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二つの経営改善計画策定支援事業(旧プレ405事業と405事業)

なぜ、計画を作るか

今回のテーマは、事業者様が計画を作る上で、補助が国から出る制度のご紹介です。いずれも計画を作成する専門家(認定支援機関)への報酬を補助するものになります。

早期経営改善計画策定支援事業(通称 ポストコロナ持続的発展計画事業)と経営改善計画策定支援事業(通称 405事業)についてです。後者は当初405億円の予算がついたため、405事業と呼ばれています。前者は405事業を行う前に実施するのが一般的なため、プレ405事業と呼ばれていました。今はコロナ禍を反映して別の通称になっています。

それぞれの計画の中身に入る前に、そもそもなぜ計画を作るのでしょうか。公式HPからそれぞれの制度が想定している対象者を抜粋してみます(リンク先は末尾に記載)。

※早期経営改善計画策定支援事業については、以前書いた記事があるのでご参照ください。

早期経営改善計画を作る意味は何か

早期経営改善計画策定支援事業(通称 ポストコロナ持続的発展計画事業)の想定利用者(公式から抜粋)

ここのところ、コロナの影響などで資金繰りが不安定になっている/コロナなどの影響で売上が減少し、先行きが分からず不安だ/自社の状況を客観的に把握し、今後の取組事項を整理したい/初めてお願いする専門家に、いきなり高額の費用は払えないので、まずは1度お試しで計画を作りたい

経営改善計画策定支援事業(通称 405事業)の想定利用者(公式から抜粋)

金融機関への返済条件などを変更することで、資金繰りを安定させながら、/必要な売上や利益を確保できる経営管理を行いたい/人件費以外のコスト削減を図りたい/黒字体質の経営に転換させるための経営計画を持ちたい/業況悪化の根本的な原因を把握したい/経営改善の取組を継続的にフォローアップしてほしい

コロナ禍における、変化のきっかけとする

上記の想定はもちろん正しいです。しかし、このコロナ禍においてあえて計画を作るべき真の理由は、「変わるきっかけ」を得るためであると考えます。どういうことかというと、いうまでもなくコロナ禍においては将来が極めて不透明です。しかし、だからといって何もしないわけにはいかないのがコロナ禍に苦しんでいる事業者様の本音でしょう。そうはいっても何をすれば良いかわからない。そしていたずらに時間とお金を消費してしまっている。そのような事業者様が非常に多いのではないかと思います。そのような事業者様は何かを変えて、潮目を変えたいという気持ちをお持ちではないでしょうか。そのような場合に、変化のきっかけとして計画を作成する意味はあります。計画を作る上で、専門家と議論します。「専門家」と言っても彼らは「彼らの分野における専門家」であって「事業者様の事業の専門家」というわけではありません。そのため、魔法のような解決策が出てくることはまずないでしょう。しかし、今後どうするかを真剣に話し合っていく過程で思わぬアイデアが出てきたり、第三者の考えによって解決への糸口が見つかる可能性は十分にあります。必ず解決策が見つかるわけではありませんが、一人で悶々と悩んでいるよりもはるかに生産的であるというのは言わずもがなでしょう。

計画が生きるも死ぬも経営者の心がけ次第

上記の背景があるため、本気で計画作成に取り組まない経営者は少ないと思います。それでも改めて言わせていただきますと、計画を作る意味があるか否かは経営者の心がけ次第ということです。どういうことかというと、特に金融支援が必要な場合、計画作成が条件となるので現実には乗り気ではなく仕方なく作るケースもあります。そのような場合、身もフタもないですがその後業績は低迷し続けます。経営者の意識が変わらないからです。その結果、会社の行動も変わりません。業績がよくなる理屈がありません。そのため、事業者様におかれては危機感を持って本気で取り組まないと金と時間の無駄だということです。計画策定の支援に携わってきた立場から申し上げますと、経営者の心構えが変わってきたか否かは如実にわかります。考えや行動にわかりやすく出るからです。私の周りでは、「それは魂のこもった計画か」が合言葉です。せっかく貴重なお金と労力をかけて作るからには、経営者自身が改善への道筋をはっきりと見つけられる、腹落ちした計画を作って欲しいものです。

