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不動産の含み損を税務上も使えるケースがあります

再生税制という劇薬

今日はとある事業者の顧問税理士の方に対し、再生税制に関連する税務申告書の書き方を指導してきました。この再生税制というのは、事業再生を目指す事業者のうち一定の条件を満たしている場合には、含み損益や期限切れ欠損金等の有効活用を認めるという税務上の特典であり、事業再生の確実性を高めるために政策的に認められたものです。この含み損益には建物や土地の含み損も含まれます。そのため、バブル期に購入して多額の含み損を抱えた不動産を保有している場合、通常は税務上損金として認められませんが、この再生税制を適用する場合は含み損も税務上の損金となります。また、この税制を適用する場合、含み損益以外にも期限切れ欠損金というものを使えます。これは、すごくざっくり言うと債務超過額のうち青色欠損金を除いた金額です。この期限切れ欠損金も通常は名前が示す通り税務上は損金として使えないのですが、一定の場合は利用することが出来ます。

利用が可能なケース

さて、このように非常に大きな効果のある再生税制ですが、その分適用できる状況が限られています。具体的には、下記のような再生支援をする組織が関与するケースがほとんどです。

・地域経済活性化支援機構

・事業再生ファンド

・中小企業再生支援協議会

・東日本大震災事業者再生支援機構、産業復興機構

上記組織が関与するケースでは抜本的な事業再生を伴うケースが多くなります。その場合、金融機関による多額の債権放棄(事業者にとっては借入金の債務免除)が発生するため、税務上の手当てを何もしないと多額の法人税を支払うことになります。しかし、法人税支払いにより多額の資金流出をすることとなると企業の再生を阻害してしまうため、法人税を発生させないために債務免除益と相殺させる部分が必要となる。これが含み損なのです。

最も抜本的な再生手法

事業再生の段階には経営改善やリスケの段階など複数のステージがありますが、この再生税制は金融機関による債権放棄を前提としているので、最も抜本的な再生手法になります。しかし、本日指導した顧問税理士の方も再生税制関係の申告をするのが初めてでしたが、この税制の存在自体を知らない税理士がほとんどです。知っていてもどのようなケースに使えるのか分からず積極的に使ってみよう、顧問先に提案してみようと思う税理士はほとんどいないでしょう。

情報を知っている、いないは自社の将来に直結します。

是非積極的に利用し、抜本的な再生を果たしてほしいと思います。

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。