金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第20弾:島根県編~
1.島根県の地銀
島根県は建設業、特に公共工事が盛んです。
島根県には第一地銀である山陰合同銀行と第二地銀である島根銀行があります。
主要指標は下記表のとおりです。他県同様、第一地銀である山陰合同銀行が島根銀行を規模で圧倒しています。
山陰合同銀行 | 対島根銀行比 | 島根銀行 | |
経常収益(H29.3) | 77,898百万円 | 10.1 | 7,712百万円 |
コア業務純益(H29.3)*1 | 23,325百万円 | -226.5 | -103百万円 |
修正OHR(H29.3)*2 | 61.3% | – | 102.2% |
経常損益(H29.3) | 19,450百万円 | 12.1 | 1,605百万円 |
自己資本比率(H29.3)*3 | 14.3% | – | 8.7% |
従業員(直近) | 1,995名 | 5.0 | 400名 |
県内貸出シェア(H28.3) | 不明 | 不明 |
*2 経費÷業務粗利益で算出。効率性を示す指標で低い方が良い。地銀の加重平均値は70.3%
*3 両行とも国内基準。国内基準では4%以上が義務付けられている。
2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較
では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。
(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)
(1)山陰合同銀行
共通ベンチマークは5つ掲載しています。
数値面では、メイン先のうち経営改善先数の割合5割強は他行平均が7割程度ですので、若干低めです。
選択ベンチマークは18項目です。主要項目に加え、本業支援に関する業績評価や業務推進体制関連5つ、再生関連3つが特に多い項目です。この中でも、本業支援に関連する個人の業績評価に占める割合や同表彰者数に占める割合はほとんどの金融機関が掲載していないので貴重です。
数値面では、上述した本業支援に関連する個人の業績評価に占める割合39%は高いです。
独自ベンチマークはありません。
(2)島根銀行
共通ベンチマークは4つ掲載しています。やはり共通ベンチマークなので、非掲載の項目はほしかったですね。
数値面では、メイン先のうち経営改善先数の割合5割強なので、山陰合同銀行と同様若干低めです。一方、事業性評価融資の割合は高めです(他行平均が先数で10%程度、融資額ベースで20%程度であるところ、同行はそれぞれ19.3%,34.3%)
選択ベンチマークは6項目です。オーソドックスな項目もありますが、販路開拓や担保保証に依存しない融資関連は欲しかったです。
数値面では他行に比べ低い項目が目立ちます。M&A支援先数、事業承継支援先数、事業再生支援先における実抜計画策定先数、中小企業再生支援協議会の活用先数が各2件、3件、7件、2件です。上記数値は銀行ごとに定義が異なるため数値にずれが出やすいものですが、それを差し引いてもやはり僅少と言えるでしょう。
独自ベンチマークはありません。
3.定性面の比較
山陰合同銀行の中期計画(平成27年度~平成29度)の重点項目は「リレーションシップバンキングをベースとした収益の拡大」「地方創生への取り組み」「有価証券運用の強化」「経営基盤の強化」「CSRの実践」といったスタンダードなものです。やや特徴があるとすれば、兵庫・大阪や東京など地元以外への重視姿勢が強い点、証券会社などグループとしての対応を強調している点でしょうか。
金融仲介機能のベンチマークは会社説明会資料の中で、「参考資料」として説明があるのみです。立ち位置としては淋しいでしょう。内容としては、テーマ・取組・ベンチマークをセットとしており、分かりやすいのでなおさらもったいないです。特に、個人の業績評価関連は他行もあまり掲載していないので、見せ方によっては強くアピールできたのではないかと思います。
島根銀行の中期経営計画(平成28年度~平成30年度)は「次の100年に向かって」です。4本柱は「人材の強化」「組織の強化」「営業の強化」「財務の強化」といった普通の内容です。
金融仲介機能のベンチマークは経営戦略に沿って設定したとされています。見せ方としては、個別のテーマとそれに対応するベンチマークがセットで掲載されていますが、他行はこれに加え各種取組・施策も併せて掲載していることが多いので、改善の余地がある印象です。
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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。
(参考)
(1)二行が共通して掲載している項目
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)
19 M&A支援先数
21 事業承継支援先数
23 事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合
39 取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数
42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数
(2)一行のみが掲載している項目
①山陰合同銀行のみが掲載している項目
共通ベンチマーク
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)
2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)
7 地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び、無担保融資額の割合(先数単体ベース)
9 地元の中小企業与信先のうち、無保証のメイン取引先の割合(先数単体ベース)
12 本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合
16 創業支援先数(支援内容別)
18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
24 事業再生支援先におけるDES・DDS・債権放棄を行った先数、及び、実施金額(債権放棄額にはサービサー等への債権譲渡における損失額を含む、以下同じ)
35 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している本部従業員数、及び、全本部従業員数に占める割合
36 取引先の本業支援に関連する評価について、支店の業績評価に占める割合
37 取引先の本業支援に関連する評価について、個人の業績評価に占める割合
38 取引先の本業支援に基づき行われる個人表彰者数、及び、全個人表彰者数に占める割合
独自ベンチマーク
なし
②島根銀行のみが掲載している項目
共通ベンチマーク
なし
選択ベンチマーク
なし
独自ベンチマーク
なし
(3)各行における金融仲介機能のベンチマーク
山陰合同銀行(平成28年12月公表)
島根銀行(公表日不明)
(4)各行における中期経営計画
山陰合同銀行(平成27年度~平成29年度)
島根銀行(平成28年度~平成30年度)
(5)各行における指標の引用元
基本的には各行のWebサイトより引用しています。修正OHRについては「月刊 金融ジャーナル2017 9月号」より引用しています。貸出シェアについては適宜情報が掲載されている各種サイトより引用しています。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。