ありがちな失敗~経営者の意思が反映されていない計画~を防ぐために
一番多い失敗のパターン
たくさんの再生計画とその後の推移を見てますと、失敗の典型例というものが分かってきます。その中でも一番多いと思われる失敗のパターンは、計画の作成を手伝う専門家が経営者の意思を重視しないケースです。このようなケースでは、経営者が出来そうもない、やる気もないような打ち手が計画の骨子となっているのです。当然のことながら、このような計画に実績がついてくるはずはありません。早々に下振れすることが目に見えています。では、なぜこのような計画が作られるのでしょうか。
事業の理解が足りないことが原因
一番の理由は、専門家といえども会社の事業を本当には分かっていないからです。優秀な事業の専門家は、財務の専門家以上に貴重です。なぜなら、財務は会計基準という一般的な基準がありますが、事業は業種ごと、もっと言えば会社ごとに中身が異なるからです。そのため、多くの事業の専門家は教科書的な机上の空論、一般論を振りかざすわけですが、経営はその会社だけでなく、外部の相手もあって初めて成り立つものです。そのため、教科書通りの内容に相手も従うわけはありません。つまり、計画において実行すべき改善策が本当に実現可能かどうかは、相当その業種に精通した専門家でなければ社長が一番分かっているのです。
しかし、熟練していない専門家の立場としてはそれが分からない。だから、後述するように銀行から計画作成を依頼された手前、「それをしなければ計画が成り立たないから」と言って無理やり計画に織り込むのです。しかし、逆に経営者の意思を無視したそのような計画こそが、実現不可能な計画となっているのです。
ではどうすればよいか
(1)慣れている専門家に頼む
それではどうすればよいのでしょうか。当たり前の話ですが、一番良いのは十分に経験を積んだ専門家に計画作成を依頼することです。そのような専門家はどのような案であれば実現可能か熟知していますし、経営者の思いも大切にします。一般的には経営者から計画作成の専門家を依頼することはなく、金融機関が付き合いのある専門家に頼むことになるでしょうから、この話は金融機関向けになります。ここでの注意点としては、専門家が所属する組織の知名度やブランドが全くあてにならないという点です。この分野は担当者による巧拙が非常に強く出ます。そのため、大手だから優秀ということはなく、逆に小さい組織であっても優秀な担当者がいるケースは多々あります。特に、ブランドを当てにして失敗した例は枚挙にいとまがありません。よって、誰が専門家として担当するのかをはじめに明確にしておかないと、後々大変なことになりかねません。
(2)経営者の意見をしっかりと伝える
では、不運にも未熟な専門家が計画作成を担当することになった際、経営者側からできることはないのでしょうか。経営者としては初めての経験でしょうから、どのように振舞えば良いか分からないのが普通だと思います。でも、しっかり自己主張してほしいのです。聞かれたことだけに答えればよいとか、どうせ計画だからとか、受け身でネガティブな感想を持つこともあると思います。しかし、できること・できないことをはっきりと伝え、できないことは計画に書かせない。これをきちんとしないと、後々首を絞めるのは経営者自身です。往々の場合、計画作成を担当した専門家はその場限りですから。
(3)専門家を変える
しかし、それでもダメな場合もあるでしょう。最後の手段としては専門家を変えることです。あまりにも専門家の質がひどいケースでは、経営者が銀行に正直に伝え、専門家を交代したケースも実際にあります。計画を作るだけでも数百万円程度の費用が発生しますし、そのうえで計画が絵に描いた餅のようなものであるなら踏んだり蹴ったりです。葛藤はあるかもしれませんが、会社を守るために言いにくいことも正直に言いましょう。
慣れていない専門家に計画作成を依頼すると、経営者も金融機関も不幸になってしまいます。そのため、それぞれの立場でできることをきちんとして、魂の入った計画になってほしいものです。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。