経営を深め、相談する場

不誠実の反作用

「良いこと」だから誠実を勧めるわけではない

不誠実よりも誠実の方が良い。これは小学生でも答えられるような当たり前のことでしょう。この時の視点は道徳的な基準です。一方、経済的な基準ではどうでしょうか。不誠実な行いをする経営者の動機は大抵が経済的な動機です。しかし、経済的な基準でも不誠実は望ましい結果を得られないことが多いのです。

不誠実をするケースとその結果

では、具体的にどのような場合に経営者は不誠実な行為をするのでしょうか。今は超低金利の時代なので、金利で銀行を選ぶという視点は支持されると思います。しかし、これがあまりに極端な場合、例えば長年取引を続けており、過去自社の危機的状況に融資をしてくれ窮地を救ってくれた大恩があるような銀行に対して、少しばかり金利が低いからといって他行に簡単に乗り換えるような行為は不誠実であると言えそうです。この場合、経済的には確かに他行の方が良いかもしれませんが、他者とのかかわりは経済的視点だけではありません。このような近視眼的な視点で銀行と付き合っていれば、次の窮地には見捨てられる可能性が高いでしょう。

要は、目先の僅かな経済的利益を生み出すための源泉である他社との信頼関係を毀損してしまっているのです。

正直者はバカを見る?

とはいえ、誠実にしてれば全てはうまくいくというわけでもありません。時にはその誠実さを利用され、憤慨するようなケースもあるでしょう。道徳的には正しいはずの誠実さについて疑問に思うときは、誠実な態度で接していて失敗した時が多いかと思います。つまり、正直者がバカを見たと思った時ですね。確かに社会には多様な人がいますから、中には誠実さを利用する人もいるでしょう。特に、精神的・経験的に未熟な人ほどそのような傾向にありそうです。しかし、何百社の経営者を見ていて思うのは、誠実さがあればいざという時、周囲の人が何とか助けようと手を差し伸べ、その結果として危機を乗り越えることができたというケースが非常に多いということです。

誠実だけでも成功しない

一方で、誠実さだけがあれば周囲の人が助けてくれて、経営もうまくいくかといえば当然そのようなことはありません。誠実さは成功の必要条件ではあっても十分条件ではないということです。経営を成功させるには誠実さのほかにもたくさんの要素が必要です。成功へのマインド(精神的態度)を持つことだったり、経営をする上での正しい方法を知ることだったり、経営に必要な正しい情報を得ることも必要です。

成功へのマインドとは、逆境の時どのような心掛けをするか、順調の時はどうかといった普段の心がけや考え方のことです。経営をする上での正しい方法とは、どのように数値管理をしていくかや、従業員を教育していくかなどです。経営に必要な正しい情報とは、金融機関の行動様式や各種公的な支援制度といったものです。誠実さは大切ですが、それを活かすにはこれらの要素が必要ということですね。

本コラムでも少しずつそのような情報を伝えていきたいと思います。

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。