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金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第3弾:栃木県編~

1.栃木県の地銀

栃木県には第一地銀の足利銀行、第二地銀の栃木銀行の二つの銀行があります。

規模としては、足利銀行が経常収益977億円、経常損益332億円、従業員2,801人、栃木銀行が各478億円、121億円、1,724人です(数値はすべてH29.3期)。

各比率はそれぞれ、2.0倍、2.7倍、1.6倍です。

2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較

では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。

(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)

①2行が共通して掲載している項目

共通ベンチマークについては、創業関連や事業性評価関連について二行とも掲載しています。

「共通」という趣旨からすると、栃木銀行には残りの共通ベンチマークについても公表してほしかった気がします。

選択ベンチマークについては、プロパー融資に関連する項目や売上増加につながる項目、M&Aや事業承継に関わるベンチマークが掲載されています。

内容としては過去二回とほぼ同じです。

②足利銀行のみが掲載している項目

共通ベンチマークはともかく、選択ベンチマークの特徴的な点としては、停滞期・再生期の企業に関連するベンチマークが多い点でしょうか。

「経営改善提案を行っている先の割合」や、「転廃業支援先数」、「事業再生支援先における実抜計画策定先数等」、「破綻懸念先の平均滞留年数」の4項目が掲載されています。

なお、独自ベンチマークはありません。

③栃木銀行のみが掲載している項目

選択ベンチマークには「メイン取引先数の推移等」や、「取引先の本業支援に関連する中小企業支援策の活用を支援した先数」の2項目あります。これらは比較的オーソドックスな項目です。

一方、独自ベンチマークは「とちぎん地域活性化ファンド活用件数」があります。

3.定性面の比較

両行とも中期経営計画と金融仲介機能のベンチマークの関係については明示的に述べられていません。

足利銀行の中期経営計画(平成28年度~平成30年度)の骨子としては、「機能軸」による効率化で生まれたマンパワーを、「密着軸」によるきめ細かなコンサルティングや事業性評価に振り向ける、といった点でしょうか。

第一地銀のためなのか、重点分野は総花的な印象です。

栃木銀行の中期経営計画(平成29年度~平成31年度)は「お客様から選ばれ続ける銀行」であるために、「独自性発揮に向けた変革」を基本方針としています。

昨今叫ばれているように、地銀業界は従来が横並びで差別化ができてないなかったことを踏まえ、独自性によって差別化を図り、収益に繋げるという考えなのでしょう。


(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。

(参考)

(1)二行が共通して掲載している項目

共通ベンチマーク

           3  金融機関が関与した創業、第二創業の件数

           5  金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)

選択ベンチマーク

           7  地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び、無担保融資額の割合(先数単体ベース)

           14  ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合

           18  販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)

           19  M&A支援先数

           21  事業承継支援先数

(2)足利銀行のみが掲載している項目

   共通ベンチマーク

           1  金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移

           2  金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況

           4  ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)

 選択ベンチマーク

           8  地元の中小企業与信先のうち、根抵当権を設定していない与信先の割合(先数単体ベース)

           11  経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)

           12  本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合

           15  メイン取引先のうち、経営改善提案を行っている先の割合

           22  転廃業支援先数

           23  事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合

           25  破綻懸念先の平均滞留年数

           39  取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数

(3)栃木銀行のみが掲載している項目

     選択ベンチマーク

           2  メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)

           43  取引先の本業支援に関連する中小企業支援策の活用を支援した先数

(4)各行における金融仲介機能のベンチマーク

足利銀行(公表日不明)

http://www.ashikagabank.co.jp/relation/banking/pdf/torikumi_28_1a.pdf

栃木銀行(平成29年6月公表)

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=announcement&sid=36752&code=8550

(5)各行における中期経営計画

足利銀行

http://www.ashikagabank.co.jp/ashigin/pdf/plan_h28_10.pdf

栃木銀行

http://www.tochigibank.co.jp/investment/company/pdf/news_20170401.pdf

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。