二つ制度の違い

計画を作る意味を述べたところで、二つの支援制度の違いについて説明します。

下記に比較表を載せました。

金融支援の必要性

一番大きな違いは金融支援が必要か否かです。ポストコロナ持続的発展計画事業では金融支援がなくてもよいのですが、405事業では必要となります。金融支援が必要ということは、金融機関の利害を調整する金融調整が必要ということです。金融調整を実施する主体は、認定支援機関の支援を受けて事業者が実施することとされています。ただ、この局面における金融機関の動きはかなり専門的になってくるので、事業者様が単独で金融調整するのは非常に困難です。金融調整に慣れた認定支援機関に依頼するか、メイン行に頼るのが現実的でしょう。

また、金融支援の有無の違いから、合意形成の手続きもポストコロナ持続的発展計画事業の方が格段に楽になっています。

補助額

計画作成報酬に対する補助の内容は表の通りなので、事業者様の自己負担額で言えばポストコロナ持続的発展計画事業では最大10万円、405事業では最大100万円になります。上記はいずれもモニタリング費用込みです。モニタリングはいずれの制度でも必要とされています。ただ計画を作るだけでなく、その後もきちんとやっているかを報告するものになります。

補助の上限に10倍の差があるのは、それだけ専門家が費やす時間・労力に差があるからです。すなわち、金融調整が必要となる場合、各金融機関と何度も打ち合わせをして互いの利害をすり合わせていくことになりますし、各金融機関が金融支援を組織決定する上では詳細な計画及び報告書(デューデリジェンスレポート(DDR)と言われ、財務・事業DDRが一般的)が必要となるためです。なお、金融調整のための費用も補助対象になります。

計画書の項目

405事業の方が原則として必要とされる項目が多くなっています。ただし、405事業においても一部省略できる項目もあり、その場合はポストコロナ持続的発展計画事業とあまり変わりません。

これらの項目は事業者様が事前に知っておくべきというより、専門家からの質問に答えていけば専門家の方で作成してくれるものです。そのため、利用前の今の時点で詳しく知る必要はありません。よって簡単に各項目を説明します。

ビジネスモデル俯瞰図:仕入れ先から得意先まで、自社を含めた関係図を1枚にまとめたものです。

会社概要表:株主、役員構成、役員等との資金貸借、沿革等を簡単にまとめたものです。

資金繰り実績・計画表:前期の資金繰り実績今後1年程度の資金繰り予定表です。

具体的施策および実施時期:計画の成否を左右する計画の肝となるものです。売上向上の施策や経費削減の施策について、実施時期や具体的な内容を具体的にかつ詳細に記載します。絵に描いた餅にならず、必ず実行できるものを書く必要があります。また、自社の業績を上げるために真に必要な施策を考え抜く必要があります。

アクションプラン:上記の具体的施策および実施時期と内容はほぼ同じです。簡易版と考えればよいです。

モニタリング計画:モニタリングの頻度や内容を書きます。

資産保全表:各金融機関がどれだけ保全されているかの表です。金融機関にとっては、関心度が非常に高いものになります。一定の条件で省略可能です。

損益計算書:実績と将来数期間の損益計算書を作ります。

貸借対照表:実績と将来数期間の貸借対照表を作ります。一定の条件で省略可能です。

キャッシュフロー計算書:実績と将来数期間のキャッシュフロー計算書を作ります。損益計算書と貸借対照表を作れば差額で自動的に作れます。一定の条件で省略可能です。

金融支援の依頼内容:借入返済の据え置きや返済額、新規融資など金融支援の内容を書きます。

かかる時間

ポストコロナ持続的発展計画事業

事業者様としては、専門家(認定支援機関)からヒアリングされる時間が取られます。初回で数時間、場合によっては後日追加のヒアリングで数時間、計画書確認のため1時間と言った程度でしょうか。金融支援が不要なので、見込みを大幅に超えることも少ないでしょう。

405事業

事業者様における計画作成に必要な時間はポストコロナ〜の2倍から3倍でしょうか。計画をより詳細に作る時間、財務DDRにおける質問や帳簿を準備する時間、事業DDRにおけるヒアリングに答える時間が追加されます。しかし、405事業において本当に時間がかかるのは金融調整です。これは、金融機関の数や各金融機関との関係、各金融機関のスタンスといった変数に左右されるため一概には言えませんが、当初の予想時間を大幅に超えることもあります。たとえ専門家の全面的な支援を受ける場合であっても、相応の労力と時間が必要である点は覚悟しておいた方が良いです。

保証解除や事業承継への足掛かりとする

計画を作成する理由については冒頭に述べた通りですが、実はこれ以外にも使い道があります。ヒントは早期経営改善計画のサンプルです。実は、公式HPのサンプルには通常のサンプル以外のバージョンがあります。アクションプランに「経営者保証ガイドライン要件部分」を追加したもの、同じく「事業承継に向けた取組み部分」を追加したものです。

