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経営を数字で掴むということの真の重要性とは

数値を把握する重要性を真にわかっている経営者は少ない

経営を数字で掴む、巷でも散々言われています。

そのため、そんなこと言われなくてもわかってる!という経営者も多いことでしょう。

しかし、敢えてこのテーマを記事にしたのには理由があります。

そう、数字に強くない経営者がまだまだ多いからです。

いくら頭では大切だとわかっていても、それが行動に移せていないのでは、経営に与える影響としてはわかってないのと全く変わりません。

そのため、当記事では今一度数字を掴むことの重要性を理解していただき、きちんと行動に移してほしい、という想いがあります。

 数字のレベル感

ところで、一言で「数字」といっても様々なレベルの数字があります。

ここではどのレベルの「数字」を意味しているのでしょうか。

まず、さすがに損益計算書や貸借対照表の大まかな数値は把握している経営者は多いです。これは銀行へも報告するため当たり前でしょうね。敢えて課題を挙げるとしたら、毎月の試算表の数値をタイムリーに把握している経営者は少ないため、対応が後手に回りがちなことでしょうか。

次に、部門別・得意先別の売上まで把握している経営者も比較的多い印象です。これは、取引を記帳する際に、入力者がコードを打ち込んでいれば比較的容易に取得できるからです。

しかし、部門別・得意先別の損益まで把握している中小企業の経営者はほとんどいません。理由としては、取引を会計システムに入力する際、費用項目を部門別や得意先別に紐づけることは売上ほど簡単ではないことが挙げられます。また、エクセルなど自社で管理しようと思っても、費用の配賦にはある程度専門的な知識が求められることも理由の一つです。

このように、部門別などのカテゴリ別に損益を把握している経営者は少ないですが、これをきちんとできている会社はかなりの確率で黒字経営です。

つまり、数字を掴むとは、個別に採算を把握できるレベルまで掴むということです。このレベルは会社の事業によって違うでしょう。会社によってまちまちでよいと思います。しかし、このレベルまで把握できれば黒字化への打ち手を選べることになる。だから黒字化もしやすくなる。

黒字経営への大きな一歩になりますので、ぜひこのレベルまで数字を掴んで欲しいと思います。

答えを出すことの重要性

では、本題に入っていきましょう。

なぜ、数字を掴むことが重要なのか。

一番重要なのは、明確に答えが示されることで、行動しないことへの言い訳が許されなくなることだと思います。

どういうことでしょうか。

経営者は自社の事業に一番詳しい存在です。

そのため、正確な数値は把握してないにしろ、おおまかな皮算用はあるのが普通です。

そしてそれは多くの場合、それなりの精度があります。

採算が取れているか、不明瞭な取引先があったとします。

長年の取引で、できれば切りたくありません。

そのため、なんとなく不採算なのかなあ、という思いはありつつ、取引の継続をしていました。

でも、得意先別の損益を出せば、その取引先は明確に赤字だということがハッキリと示されるのです!

経営者の心理として、赤字とわかっている取引を継続することはできません。

何らかの行動に移さざるを得ないでしょう。

答えが出なければ、問題をいつまでも先送りにしてしまうというのは人間の悲しい性です。

だから、答えを明確に突きつけ、行動せざるを得ない状況に自分を追い込むのが必要なのですね。

ギャップはつきもの

次に、イメージと現実の間にギャップが存在する場合もよくあります。

この場合に正確に現状を認識するために数値で把握することが必要なのですね。

先ほど、経営者はある程度精度の高い皮算用ができると書きました。

しかし、これの危険性は、日々外部環境が変わっているということのリスクを過小に見ている可能性があるということです。

例えば、こんな事例がありました。

東北の水産卸業者で、販売先は東北だけでなく、全国に渡ります。

運賃は自社持ちです。当然、遠方になればなるほど採算が悪化するのですが、詳細な得意先別の損益は出しておりませんでした。しかし、近年赤字が続いたため、得意先別の損益を出すことにしました。

その結果、やはり遠方は赤字だったのですが、大事なのはその理由です。

赤字の原因としては運賃が大きな理由だったのですが、数年間のガソリン価格の上昇

反映されていたのです。

つまり、数年前までは黒字の取引先だったのですが、その感覚で取引を続けた結果、外部環境の変化により赤字になっていることに気づかないケースもあるということです。

イメージと現実にギャップが生じるということは、人間の頭はコンピュータではない以上、仕方がありません。

大切なのは、継続的にずれを修正することです。

その仕組みを作ることです。

数字は外部と会話するための共通言語

数字の持つ性質として、極めて客観的だということがあります。

つまり、1億という数字は誰がどう見ても1億なのです。

とても儲かっている、という表現は人によって受け取り方が全く異なってきます。

どの企業も、外部に対して自社の状況を説明する状況に直面する場合があります。

例えば金融機関や取引先に対してです。このような場合に、主観的な表現で説明するか、数字を用いて説明するかで説明力に雲泥の差が出てくるのです。

数字を使って説明することで、金融機関の協力を得たり、得意先との価格交渉を有利に進めることができるのです。

特に、価格交渉は企業にとって重大な関心ごとです。

値上げをするのは難しいと思う経営者も多いのですが、現実問題、得意先も仕入先がなくなったら困るのです。

だから、値上げが本当に必要なら打診してお応じてくれる可能性が高いのですが、根拠がないと説得力を持ちません。先方に気持ちよく値上げに応じてもらうためにも、取引の詳細を数字を把握することは必要なのです。

どうやって掴むか

 では、どうやって部門別・得意先の損益のレベルまで数字を把握するのでしょうか。

まず、一番の理想は自社の経理部門で集計することです。

自社にそれだけの人員がいないと難しいですが、費用面から見ても、経営者の望む情報にカスタムできることからも、リアルタイムに出てくるということからも、これがベストです。必要なら外部の専門家に教育をさせてでもやるべきです。

とはいえ、現実にはそのような人材がいないというケースも多いと思います。

その場合は顧問税理士に頼むという方法もあります。ただ、カテゴリ別の損益まで出すのは、通常の業務範囲を大きく超えるものです。必要な知識も、作業の負荷も、従前の業務とは異なります。そのため、場合によっては追加の報酬を求められるかもしれませんが、それ以上の効用があるのは間違い無いので、打診してみても良いでしょう。

顧問税理士も難しいようであれば、外部専門家を用いるのも手です。

そうは言っても、普通経営者はそのようなそのような専門家に心当たりはないでしょうから、金融機関に相談するのも良いと思います。

金融機関は多様な専門家と交流がありますし、金融機関としても会社の中身が詳しくわかるような話には間違いなく前向きなはずです。別の記事でも紹介した、経営改善計画や再生計画の打診をきっかけきにするのも大変有効だと思います。

経営を数字で掴む、というのは一般に思われているより遥かに大切なのです。

当たり前のようでいて、その重要性が改めて説かれることはあまりない。

一人でも多くの経営者が、数値で把握するための行動に移していただけたら、こんなに嬉しいことはありません。

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。