自ベンチマークについては明示しているので迷うことは少ないのです。数値を掲載すればすなわちベンチマークになるのではなく、その数字に明確な戦略意図を込めたものがベンチマークになるべきであるので、読む方からするとやはり明示されなくてはわかりません。

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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。

(参考)

(1)掲載ベンチマーク

共通ベンチマーク

1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移

2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況

3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数

4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)

5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)

選択ベンチマーク

1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)

2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)

5 事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数

11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)

14 ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合

16 創業支援先数(支援内容別)

18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)

19 M&A支援先数

21 事業承継支援先数

23 事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合

24 事業再生支援先におけるDES・DDS・債権放棄を行った先数、及び、実施金額(債権放棄額にはサービサー等への債権譲渡における損失額を含む、以下同じ)

42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数

43 取引先の本業支援に関連する中小企業支援策の活用を支援した先数

独自ベンチマーク

なし

(2)金融仲介機能のベンチマーク

南都銀行(平成29年7月公表)

http://www.nantobank.co.jp/company/csr/pdf/chukai-bench2016.pdf

(3)中期経営計画

南都銀行(平成29年度~平成31年度)

http://www.nantobank.co.jp/company/profile/pdf/plan.pdf

(4)各行における指標の引用元

基本的には各行のWebサイトより引用しています。修正OHRについては「月刊 金融ジャーナル2017 9月号」より引用しています。貸出シェアについては適宜情報が掲載されている各種サイトより引用しています。

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。