経営者保証の解除へ向けて

経営者保証に関するガイドラインとは、経営者の個人保証について、法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないことなどが定められているガイドラインです。正直、多くの中小企業位おいては同ガイドラインを一足飛びに満たすのは難しいと思われます。また、最近は同ガイドラインに則り経営者保証を解除する金融機関も増えていますが、同ガイドラインを満たしたからといって必ずしも全ての金融機関が経営者保証の解除に応じてくれるわけでもありません。しかしながら、経営者保証を解除したいという経営者様は非常に多いでしょう。そのため、いずれ経営者保証を解除する足掛かりとして同計画を作成し、金融機関へ意思表示及び頭出しをすることは有意義であると思われます。いきなり打診したところですぐに応じてくれる可能性は低いでしょう。しかし、色々条件を出してくれば、その条件をクリアしていくことで実現が可能になるかもケースはあるでしょう。

(参考)早期経営改善計画(サンプル:経営者保証に関するガイドラインの要件充足)

事業承継へ向けて

経営者の高年齢化により、事業承継の必要性を痛感している経営者様は多いでしょう。一方、順調に次世代への事業承継が進んでいるかという必ずしもそうではありません。事業承継を実際に行うには、事業承継税制といった特別な税制がある、M&Aも視野に入れる、そのための補助金もあるなど話が大きくなるのでここでは詳しく述べません。いずれにせよ、本格的に事業承継を進める上でのきっかけとして有用であることは言えそうです。

(参考)早期経営改善計画(サンプル:事業承継前の磨き上げ)

どちらを利用すべきか

計画を作る必要性がわかったとして、ではポストコロナ持続的発展計画事業と405事業のいずれを利用するのが良いのでしょうか。結論から言えば、金融機関が金融支援をするのに405事業による計画作成を要求してこない限り、ポストコロナ持続的発展計画事業を利用すべきです。私ごとで恐縮ですが、私はこれまで債権放棄を伴う再生計画の作成やチェックに関わることがたくさんありました。債権放棄を伴う場合、405事業のような返済据え置き・新規融資よりも大きな金融支援のため、再生計画もより詳細になりますし、財務・事業DDRも同様です。それに伴い専門家報酬も高くなります。しかし、その上で言えることは、高いをお金を払ったからといって、必ずしも事業者様の再生可能性(経営改善の可能性)が高まるわけではないということです。

なぜ多額のお金を払ってもダメなのか。結局のところ、どれだけ素晴らしい再生計画だったとしても、それを実行するのは経営者です。そのため経営者が本気にならなければ再生計画の出来自体の良否は関係ありません。また、再生計画を成功させる上で、金融機関、特にメイン行の協力は不可欠になります。返済猶予に応じるか、新規融資をするか、再生局面では誇張なしに金融機関が企業の生殺与奪の権を握っています。良い悪いの問題ではなく、それが冷厳な事実です。そして、金融機関が企業の再生に協力するか否かは、これまでの企業との関係、金融機関の上層部の意向、金融機関の体力など様々な要因が影響します。そのような実情から、再生可能性を高めるキーとしては、一に経営者の本気度、二に金融機関の支援姿勢、三に再生計画作成を支援する専門家の力量の順番に大きいと感じています。

話が少し脱線しましたが、高いお金を払うことで必ずしも再生可能性が高まるわけではないことは上記の通りです。しかし、逆の見方をすればほどほどの費用でも大きな効果を見込める可能性があるということです。ポストコロナ持続的発展計画事業は費用も多額ではなく、金融支援もありませんが、経営者様が本気になりさえすれば、それでも十分効果が期待できるということです。緊急に金融支援が必要というのでなければ、まずは本気でポストコロナ持続的発展計画事業に取り組んでみることをオススメします。

まとめ

・計画を作成する意味は、コロナ禍において現状を変えるきっかけを掴むためである

・計画に意味を持たせるのは経営者の心がけ次第

・ポストコロナ持続的発展計画事業と405事業の違いは、金融支援の有無・補助額・計画書で必要とされる内容等

・405事業は金融調整が必要になるため、かなり時間がかかる可能性がある

・保証解除や事業承継へのきっかけとしても使うという方法もある

・まずはポストコロナ持続的発展計画事業の利用を検討すべき

(参照先:公式HPへのリンク)

認定支援機関による経営改善計画策定支援事業

早期経営改善計画策定支援事業(通称 ポストコロナ持続的発展計画事業)

経営改善計画策定支援事業(通称 405事業)