金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第2弾:茨城県編~
1.茨城県の地銀
茨城県には第一地銀の常陽銀行、筑波銀行の二つの銀行があります。
規模としては、常陽銀行が経常収益1,410億円、業務純益374億円、従業員3,281人、筑波銀行が各407億円、52億円、1,596人であり、常陽銀行の方が大規模です(数値はすべてH29.3期)。
2.金融仲介機能のベンチマーク項目の比較
では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。
(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)
①2行が共通して掲載している項目
共通ベンチマークについてはやはり二行ともすべて掲載しています。
選択ベンチマークについても、プロパー融資に関連する項目や売上増加につながる項目、それとやはり全国的にも掲載率が高いM&Aや事業承継に関わるベンチマークが掲載されています。この辺りは前回の宮城県とほぼ同じです。今回は事業再生における一般的な指標である実抜計画策定先数が両行とも掲載されていた点に特徴があります。
②常陽銀行のみが掲載している項目
地元への貢献と担保・保証に過度に依存しない融資という二点が特徴です。
前者は地域の企業数や地元誘致支援件数があります。
後者は根抵当権を設定していない与信先の割合など3項目を掲載しています。
なお、独自ベンチマークはありません。
③筑波銀行のみが掲載している項目
筑波銀行に特徴的なのは、困窮した企業にまつわるベンチマークが多い点です。つまり、経営改善や事業再生関連、清算関連などのベンチマークが多い。
前者は中小企業再生支援協議会の活用先数など5項目、後者は事業清算に伴う債権放棄先数など2項目があります。
独自ベンチマークはミドルリスク先への融資実行額と事業再生支援により維持された地元の雇用者数の二項目があります。
3.定性面の比較
常陽銀行は中期経営計画に取り組む中で「地域密着型金融」を本来業務と位置付けています。そしてその重点項目として、①ライフサイクルに応じた取引先企業の支援の一層の強化、②中小企業に適した資金供給手法の徹底、③持続可能な地域経済への貢献を掲げ、これらのテーマに沿ったベンチマークを記載しています。
また、中期経営計画では基本戦略の1番目に「共創力の発揮」を掲げ、その取り組みとして未来共創プロジェクト「PLUS+」を柱としています。
ベンチマークを公表した資料の中でも3分の1はこの未来共創プロジェクト「PLUS+」の取組状況だったので、ベンチマークによる説明と文章による説明を意識的に分けているような印象です。
一方で筑波銀行は中期経営計画とベンチマークの直接的なつながりは少なくとも形式面からは分かりません。
基本的にはベンチマークの資料はほぼそれのみの項目で単独で公表されているためです。
やはり外部に対して説明をする上では、複数のツールを有機的につなげて見せた方が伝わりやすいのだろうなというのが率直な感想です。
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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。
(参考)
(1)二行が共通して掲載している項目
共通ベンチマーク
1.金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2.金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3.金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4.ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
5.金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
7.地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び、無担保融資額の割合(先数単体ベース)
14.ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合
18.販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
19.M&A支援先数
21.事業承継支援先数
23.事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合
(2)常陽銀行のみが掲載している項目
選択ベンチマーク
1.全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)
5.事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数
8.地元の中小企業与信先のうち、根抵当権を設定していない与信先の割合(先数単体ベース)
9.地元の中小企業与信先のうち、無保証のメイン取引先の割合(先数単体ベース)
11.経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)
12.本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合
17.地元への企業誘致支援件数
(3)筑波銀行のみが掲載している項目
選択ベンチマーク
6.事業性評価に基づく融資を行っている与信先の融資金利と全融資金利との差
13.本業支援先のうち、経営改善が見られた先数
15.メイン取引先のうち、経営改善提案を行っている先の割合
16.創業支援先数(支援内容別)
20.ファンド(創業・事業再生・地域活性化等)の活用件数
22.転廃業支援先数
24.事業再生支援先におけるDES・DDS・債権放棄を行った先数、及び、実施金額(債権放棄額にはサービサー等への債権譲渡における損失額を含む、以下同じ)
26.事業清算に伴う債権放棄先数、及び、債権放棄額
36.取引先の本業支援に関連する評価について、支店の業績評価に占める割合
42.地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数
43.取引先の本業支援に関連する中小企業支援策の活用を支援した先数
(4)各行における金融仲介機能のベンチマーク
常陽銀行の金融仲介機能のベンチマーク(平成29年1月30日公表)
筑波銀行の金融仲介機能のベンチマーク(平成29年5月12日公表)
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。