経営を深め、相談する場

ものづくり補助金〜申請のガイド〜

1.ものづくり補助金の内容

(1)概要

採択率

直近の第6次締め切りの採択率は約47%となっており、比較的高いです。

公募期間

〔一般型・グローバル展開型〕

8次締切
申請開始:令和3年9月1日(水)17時  
応募締切:令和3年11月11日(木)17時 

補助額・補助率

補助額

〔一般型・グローバル展開型〕

一般型:100万円〜1,000万円

グローバル展開型:1,000万円〜3,000万円

補助率

〔通常枠〕

中小企業 補助率1/2 小規模事業者 2/3

〔低感染リスク型ビジネス枠〕

2/3

要件

実施期間

発注・納入・検収・支払等のすべての事業の手続きが一般型は交付決定日から10ヶ月以内、グローバル展開型は同12ヶ月以内に完了する事業であること

低感染リスク型ビジネス枠

補助対象経費全額が、以下のいずれかの要件に合致する投資であること。
・物理的な対人接触を減じることに資する革新的な製品・サービスの開発
(例:AI・IoT等の技術を活用した遠隔操作や自動制御等の機能を有する製品開発(部品開発を
含む)、オンラインビジネスへの転換等)
・物理的な対人接触を減じる製品・システムを導入した生産プロセス・サービス提供方法の改善
(例:ロボットシステムの導入によるプロセス改善、複数の店舗や施設に遠隔でサービスを提供する
オペレーションセンターの構築等)
・ウィズコロナ、ポストコロナに対応したビジネスモデルへの抜本的な転換に係る設備・システム投資

従業員に表明

以下の要件を全て満たす3~5年の事業計画を策定し、従業員に表明していること。
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
・事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
・事業計画期間において、事業者全体の付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年率平均3%以上増加

※要件を満たせなかった場合、一定の算定式によって計算された金額を返還しなければなりません。

実施場所

応募申請時点で補助事業の実施場所(工場や店舗等)を有していること。

補助の対象となる事業

一般型

どのような投資が補助の対象となるのでしょうか。一言で言えば、経営革新につながる投資です。経営「革新」というのがポイントです。では、具体的にどのような投資が経営革新につながるのでしょうか。具体例を挙げたいところですが、対象となる設備投資は非常に多岐に渡り、一つ一つ挙げていってもきりがありません。そこで、ここでは大枠のところで対象となりそうか判断しやすくするためにいくつかのグループに分けました。

A 新商品(試作品)開発 / 新たな生産方式の導入

B 新役務(サービス)の開発 / 新たな提供方式の導入

特筆すべきは、「ものづくり補助金」という名称が浸透していますが、サービス業でも対象になることです。サービス業は上記Bのうち、いずれかに該当すれば対象となる可能性があります。Aは技術、Bは改善の方向性となります。

もの補助対象
グローバル展開型

下記のいずれかが対象になります。該当する中小企業は少ないと思いますので、詳細は割愛します。

・海外直接投資型

・海外市場開拓型

・インバウンド市場開拓型

・海外事業者との共同事業型

対象経費

一般型
[通常枠] 機械装置システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費
[低感染リスク型ビジネス枠] 上記に加えて、広告宣伝費・販売促進費

グローバル展開型

機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費、海外旅費

事業計画書の記載内容

その1:補助事業の具体的取組内容

① 本事業の目的・手段について、今までの自社での取組みの経緯・内容をはじめ、今回の補助事業で機械装置等を取得しなければならない必要性。また、課題を解決するため、不可欠な工程ごとの開発内容、材料や機械装置等を明確にしながら、具体的な目標及びその具体的な達成手段を記載してください(必要に応じて図表や写真等を用い具体的かつ詳細に記載)。事業期間内に投資する機械装置等の型番、取得時期や技術の導入時期についての詳細なスケジュールの記載が必要となります。
② 応募申請する事業分野(「試作品開発・生産プロセス改善」又は「サービス開発・新提供方式導入」)に応じて、事業計画と「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」又は「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」との関連性を説明。
③ 本事業を行うことによって、どのように他者と差別化し競争力強化が実現するかについて、その方法や仕組み、実施体制など、具体的に説明。

その2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)

① 本事業の成果が寄与すると想定している具体的なユーザー、マーケット及び市場規模等について、その成果の価格的・性能的な優位性・収益性や現在の市場規模も踏まえて記載。
② 本事業の成果の事業化見込みについて、目標となる時期・売上規模・量産化時の製品等の価格等について簡潔に記載。
③ 必要に応じて図表や写真等を用い、具体的かつ詳細に記載。

その3:会社全体の事業計画

① 会社全体の事業計画(表)における「付加価値額」や「給与支給総額」等の算出については、算出根拠を記載。

加点要素

① 成長性加点:有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者
② 政策加点:
②-1:創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)
②-2:パートナーシップ構築宣言を行っている事業者
③ 災害等加点:有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者
④ 賃上げ加点等:
④-1:事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者、

又は、

事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者

に対して従業員数の規模に応じた加点。
④-2:被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合

添付書類

・事業の具体的な内容等 (その1・その2・その3)(計10ページ以内)

・賃金引上げ計画を従業員に表明したことを示す書類

・直近二期間の決算書

(グローバル展開型のみ)

・海外事業の準備状況を示す書類

(加点を希望する場合)

・成長性加点:経営革新計画承認書
・政策加点:開業届又は履歴事項全部証明書(創業・第二創業の場合)
・災害等加点:(連携)事業継続力強化計画認定書
・賃上げ加点:特定適用事業所該当通知書

