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金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第25弾:岩手県編~

1.岩手県の地銀

岩手県は一次産業が盛んです。特に林業では県が木質バイオマス事業に力を入れています。また、トヨタ自動車系の生産工場ができたことで、今後は自動車関連産業についても伸びが期待されています。

岩手県には第一地銀である岩手銀行、東北銀行と第二地銀である北日本銀行があります。

主要指標は下記表のとおりです。規模の大きい順に、岩手銀行、北日本銀行、東北銀行となっています。

岩手銀行北日本対銀行比東北銀行北日本対銀行比北日本銀行
経常収益(H29.3)41,485百万円1.913,871百万円0.621,412百万円
コア業務純益(H29.3)*18,098百万円2.71,934百万円0.63,034百万円
修正OHR(H29.3)*276.4%82.9%81.2%
経常損益(H29.3)7,507百万円1.92,141百万円0.53,964百万円
自己資本比率(H29.3)*312.4%9.0%10.6%
従業員(直近)1,472名1.6618名0.7900名
県内貸出シェア(直近)37%14%19%
*1 臨時のものを除いた、銀行本業の収益性を示す指標
*2 経費÷業務粗利益で算出。効率性を示す指標で低い方が良い。地銀の加重平均値は70.3%
*3 全行とも国内基準。国内基準では4%以上が義務付けられている。

2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較

では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。

(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)

(1)岩手銀行

共通ベンチマークは5つ掲載しています。 

数値面では条件変更総数の与信先数に占める割合が高めです(割合自体は筆者算定)。他行の平均は1割弱であるところ、当行では21%です。

選択ベンチマークは17項目です。主要な項目は網羅されています。担保保証に依存しない融資関連も無保証メイン先数等2項目掲載があります。また、本業支援担当の従業員数など本業支援関連の項目が多いのも特徴です。

数値面では無担保融資先の全体に占める割合が高いです。先数で72%、残高で37%ですが、他行は各60%,30%程度となっています。ファンドの活用件数も42件と多めです。他行は一桁がざらです。

独自ベンチマークはありません。 

(2)東北銀行

共通ベンチマークは5つ掲載しています。 

数値面での特筆事項はありません。

選択ベンチマークは7項目です。M&A支援数はほしかったです。担保・保証に依存しない融資関連では信用保証協会付融資の割合が掲載されています。

数値面では事業承継支援数の26件は他行と比べて低いです。

独自ベンチマークは4項目です。どれも銀行の意図がはっきり伝わってきて説得力がありました。

(3)北日本銀行

共通ベンチマークは5つ掲載しています。 

数値面での特筆事項はありません。

選択ベンチマークは10項目です。主要な項目は網羅されています。担保保証に依存しない融資関連では岩手銀行と同様の項目が掲載されています。

数値面では無担保融資先の全体に占める割合が低いです。先数で6%、残高で12%です。事業承継支援数の18件も低いです。

独自ベンチマークの2項目も銀行の重視姿勢が見て取れてよかったと思います。

3.定性面の比較

(1)岩手銀行

岩手銀行の経営計画は「いわぎんフロンティアプラン 2nd stage ~The イノベーション~」です。基本戦略は「組織文化の変革による収益力の強化」「地方創生と震災復興への力強い取組」「ステークホルダーへのきめ細やかな対応」というオーソドックスなもの、数値目標も同様です。

金融仲介機能のベンチマークは自己点検・評価及び開示のツールとして積極的に活用するとあります。見せ方としてはテーマ・取組・ベンチマークをセットで説明する普通ながらも分かりやすい方法です。ただ、地域特性を踏まえた取組みや、独自ベンチマークを用いればより具体的にイメージできたのではないかと思います。

(2)東北銀行

東北銀行の経営計画では地域の特性である農林水産業を基軸とした地域産業・企業の活力向上を掲げています。また、計画数値目標としても、「本業支援件数」を設定するなど特徴的です。

