金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第7弾:福島県編~
1.福島県の地銀
福島県には第一地銀である東邦銀行と第二地銀である大東銀行、福島銀行があります。
主要指標は下記表のとおりです。東邦銀行が規模としては圧倒しています。
東邦銀行 | 対福島銀行比 | 大東銀行 | 対福島銀行比 | 福島銀行 | |
経常収益(H29.3) | 64,845百万円 | 5.1 | 12,686百万円 | 1.0 | 12,721百万円 |
経常損益(H29.3) | 10,629百万円 | 7.2 | 1,894百万円 | 1.3 | 1,467百万円 |
従業員(直近) | 1,983名 | 3.6 | 573名 | 1.0 | 546名 |
県内貸出シェア(H27.10) | 40% | 4.6 | 10% | 1.2 | 9% |
2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較
では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。
(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)
①東邦銀行
共通ベンチマークは五つすべて掲載しています。
選択ベンチマークは12項目掲載しています。販路開拓やM&A支援、事業承継支援などオーソドックスなものが多いです。担保保証に過度に依存しない融資に関する項目は二項目あります。ユニークなのは企業誘致数ですね。
数値面では取引先数や無担保融資先数の増加をアピールしています。
独自ベンチマークはないようです。
②大東銀行
共通ベンチマークはメインバンク取引やライフステージ関連の二項目です。
選択ベンチマークは5項目あり、販路開拓やM&A支援、事業承継支援などオーソドックスなものが中心です。
独自ベンチマークは「案件創造検討会件数」「医療関連成約件数」の2項目です。
③福島銀行
共通ベンチマークは貸付条件変更と創業関連の二項目です。選択ベンチマークは「事業再生支援先における実抜計画策定先数等」のみです。しかしながら、福島銀行は公表資料でもはっきり謳っているように、あえて独自ベンチマークを重視しています。そのため、独自ベンチマーク数は7つあり、選択ベンチマークにおいてもその定義に独自色を出しています(そのため、当コラムではそのような独自の定義に基づくものは選択ベンチマークとしてカウントしていません)。内容としてもボランティア活動の実施数や三分以上窓口で時間がかかった案件数等大変ユニークです。
3.定性面の比較
①東邦銀行
中期経営計画(平成27年度~平成29年度)は「とうほう“サミット”プラン」です。内容は計数目標も含め比較的オーソドックスなものです。
金融仲介機能のベンチマークの位置づけとしては、同計画及び「地域密着型金融に関する基本的考え方」に基づき説明されています。事業性評価やライフステージ別のコンサルティングなど一つ一つのテーマについてベンチマークや事例と絡めて説明しているのでわかりやすいものとなっています。
同資料はベンチマークを単独で説明するのではなく、地域密着型金融と一体となった説明になっています。やはりこの方が分かりやすい印象です。
②大東銀行
中期経営計画(平成29年度~平成31年度)は「第四次中期経営計画」です。コンセプトにWebやスマホを使ったダイレクト営業の強化があり、計数目標も「付加価値提案件数」「医療関連先成約件数」「ダイレクトチャネル契約件数」といった独自のものを設定しています。
金融仲介機能のベンチマークと同計画の関連は不明です。ベンチマーク説明資料はベンチマークをただ並べているだけで、正直物足りない印象です。せっかく独自ベンチマークも設定しているので、もう少し詳細な説明がほしかったところです。
③福島銀行
中期経営計画(平成27年度~平成29年度)は「ふくぎん本気(マジ)宣言Ⅱ」です。計画名称もユニークですが、数値目標も企業融資先数や給振+年金の増加など独自のものを設定しています。
金融仲介機能のベンチマークも同計画の重点項目に基づいて設定されています。そのためか、独自ベンチマークが多くなっています。これ自体は好印象なのですが、やはり共通ベンチマークが2項目、選択ベンチマークも1項目なのは少ない気がします。独自色は各行がどんどん出していくべきだと考えていますが、一方で他の共通及び選択ベンチマークも多くの銀行にとっても重要とされているから例示されているわけですから、やはりある程度は掲載してほしかったと思います。
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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。
(参考)
(1)二行以上が共通して掲載している項目
①三行が掲載
なし
②東邦銀行と大東銀行
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)
16 創業支援先数(支援内容別)
18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
19 M&A支援先数
21 事業承継支援先数
③東邦銀行と福島銀行
共通ベンチマーク
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
④大東銀行と福島銀行
なし
(2)一行のみが掲載している項目
①東邦銀行のみが掲載している項目
共通ベンチマーク
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)
7 地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び、無担保融資額の割合(先数単体ベース)
17 地元への企業誘致支援件数
28 中小企業に対する経営人材・経営サポート人材・専門人材の紹介数(人数ベース)
33 運転資金に占める短期融資の割合
40 外部専門家を活用して本業支援を行った取引先数
42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数
②大東銀行のみが掲載している項目
独自ベンチマーク
1 案件創造検討会件数
2 医療関連成約件数
③福島銀行のみが掲載している項目
選択ベンチマーク
23 事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合
独自ベンチマーク
1 ボランティア活動の継続実施、年間延べ人数
2 創業支援セミナー参加者から実際に創業した先数
3 お客様の課題を解決した件数および課題解決の提案件数
4 当行が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
5 クイック窓口サービス対応で基準時間を超えた先の先数推移
6 企業融資先数
7 全社員が取得している、取引先の本業支援に関する資格の総数
(3)各行における金融仲介機能のベンチマーク
東邦銀行(平成29年9月公表)
大東銀行(平成29年7月31日公表)
福島銀行(平成29年5月公表)
(4)各行における中期経営計画
東邦銀行(平成27年度~平成29年度)
大東銀行(平成29年度~平成31年度)
福島銀行(平成27年度~平成29年度)
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。