採択後の流れ

①補助金交付申請書提出

②補助金交付決定:①で審査を経て交付が決定されます

③補助事業の開始:交付決定通知日より前に支出した経費は補助対象外になります。

④補助事業遂行状況報告書提出:事務局の指示により提出します。

⑤中間監査

⑥実績報告書提出

⑦確定検査:「実績報告書」の内容に基づき書類を検査し、必要に応じて事務局が事業実施場所を訪問します。

⑧補助金確定通知書の受領

⑨補助金精算払請求

⑩補助金受け取り

⑪事業化状況・知的財産権等報告書の提出:5年間で計6回提出します。

(2)投資内容を考えるためのヒント

成果事例

公式Webサイトで公開されている成果事例を業種ごとにご紹介します。特に、従来のもの補助からはイメージしにくいサービス業について具体的なイメージが持てるでしょう。

飲食業

南檜山産アスパラのペースト(原料)を活かしたドレッシング等の商品化事業/サードウェーブコーヒー焙煎機導入による新たな事業展開/看板商品「煮かつサンド」の急速冷凍設備導入による全国展開の実現/保存性が高く、簡便に調理可能で、高い風味を持つ「冷凍手打式そば」の開発事業/千曲川の伝統漁業、文化、環境の継承に向けたブラックバス料理の商品化/ぎふジビエブランド普及の加工商品開発促進事業/新製法の導入による多店舗展開、長時間営業体制の構築/多言語対応のうどん体験会予約システムを用いた日本文化の教育事業/高級料亭の味を手軽に家庭で食せる『天然すっぽんレトルトスープ』の開発/旬の寿司ネタを安定供給しうる新たな氷温熟成解凍システムの構築/徳島の名産品を使ったオリジナルフレーバーコーヒーの開発/急速冷凍機器等の能力向上による自社冷凍食品の生産性向上及び品質改良計画/最高級佐賀牛と佐賀海苔“有明海一番”、及び有田鶏等佐賀県産食材を活用した革新的新商品の開発販売によるブランド確立/奄美の観光資源となり得る特徴あふれる新たなジェラートメニューの開発/新機械導入による急速冷凍じゅーしぃおにぎりの増産体制構築/達人窯を活用した、味を落とさない レトルト食品開発と販路拡大計画

宿泊業

ホテル屋上のパーティールーム新設によるウェディング獲得目標の達成/湯治機能に着目した一貫サービスの提供による健康増進・病気予防事業/湯の山温泉の魅力を海外へ向けて情報発信し、訪日旅行者の増加を目指していくためのWEBシステム開発事業/CTIと連動した予約・会計・顧客管理システムの導入によるコスト削減及び顧客満足度の向上/ITで受け継ぐ西村屋150年の伝統とおもてなし/日本国内には存在しない電動開閉式露天風呂が全室に付く温泉旅館/調理・配膳部門の生産性向上と温泉の保全高度化によるサービス向上/宿泊施設の生産性・サービス品質の向上並びに新たな宿泊形態の提供/徳島の素材・特産品を使った洋菓子製造/四国最大規模! 館内インフォメーションのデジタルサイネージシステム導入/大量集客が可能なスポーツ合宿対応型ホテルの本格的な事業展開/『五感で味わえる良質な温泉』および『機能温泉浴』をお客様に提供するシステムの構築

不動産賃貸・管理業

世界初 IBMのAIを活用した、障がいのある方の自立支援計画策定サービスの開発/LINEやコインパーキングを無人のコインランドリーに活用する/商店街の空き店舗を減らす!店舗後継者マッチングシステムの開発/遊休施設(旧映画館)を有効利用した地域コミュニティスペースとビジネス空間の創出

広告業

PR動画制作・配信拠点「北海道ストーリーラボ」の創設/蓄光製品の内製化体制整備による小ロット需要への対応と品質の強化、その効用による新商品の開発/耐候性・耐水性を高め、屋外使用に適した蓄光性看板を開発/素材を選ばず立体物に印刷できる設備機器等の導入により、地域事業者の製品試作や販路拡大に有用なサンプルづくりをサポート/100年後の家族の笑顔を作る「子育てママ向けキュレーションメディア」の立ち上げ/展示会の新たな市場として高度な3D技術を駆使したクラウド展示会場の開発/観光関連事業者の広告看板市場の獲得を目指す立体的木製看板の製造技術開発/業務支援システムが付加されている全国貸し看板情報掲載サイトの開発

2.べからず集

一度の不採択で諦める

ものづくり補助金は何度でも応募できます。特筆すべきは、回によって採択率が大きく異なることです。例えば、第一次締め切りにおける採択率は6割強ありましたが、第四次締切では約31%程度となっており、2倍近く差があります。このため、ある回で不採択になったらかといって次回も不採択になるとは限りません。もちろん不採択になった回よりブラッシュアップする必要はありますが、一度作れば修正はそれほど大変ではないので再チャレンジすることをお勧めします。

一般的な補助金のべからず集

こちらの記事(補助金申請〜A to Z〜)をご参照ください。

ものづくり補助金は事業再構築補助金ほどではないですが、難易度が高い補助金です。中には自力で申請書を作成できる企業もあるでしょうが、多くの中小企業は専門家の支援を受けることになると思います。

弊所でも補助金支援をしています。ぜひご検討ください。  

あらたま会計事務所の補助金支援を検討する