経営を深め、相談する場

業績改善の王道は新規取り組みではなく既存の見直し

新しいことをしたくなる心理 

事業再生を専門にしていると、数多くの再生計画書を目にすることになります。その中には当然計画の骨子、つまり今後どこに力を入れていくかが書かれています。ここで多いのが、新商品や新規開拓など今まで行ってこなかった新しい取り組みです。なぜ新しい取り組みが多いかというと、経営者も債権者も現状に煮詰まっていて、目先を変えたいからでしょう。何か新しいことをすれば現状を打破できるのではないかという漠然とした期待を持っているということです。 

新しい取り組みはリスクが高い 

しかし、数多くの案件を見ていれば分かりますが、そのような新しいことがうまくいく可能性は非常に低いのです。それはそうでしょう。熟知している既存の商品・事業でうまくいかなくて、経験の浅い新しい分野で勝てる勝算はどのくらいあるのでしょう。当然新しい分野にも既に経験豊富なライバルがいます。彼らに打ち勝つための具体的なストーリーがあることはほとんどありません。やってみれば何とかなるだろうという甘い期待が動機になっていることがなんと多いことか。 

うまくいかなかった時にすぐに撤退できればまだましです。しかし、時には設備投資をしてしまっていることもあります。このような場合、多額の借入金によって調達しているでしょうから、そう簡単には撤退もできないでしょう。 

既存の立て直しで何とかなることがほとんどである 

ではどうすれば良いかというと、既存の商品や取引を見直すのです。 

もうそんなことは十分にしているとお思いでしょうか。しかし、我々の経験上、最初にご相談いただいた時点で十分に見直されている経営者は一度も見たことがありません。もう少し正確に表現すると、経費の切りつめは限界までされていることは多いです。しかしここでいう既存の見直しとは、自社の特徴をしっかりと正確に把握し、それを十分に伝えるような商品なのか、販売促進をしているのか、値段設定をしているのか、といった意味です。 

以前のコラムにも書きましたが、経営者は自社の特徴を十分にはわかっていないことが多いです。もし漠然とあったとしても、深堀していないことがほとんどです。例えば、麺類を扱う飲食店を例にとりましょう。この会社の特徴は生麵だったとします。生麺ブームがあった時代はそれだけで売上が伸びたかもしれません。しかし、今は供給側から積極的な発信が求められている時代です。生麺に少し興味があったとしても、それだけではあまりに訴求力が弱いのです。そのため、生麺であれば乾麺と何が違うのか、生麺に適している商品は何なのか、生めんの特徴を活かすためにどのような工夫をしているのか、それらを分かりやすく伝えるにはどのようにすればよいか。このような方向できちんと向かうべき方向を掘り下げれば、おのずと業績はついてくるはずです。 

新しい取り組みはここまでしてから 

新しい取り組みをするなとは言いません。当然時代によって求められることは変わるでしょうから、環境に合わせた変化はむしろ必要なものです。しかし、大切なことなので何度も申し上げたいことは、新しい取り組みと既存の見直しのどちらがリスクが高いかという視点です。既存の見直しはコストも多額にかからないでしょうし、必要となる知識もすでに身に付けているものばかりです。必要なことは、もうこれ以上既存の見直しの余地はないという決めつけを捨てることだけです。 

繰り返しになりますが、十分に自社の特徴を掘り下げている経営者とはほとんど会ったことはありません。これは、経営の相談をできる存在が身近にいないことからある意味仕方ないことかもしれません。新しい視点と触れ合わないと、どうしても頭が硬くなってしまうものです。しかし、視点を変える、気付くことだけで現状を変えられる可能性は大いにあります。 

まずは、今のマインドを見直すことから始めましょう。

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。