金融仲介機能のベンチマークは経営理念・中期経営計画の実現に向けた活用ツールとしています。見せ方は岩手銀行と同様標準的です。ただし、東北銀行では独自ベンチマークを効果的に使っており、説明も充実しているので重点分野が分かりやすいものとなっています。

(3)北日本銀行

北日本銀行の経営計画は「Focus2020 シンカ(進化・深化)する3年~すべてはお客さまの課題解決に向けて~」です。説明の中にある「ほかの金融機関との「違い」を際立たたせ」というフレーズが目に留まります。違いを主張する金融機関はあまりありませんので。基本方針も「リテール金融への更なる進化」「チャネルの最適化」と他行よりも具体的です。

金融仲介機能のベンチマークは地域密着型金融への取組の成果指標の一つと位置付けています。見せ方は他二行と同様普通ながらも分かりやすいものです。特徴的な点としては、事業性評価融資への取組が詳細に記載してあり特にわかりやすいものでした。また、成長分野支援についても事例とともに説明があり分かりやすいです。上記二つとも独自ベンチマークを設定していたので、理解を深める手助けとなりました。

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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。

(参考)

(1)二行以上が共通して掲載している項目

①三行が掲載

共通ベンチマーク

1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移

2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況

3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数

4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)

5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)

選択ベンチマーク

11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)

14 ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合

21 事業承継支援先数

②岩手銀行と東北銀行

選択ベンチマーク

42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数

③岩手銀行と北日本銀行

選択ベンチマーク

2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)

7 地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び、無担保融資額の割合(先数単体ベース)

18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)

19 M&A支援先数

20 ファンド(創業・事業再生・地域活性化等)の活用件数

④東北銀行と北日本銀行

なし

(2)一行のみが掲載している項目

①岩手銀行のみ

選択ベンチマーク

1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)

9 地元の中小企業与信先のうち、無保証のメイン取引先の割合(先数単体ベース)

15 メイン取引先のうち、経営改善提案を行っている先の割合

22 転廃業支援先数

23 事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合

34 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している支店従業員数、及び、全支店従業員数に占める割合

35 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している本部従業員数、及び、全本部従業員数に占める割合

39 取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数

独自ベンチマーク

なし

②東北銀行のみ

選択ベンチマーク

10 中小企業向け融資のうち、信用保証協会保証付き融資額の割合、及び、100%保証付き融資額の割合

16 創業支援先数(支援内容別)

33 運転資金に占める短期融資の割合

独自ベンチマーク

1 ミドルリスク先に対する融資実行額

2 債権買取先等に対する再チャレンジ支援

3 震災復興関連融資実行先数及び融資実行額

4 アグリ関連業種融資残高

③北日本銀行のみ

選択ベンチマーク

8 地元の中小企業与信先のうち、根抵当権を設定していない与信先の割合(先数単体ベース)

40 外部専門家を活用して本業支援を行った取引先数

独自ベンチマーク

1 シナリオミーティング実施先数

2 医療・介護・ヘルスケア事業に関連するソリューション提案

(3)各行における金融仲介機能のベンチマーク

岩手銀行

https://www.iwatebank.co.jp/announce/news/2017/03/20170329_relationship.pdf

東北銀行

http://www.tohoku-bank.co.jp/showimage/pdf?fileNo=611

北日本銀行

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=ir_material&sid=77911&code=8551

(4)各行における経営計画

岩手銀行(平成28年度~平成30年度)

https://www.iwatebank.co.jp/ir/management/plan.html

東北銀行(平成28年度~平成30年度)

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=ir_material&sid=56669&code=8349

北日本銀行(平成29年度~平成31年度)

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1454481

(5)各行における指標の引用元

基本的には各行のWebサイトより引用しています。修正OHRについては「月刊 金融ジャーナル2017 9月号」、県内貸出シェアについては同「増刊号 金融マップ2018年版」より引用しています。

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。