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金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る ~第42弾:宮崎県編~

1.宮崎県の地銀

宮崎県は農業を中心とした第一次産業が盛んです。県民所得に占める第一次産業の比率が国内で最も高くなっています。

宮崎県には第一地銀の宮崎銀行、第二地銀の宮崎太陽銀行があります。

主要指標は下記表のとおりです。他県同様、第一地銀である宮崎銀行が第二地銀である宮崎太陽銀行を圧倒しています。

宮崎銀行対宮崎太陽銀行比宮崎太陽銀行
経常収益(H29.3)45,888百万円3.512,954百万円
コア業務純益(H29.3)*111,569百万円4.12,789百万円
修正OHR(H29.3)*267.5%73.6%
経常損益(H29.3)12,385百万円4.92,544百万円
自己資本比率(H29.3)*39.7%10.1%
従業員(直近)1,432名2.2653名
県内貸出シェア(H29.3)45%14%
*1 臨時のものを除いた、銀行本業の収益性を示す指標
*2 経費÷業務粗利益で算出。効率性を示す指標で低い方が良い。地銀の加重平均値は70.3%
*3 両行とも国内基準。国内基準では4%以上が義務付けられている。

2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較

では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。

(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください。

また、同ベンチマーク値の高低について他行と比較することがありますが、項目によっては銀行間で定義や集計方法が異なることがあります。そのため、必ずしも同じ前提での比較ではなく、参考程度である点くれぐれもご留意ください)

(1)宮崎銀行

共通ベンチマークは5つ掲載しています。 

数値面での特徴は、まず関与した創業件数が1,728件と非常に多いです。全取引先に占める割合も14%(筆者算定)と、いずれの数値も他行平均の3~5倍程度高くなっています。          

また、事業性評価融資の割合も非常に高いです。先数で42%、残高ベースで92%です。他行平均が各10%,20%程度なのでその高さが分かると思います。

選択ベンチマークは18項目です。数も多く、重要な分野は網羅されています。

数値面では無保証メイン先の割合が27%と、他行平均の倍近くある点が特徴的でした。

独自ベンチマークは6項目です。地元に関連する項目や成長分野についての項目など、当行の姿勢が良く表れているベンチマークとなっています。

(2)宮崎太陽銀行

共通ベンチマークは2つ、選択ベンチマークは1項目です。いずれも非常に少ない項目数です。

独自ベンチマークはありません。

3.定性面の比較

(1)宮崎銀行.

宮崎銀行の経営計画は「お客さま成長力No.1銀行」です。その法人戦略も「アグリ・フードビジネス」「医業・介護」などの成長分野への積極投資を謳っています。

金融仲介機能のベンチマークでは独自ベンチマークが効果的に用いられています。観光や農業など地元に根差したものや、成長分野に関するものが設定されています。一方、定性情報自体は全体的に弱い印象です。また、三本柱の一つである「女性活躍推進」については独自ベンチマークを設けた方が分かりやすかったのではないでしょうか。

(2)宮崎太陽銀行

宮崎太陽銀行の経営計画は「地域との未来創生プラン」です。その基本方針は「地域産業活性化への貢献」「リテール営業の強化」「持続的成長に向けた態勢強化」「責任ある経営体制の確立」です。

金融仲介機能のベンチマークは質量ともに物足りません。また、見せ方としても文章ではなく表で見せた方が見やすいでしょう。他行はほぼ例外なく表にしています。

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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。

(参考)

(1)各行が掲載している金融仲介機能のベンチマーク

①宮崎銀行

共通ベンチマーク

1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移

2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況

3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数

4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)

5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)

選択ベンチマーク

1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)

2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)

5 事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数

7 地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び、無担保融資額の割合(先数単体ベース)

9 地元の中小企業与信先のうち、無保証のメイン取引先の割合(先数単体ベース)

11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)

14 ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合

15 メイン取引先のうち、経営改善提案を行っている先の割合

16 創業支援先数(支援内容別)

17 地元への企業誘致支援件数

18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)

19 M&A支援先数

20 ファンド(創業・事業再生・地域活性化等)の活用件数

21 事業承継支援先数

23 事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合

39 取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数

40 外部専門家を活用して本業支援を行った取引先数

42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数

独自ベンチマーク

1 地元の観光関連業・アグリ関連業の取引先の売上高の合計

2 地元の観光関連業・アグリ関連業の取引先のうち、経営指標の改善や就業者数の増加が見られた先数

3 当行が単独で設立したファンド及びそれ以外のファンドの活用件数

4 国際ビジネス支援取組件数

5 アグリ関連取引先への支援取組件数

6 医療介護関連取引先への支援取組件数

②宮崎太陽銀行

共通ベンチマーク

1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移

5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)

選択ベンチマーク

12 本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合

独自ベンチマーク

なし

(2)各行における金融仲介機能のベンチマーク

宮崎銀行 p.9~

http://www.miyagin.co.jp/kabunushi/ir/c_disclosure/year2017/parts/pdf/miyagin_disclosure2017_2.pdf

宮崎太陽銀行 p.8~

http://www.taiyobank.co.jp/contents/media/6/201609disclosure_houtei.pdf

(3)各行における経営計画

宮崎銀行

http://www.miyagin.co.jp/kabunushi/profile/a_management/

宮崎太陽銀行

http://www.taiyobank.co.jp/contents/media/6/201503disclosure_04.pdf

(4)各行における指標の引用元

基本的には各行のWebサイトより引用しています。修正OHRについては「月刊 金融ジャーナル2017 9月号」、県内貸出シェアについては同「増刊号 金融マップ2018年版」より引用しています。

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。