経営革新計画の手引き
目次
01.概要
経営革新計画は、新事業活動に取り組み、かつ経営指標の向上を目指す計画です。それなりにボリュームのある計画ですが、本計画が承認されることで信用保証協会による保証を始めいくつかの支援制度を利用することができます。
02.検討したい会社
新規事業を始めたい会社
経営革新計画は、新規事業に取り組む計画です。この計画が承認されれば、信用保証協会から保証を受けやすくなるなど資金繰りが改善される可能性があります。そのため新規事業を始めたい会社にとってはメリットが大きいと言えます。
ものづくり補助金の応募を検討している会社
経営革新計画に承認されるとものづくり補助金の審査において加点されます。ものづくり補助金は規模が大きい補助金なので、応募を検討している会社は本計画の申請を検討した方が良いでしょう。
03.メリット
Ⅰ種々の支援制度
①信用保証の特例(別枠及び限度額引き上げ)
信用保証協会による債務保証の範囲が拡充されます。具体的には、通常枠(普通保証2億円、無担保保証8,000万円)とは別に、別枠(普通保証2億円、無担保保証8,000万円)が設けられます。また、新事業開拓保証の対象について2億円から3億円に引き上げられます。これらにより、経営革新計画の承認を受けた会社は融資を受けやすくなります。
②日本政策金融公庫による融資の特別利率
経営革新計画に基づく事業を行うために必要な設備資金及び運転資金については金利が優遇されます。
③その他
中小企業の多くが利用できるものは上記の①、②ですが、その他にも高度化融資制度、海外展開に伴う資金調達の支援措置、起業支援ファンドや中小企業投資育成株式会社からの投資、販路開拓の支援措置があります。
Ⅱものづくり補助金での加点
経営革新計画の承認を受けていればものづくり補助金において加点されます。ものづくり補助金については、ものづくり補助金~申請のガイド~をご確認ください。ものづくり補助金はそれなりの額が補助されるメジャーな補助金です。そのため、このものづくり補助金の加点を得るために経営革新計画を申請する会社もあるくらいです。
Ⅲ本格的な計画である
経営革新計画は想定分量が17ページ程度とそれなりにボリュームがあります。そのため、これまでにご紹介した経営力向上計画、早期経営改善計画、さらには経営改善計画よりもしっかりした計画になります。しっかりした計画ということは、様々な視点から自社の経営を検討できるということです。しっかりした計画を作りたいという会社は経営革新計画を検討しても良いでしょう。
Ⅳ外部へアピールできる
経営革新計画が承認されたら、自社のWebサイトでその旨を記載することができます。ある意味で国からお墨付きをもらえた証でもあるので、自社のブランディングの一環とすることができます。
04.注意点
計画の要件がある
主要な要件は二つです。1つ目は、「新事業活動」に取り組む計画であることです。新事業とは自社にとって新たな事業活動であれば良く、他社がすでに始めていても原則として対象になります。しかし、同業においてかなりの程度普及している事業活動は対象外となってしまいます。2つ目は、「経営の相当程度の向上」を達成する計画です。具体的には、①「付加価値額」又は「一人あたりの付加価値額」の伸び率、②給与支給総額の伸び率を伸ばす必要があります。計画年数に応じ、①は9~15%以上、②は4.5~7.5%以上を①②ともに満たす必要があります。
スケジュールに余裕を持つ
ものづくり補助金での加点を狙う場合は特にスケジュールにも注意しましょう。例えば、栃木県の場合、遅くともものづくり補助金申請期限の四週間前までに申請書案と決算書送ることとされています。
05.分量と記載項目
分量:A4縦17ページ程度
別表1 経営革新計画
(別表1-2)経営革新計画の具体的内容
1 当社の現状(既存事業の内容)
(1)会社概要
(2)既存事業の内容
(3)経営状況
(4)既存事業の今後の見通し
2 本計画を策定するに至る「きっかけ」と経緯
(1)経営課題
(2)市場に関する調査・分析
3 新事業の内容「自社にとって何が新たな取組みであるのか」
(1)新事業の概要
(2)新事業の詳細
(3)比較
①既存事業との比較
②競合他社との比較
(4)販路開拓
(5)取組状況
(6)連携先
(7)資金調達
(8)事業許認可
(9)その他
4 計画の実施「新事業をどのように実施するのか」
5 計画を実施した結果はどのようになるのか
(1)当社のメリット
(2)取引先のメリット
(3)顧客のメリット
(別表2)実施計画と実績
(別表3)経営計画及び資金計画
(別表3-2)中期経営計画(3~8年)及び資金計画の算出根拠資料
1 既存事業と新規事業
2 新規事業 売上高計画の内訳
(1) 計画値内訳
(2) 設定数値根拠
単価の根拠
販売量の根拠
(3) 新規事業の市場規模
(別表4)設備投資計画及び運転資金計画
設備投資計画(経営革新計画に係るもの)
運転資金計画(経営革新計画に係るもの)
(別表6)[希望する支援策について] [関係機関への連絡希望について] [経営革新計画提出に当たり協力を得た機関等]
(別表7)[企業名等の公表] [中小企業経営革新事例集の作成]
06.費用の相場
20万円から30万円程度が相場です。
07.まとめ
経営革新計画は相応のボリュームがあり作成に労力と時間がかかります。その分精度の高い計画を作ることができるとともに、信用保証協会による保証はじめ複数の支援制度を利用することができます。新事業に取り組む予定のある企業やものづくり補助金に応募する予定のある企業は本計画の申請を検討しても良いでしょう。