経営を深め、相談する場

金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第4弾:青森県編~

1.青森県の地銀

青森県には第一地銀が二つあります。青森銀行とみちのく銀行です。

規模としては、青森銀行が経常収益385億円、業務純益39億円、従業員1,317名、地域の貸出シェア41%、みちのく銀行が各389億円、27億円、1,296名、28%です(数値はすべてH29.3期)。

各比率はそれぞれ、1.0倍、1.4倍、1.0倍、1.5倍なので、ほぼ同規模です。

2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較

では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。

(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)

①2行が共通して掲載している項目

共通ベンチマークについては、全項目を二行とも掲載しています。

選択ベンチマークについては、「全取引先数と地域の取引先数の推移等」や「メイン取引(融資残高1位)先数の推移等」など6項目です。他県と異なるのは、「経営者保証に関するガイドラインの活用先数等」が掲載されている点及びほとんどの銀行が掲載している「M&A支援先数」をみちのく銀行は掲載していない点でしょうか。

以下は、数値面での違いがある項目です。

・事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合

青森銀行の全与信先数に占める割合47.6%、同融資残高の割合32.8%(いずれもH29.3期)ですが、みちのく銀行では同25.3%、38.2%(いずれもH28.3期)です。

つまり、みちのく銀行の方が相対的に大口先に事業性評価融資を実行していることが分かります。

・経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合

青森銀行の全与信先数に占める割合は21.0%(H29.3期)、みちのく銀行は4.1%(H28.3期)です。そのため、青森銀行の方が活用に積極的です。

・ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合

青森銀行の全与信先数に占める割合は8.6%(H29.3期)、みちのく銀行は23.6%(H28.3期)です。そのため、みちのく銀行の方が積極的です。

②青森銀行のみが掲載している項目

無担保、無保証関連のベンチマークの13項目あります。特徴的な点は事業再生や清算に関連するベンチマークが6項目ある点です。

なお、独自ベンチマークは「創業・起業等に伴う雇用創出累計数」「事業再生支援を通じた雇用維持累計数」の二項目あり、雇用を重視している姿勢が窺われます。

また、前回からベンチマークの定義を変更しており、これに伴い数値自体も変わっています。この点についてはより自行にとって有意義な情報とは何かを考えている印象を受けました。

③みちのく銀行のみが掲載している項目

「取引先への平均接触頻度、面談時間」や「金融機関の本業支援等の評価に関する顧客へのアンケートに対する有効回答数」など3項目あります。

ユニークなのは上記2項目であり、これらの項目を掲載している銀行はほとんどありません。

掲載が難しい理由は定性的な側面が強いためかと思いますが、その分独自性が際立ちます。

独自ベンチマークは「営業利益改善支援活動における提案件数等」「営業利益改善支援活動における営業店評価」「営業地域の商流・雇用に与えた影響度・貢献度」の3項目です。

全体的な感想としては、第一地銀同士であるためか、ある程度銀行の色が見えた印象です。

3.定性面の比較

青森銀行の中期経営計画(平成28年度~平成30年度)は「あおぎん Leading プラン」ですが、ベンチマークとの関連はイマイチ不明瞭です。同計画の方針は「現場営業力の強化」ですが、ベンチマークの説明資料の構成は「事業性評価への取り組み」や「コンサルティング機能の発揮」などオーソドックスな項目のためです。

一方、みちのく銀行の中期経営計画(平成27年度~平成29年度)は「お客さまと地域社会から最も信頼される銀行へ」ですが、その中に取り組みに「お客さまとのパートナーシップ強化」が謳われています。ベンチマークもそれに基づいた「ビジネスパートナー宣言」を軸に選定された体となっています。

みちのく銀行の説明でわかりやすかったのは、各ベンチマークごとになぜそれを設定したか、どのような仕組みがあってどんな取り組みをしているかを一つ一つ説明していた点です。

全体的な感想としては、みちのく銀行の方がやや特徴があり、かつ、具体的でわかりやすかった印象です。

一方で、青森銀行はベンチマークの定義変更がありました。定義についての説明がない銀行も多いため、定義をしっかり示すという姿勢は非常に好感が持てます。

(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。

(参考)

(1)二行が共通して掲載している項目

 共通ベンチマーク

           1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移

           2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況

           3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数

           4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)

           5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)

 選択ベンチマーク

              1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)

              2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)

              11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)

              14 ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合

              18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)

              21 事業承継支援先数

(2)青森銀行のみが掲載している項目

  選択ベンチマーク

              7 地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び、無担保融資額の割合(先数単体ベース)

              9 地元の中小企業与信先のうち、無保証のメイン取引先の割合(先数単体ベース)

              12 本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合

              13 本業支援先のうち、経営改善が見られた先数

              16 創業支援先数(支援内容別)

              19 M&A支援先数

              22 転廃業支援先数

              23 事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合

              24 事業再生支援先におけるDES・DDS・債権放棄を行った先数、及び、実施金額(債権放棄額にはサービサー等への債権譲渡における損失額を含む、以下同じ)

              26 事業清算に伴う債権放棄先数、及び、債権放棄額

              35 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している本部従業員数、及び、全本部従業員数に占める割合

              39 取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数

              42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数

(3)みちのく銀行のみが掲載している項目

     選択ベンチマーク      

              4 取引先への平均接触頻度、面談時間

            5 事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数

              30 金融機関の本業支援等の評価に関する顧客へのアンケートに対する有効回答数

(4)各行における金融仲介機能のベンチマーク

青森銀行(平成29年7月31日公表)

https://www.a-bank.jp/contents/cms/article/20170728001/attachment.pdf

みちのく銀行(平成29年2月6日公表)

http://www.michinokubank.co.jp/news_1912.pdf

(5)各行における中期経営計画

青森銀行(平成28年度~平成30年度)

https://a-bank.jp/contents/guide/aboutabank/pdf/keieikeikaku.pdf

みちのく銀行(平成27年度~平成30年度)

http://www.michinokubank.co.jp/about/company/pdf/chuuki20150511.pdf

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。