金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第15弾:京都府編~
1.京都府の地銀
京都府は京都市や宇治市といった観光都市を擁し、観光産業が盛んです。
京都府には第一地銀である京都銀行があります。地方銀行は一行のみです。
主要指標は下記表のとおりです。
京都銀行 | |
経常収益(H29.3) | 102,058百万円 |
コア業務純益(H29.3)*1 | 15,491百万円 |
修正OHR(H29.3)*2 | 79.1% |
経常損益(H29.3) | 25,139百万円 |
自己資本比率(H29.3)*3 | 12.1% |
従業員(直近) | 3,428名 |
県内貸出シェア(H28.10) | 32% |
*2 経費÷業務粗利益で算出。効率性を示す指標で低い方が良い。地銀の加重平均値は70.3%
*3 国内基準。国内基準では4%以上が義務付けられている。
2.金融仲介機能のベンチマーク項目
では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。
(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)
共通ベンチマークは5つ掲載しています。数値面では事業性評価融資が増えています(取引先に占める残高ベースでH28:7%→H29:11%)
選択ベンチマークは14項目です。オーソドックスな項目が中心ですが、本業支援関連が5項目と特に多いです。珍しいのは「取引先への平均接触頻度、面談時間」です。一方、担保・保証に過度に依存しない融資に関連するベンチマークの掲載はほしかったですね。
数値面では、広域地方銀行と謳っているように、京都府外店とのビジネスマッチング件数の割合が6割強と多いのが目立ちます。
独自ベンチマークは「地方創生・事業性評価 頭取賞報告件数・受賞件数」です。姿勢は評価できるのですが、ややざっくりした印象です。もう少し具体的なテーマについて、指標ももっと具体的で恣意性が介入しにくい項目の方がベンチマークとしての性質に合ったのではないかと思います。
3.定性面
京都銀行の中期経営計画(平成29年度~平成31年度)は「Timely & Speedy」です。広域地方銀行である特徴を活かそうとしている点、事業性評価を独立したテーマで説明している点が印象的です。
金融仲介機能のベンチマークは、上記の事業性評価の箇所で言及があり、それに基づき設定されています。構成としては、ライフサイクル別や本業支援といった標準的なテーマごとに各種具体的な取り組みとともにベンチマークを用いたものになります。オーソドックスながら分かりやすい見せ方です。
欲を言えば、地域に対する取り組みの定性情報は充実しているので、地域特性に関するベンチマークがあればもっとわかりやすかったでしょう。
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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。
(参考)
(1)掲載ベンチマーク
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)
2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)
4 取引先への平均接触頻度、面談時間
11 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合(先数単体ベース)
12 本業(企業価値の向上)支援先数、及び、全取引先数に占める割合
13 本業支援先のうち、経営改善が見られた先数
16 創業支援先数(支援内容別)
18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
19 M&A支援先数
20 ファンド(創業・事業再生・地域活性化等)の活用件数
21 事業承継支援先数
34 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している支店従業員数、及び、全支店従業員数に占める割合
35 中小企業向け融資や本業支援を主に担当している本部従業員数、及び、全本部従業員数に占める割合
39 取引先の本業支援に関連する研修等の実施数、研修等への参加者数、資格取得者数
独自ベンチマーク
1 地方創生・事業性評価 頭取賞報告件数・受賞件数
(2)金融仲介機能のベンチマーク
京都銀行(平成29年8月公表)
(3)中期経営計画
京都銀行(平成29年度~平成31年度)
(4)各行における指標の引用元
基本的には各行のWebサイトより引用しています。修正OHRについては「月刊 金融ジャーナル2017 9月号」より引用しています。貸出シェアについては適宜情報が掲載されている各種サイトより引用しています。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。