金融仲介機能のベンチマークを地域ごとに見る~第17弾:和歌山県編~
1.和歌山県の地銀
和歌山県は果樹王国といわれるように、果物が有名です。いわずとしれたみかんだけでなく、梅や柿も生産量日本一です。
和歌山県には第一地銀である紀陽銀行があります。地方銀行は一行のみです。
主要指標は下記表のとおりです。
紀陽銀行 | |
経常収益(H29.3) | 67,389百万円 |
コア業務純益(H29.3)*1 | 12,400百万円 |
修正OHR(H29.3)*2 | 75.3% |
経常損益(H29.3) | 12,145百万円 |
自己資本比率(H29.3)*3 | 9.3% |
従業員(直近) | 2,347名 |
県内貸出シェア(H28.3) | 46% |
2.金融仲介機能のベンチマーク項目
では、具体的に同ベンチマークの項目を見てきます。
(なお、項目の詳細な異同については末尾の(参考)に記載しておりますので必要に応じてご参照ください)
共通ベンチマークは5つ掲載しています。
数値面では事業性評価融資について、全体に占める先数の割合と残高の割合の差が大きい点が特徴です。すなわち、同与信先数の割合が3.1%に対して、残高ベースでは16.5%になります(いずれもH29.3期)。残高が大きい先は重点先になりやすいため、他行においても残高ベースの割合の方が先数の割合もよりも大きいのが普通なのですが、他行ではその差は2~3倍程度に収まっています。
選択ベンチマークは13項目です。オーソドックスな項目を中心に、重要な分野をまんべんなく設定しています。ただし、経営者保証ガイドラインの活用数についての掲載はほしかったですね。
独自ベンチマークは「メイン取引先に対する融資残高の増加額」「地元企業に対する当行からの人的支援数(出向者数)」です。これは、中期経営計画の主要テーマに基づいて設定されたものだと思われます。
3.定性面
紀陽銀行の中期経営計画(平成29年度~平成31年度)の主要テーマは「地元地域(和歌山・大阪)の特性に応じ、明確な地域別戦略のもとで成長速度を高める」です。その具体的な取り組み内容として、「取引先数の増加に徹底的にこだわる営業推進」「人材育成・登用の強化等による成長を支える活力ある組織づくり」「対取引先と対地元地域という二本柱による地域活性化への貢献」が定められています。上述した独自ベンチマークは、このテーマに基づいた数の増加や地元での存在感発揮を目指しているのでしょう。
金融仲介機能のベンチマークは、地域におけるさらなる「存在感の向上」と「収益力の強化」に取り組むために同ベンチマークを活用するとしています。
内容面では数値の説明が少ないのがもったいないです。ベンチマーク以外の実績数値なども豊富に掲載されていて、そちらの説明はある程度あります。しかし、ベンチマークの性質からすると、ベンチマークこそどう捉えているかの説明は大切でしょう。例えば、当行の地元は和歌山県と大阪府としていますが、取引先数は大阪で大きく増加しています。そのため、地域別の数値を独自ベンチマークとして設定するなどすれば、より分かりやすかったのではないでしょうか。
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(※1)金融仲介機能のベンチマークについては、2017年5月13日のコラムで説明しております。
(参考)
(1)掲載ベンチマーク
共通ベンチマーク
1 金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移
2 金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3 金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4 ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)
5 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク
1 全取引先数と地域の取引先数の推移、及び、地域の企業数との比較(先数単体ベース)
2 メイン取引(融資残高1位)先数の推移、及び、全取引先数に占める割合(先数単体ベース)
7 地元の中小企業与信先のうち、無担保与信先数、及び、無担保融資額の割合(先数単体ベース)
14 ソリューション提案先数及び融資額、及び、全取引先数及び融資額に占める割合
16 創業支援先数(支援内容別)
18 販路開拓支援を行った先数(地元・地元外・海外別)
19 M&A支援先数
21 事業承継支援先数
23 事業再生支援先における実抜計画策定先数、及び、同計画策定先のうち、未達成先の割合
28 中小企業に対する経営人材・経営サポート人材・専門人材の紹介数(人数ベース)
42 地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業再生支援協議会の活用先数
43 取引先の本業支援に関連する中小企業支援策の活用を支援した先数
独自ベンチマーク
- メイン取引先に対する融資残高の増加額
- 地元企業に対する当行からの人的支援数(出向者数)
(2)金融仲介機能のベンチマーク
紀陽銀行(平成29年8月公表)
(3)中期経営計画
紀陽銀行(平成27年度~平成30年度)
(4)各行における指標の引用元
基本的には各行のWebサイトより引用しています。修正OHRについては「月刊 金融ジャーナル2017 9月号」より引用しています。貸出シェアについては適宜情報が掲載されている各種サイトより引用しています。
※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。