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なぜ銀行にとって金利以外の競争が難しいのか

オーバーバンキングの現状

現在の日本においては、金融機関の数が多すぎるといういわゆるオーバーバンキングの状態にあるといわれています。しかし、相対的な金融機関数でいうと米国の方が多いと言われています。米国では金融機関数が多いという議論は起こっていません。理由はある程度のセグメントが分かれているからです。つまり、日本でいうオーバーバンキングというのは、どの金融機関も単一の軸において競争をした結果としての過当競争の状態であると言えるでしょう。ここでいう単一の軸というのはもちろん金利のことです。地方の金融機関の方であれば、地元の融資先が飽和状態であり、この状況を打破すべく地元外へ進出し、金利競争を仕掛けている現状に思い当たることでしょう。

同質を好む国民性が金利競争を招いている

では、なぜ金利以外の要素で競争しないのでしょうか。言い換えると、他行と差別化をするような特徴を打ち出してこなかったのでしょうか。人材の制限とか、規模の経済とか、金利で勝負することを支持する材料はたくさんあると思います。しかし、身も蓋もないことを言えば、同質を好む国民性がその原因だと私は考えています。つまり、他行と違うことをするのが怖いのです。他行の行動を見ながら自行の行動を決める。この結果として、一番無難で分かりやすい金利で勝負することになっているのではないかと思うのですね。

一方で、金利で勝負する=差別化できていないということを言うと、寧ろこれでいいのだという反論があるかもしれません。つまり、地方銀行というのはその県に所在する多数の会社の様々なニーズに応えるため、フルライン化しなければならないのだと。これは一見正論ですが、やはり違います。多様なニーズに応えようと総合力を高めつつも、特徴を打ち出すことは可能ですから。今、地方金融業界で起きているのはまさにこの流れです。

銀行は今後二極化するでしょう

現在地方の金融機関を巡る環境はものすごい勢いで大きく変化しています。その流れの中で、金利のみの競争についても限界が指摘されています。このような状況の中では否応なしに金利以外の競争軸を各行が定めていかなければなりません。また、このような流れは金利以外についても今後同様に起きるでしょう。同質的な国民性という観点からいうと、現在の事業性評価やフィンテックもまさに以前の金利と同様の状況だと思います。つまり、何が正解か分からないから横並びの意識が働き、他行の様子を見ながら何となく進めている。このような銀行は多いのではないでしょうか。これらのテーマについても数年後は今取り組んでいる成果が出ます。つまり、主体的・戦略的に取り組んだ銀行と、金融庁が押し付けるから、流行りだからとりあえず乗り遅れないでおこうという銀行の間には歴然とした差があるということです。現在、外からその差は見えにくい。しかし、そのヒントはあります。各行が公表している金融仲介機能のベンチマークです。これを銀行ごとに見ているとつくづく思います。銀行によって取り組みの温度差が大変激しいと。はっきり言うと、今後銀行は二極化していくでしょう。生き残るのは、当然ですが積極的に自行の戦略的な道を模索している銀行です。

あなたの銀行はあなたの将来を預けられる銀行でしょうか

金融仲介機能のベンチマークは誰でも見ることができます。

試しに自行と近隣の銀行のベンチマークを比べてみるとよいでしょう。

今は、銀行員も自分で所属する銀行を選ぶ時代ではないでしょうか。

その意味でも、銀行は銀行員からも「選ばれる銀行」を目指さなければならないでしょう。

※上記内容は、以前別の屋号で書いたブログと同じ内容になります。