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事業再構築補助金~申請のガイド~

※公募ごとに内容がアップデートされています。本記事は2022年4月14日現在、第6回公募に向けた内容となっています。

令和3年度の目玉補助金、事業承継補助金の公募が始まっています。

補助額が大きく、うまく活かせば経営に大いに役立ちます。この記事では事業再構築補助金の内容から不採択の原因まで解説しています。よく読んでぜひ採択されましょう。

目次

1.事業再構築補助金の内容

(1)概要

採択率〜通常枠は厳しい〜

直近の第四回公募の採択率は下記になります。第二回・第三回と同様高い採択率です。とはいえ、通常枠は応募ベースで4割に満たないので依然として相応の難度であると言えるでしょう。

通常枠大規模賃金引上枠卒業枠緊急事態宣言特別枠最低賃金枠合計
応募件数15,03612174,21739119,673
採択件数5,700682,8062908,810
採択率37.9%50.0%47.1%66.5%74.2%44.8%

第三回公募採択率

通常枠緊急事態宣言枠最低賃金枠大規模賃金引上枠・卒業枠合計
応募件数(不備含む)15,4234,3514696420,307
申請件数(不備なし)14,1033,9334285518,519
採択件数5,7132,901375329,021
採択率(応募ベース)37.0%66.7%80.0%50.0%44.4%
採択率(申請ベース)40.8%73.8%87.6%58.2%48.7%

第二回公募採択率

通常枠特別枠卒業枠・V字回復枠合計
応募件数(不備含む)14,8595,8934820,800
申請件数(不備なし)13,2195,0783618,333
採択件数5,3883,924249,336
採択率(応募ベース)36.3%66.6%50.0%44.9%
採択率(申請ベース)40.8%77.3%66.7%50.9%

第一回公募採択率

通常枠特別枠卒業枠・V字回復枠合計
応募件数(不備含む)16,9685,1818222,231
申請件数(不備なし)14,8434,3267019,239
採択件数5,1042,866468,016
採択率(応募ベース)30.1%55.5%56.1%36.1%
採択率(申請ベース)34.4%66.3%65.7%41.7%

公募期間~申請には余裕を持って~

第六回公募 2022年3月28日〜6月30日18時まで。令和4年にさらに二回程度公募予定。

補助額〜ものづくり補助金よりも多額の補助額〜

通常枠における中小企業に補助される額は最低100万円、最高従業員数に応じて8,000万円、補助率は2/3(6,000万円超は1/2)です

補助額が最低100万円ということは、補助率が2/3ですので投資額は最低150万円必要という事です。

なお、中堅企業は上記と内容が少し変わりますが、ここではわかりやすく説明するため中小企業に絞って説明します。また、大規模賃金引上枠・回復・再生応援枠・最低賃金枠・グリーン成長枠というものもありますが、今回は省略します。

中堅企業と中小企業の定義についても明確にされていますが、相応の規模の会社のみが中堅企業となるため、大部分の企業は中小企業として上記の補助内容になります。

必須要件〜売上の減少が必要〜

1.売上が減っている

コロナ禍で厳しい状況になる中小企業を支援する補助金のため、売上減少につき下記の要件を満たす必要があります。

(a)2019 or 2020の1~3月の売上合計 × 90% ≧ 2020年4月以降の連続する6か月間のうち、いずれか3ヶ月どの月でもOK)

(a’)売上の代わりに付加価値額を用いれば、式はの90%は85%になります。

2.認定支援機関と事業計画を策定する

他の主だった補助金と同様、認定支援機関と計画を策定する必要があります。

認定支援機関とは国が認めた専門家のことで、一応制度上は顧問税理士を想定しており8割弱が税理士または税理士法人とされています。

しかし、認定支援機関を取得していない税理士もいますし、そもそも顧問税理士を付けていない場合もあります。そのような場合は他の専門家に頼むことになります。税理士以外の専門家では、士業だと中小企業診断士、行政書士、公認会計士、弁護士などが多いです。その他、商工会議所、金融機関、コンサル会社も認定支援機関となりえます。

この要件が求められているのは、事業者が自力でそれなりの計画を作るのは難しいだろうから、専門家に相談することで負担を減らしてね、ということです。

3.付加価値額を増加させる計画である

補助事業終了後3〜5年で以下の条件を満たす必要があります。

・付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加

or

・従業員一人当たりの付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加

フローチャート〜要件を満たすか判定〜

「事業再構築指針」「事業再構築指針の手引き」で「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」の定義が示されました。

判断の助けになるよう事業再構築の形態別にフローチャートを作成しました。申請の判断にご利用ください。

なお、「事業再編」は合併や会社分割などの組織再編に加えて他のいずれかの事業再構築が必要となっています。そのため、ここでは説明を省略します。

事業計画の策定〜ボリューム大の記載内容〜

既に述べたように、事業計画策定にはそれなりの分量について記載する必要があります。具体的には下記の内容を記載する必要があります。なお、最大15ページ(補助金額1,500万円以下の場合は10ページ以内)で作成するよう求められています。実際に書いてみるとそれぞれの項目で採択のアピールをすることになるので、足りなくなります。いかにコンパクトにまとめるかの技術が必要になります。

・現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性

・事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)

・事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法

・実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)

対象経費〜建物も対象〜

本補助金の特徴的な点は、建物費(建物の建築・改修に要する経費)も対象となることです。

通常の他の補助金は機械装置やシステム費などを対象としており、建物費は補助の対象とならないのが一般的です。

そのため、建築や改修の予定があったら本補助金を使えないか、検討すると良いでしょう。

スケジュール〜知っておかないと後悔する〜

注意すべき点のみ説明します。

購入契約締結のタイミング→交付決定後

補助事業の着手(購入契約の締結等)は原則として交付決定後、つまり採択よりも後のタイミングになります。そのため、見切り発車をしないことが大切です。

一応、事前着手申請を提出・承認されれば交付決定よりも前のタイミングでも大丈夫なのですが、その場合は不採択になった場合に補助の対象にならないというリスクを抱えることになります。

補助金入金のタイミング→1年以上先

補助金の入金はかなり先になります。

具体的には採択→交付決定→設備購入→実績報告→確定検査→精算払請求→補助金の入金という流れになります。

通常は1年以上先です。

ここで何が大事になってくるかというと、補助金入金までの資金繰りです。

つまり、自己負担部分だけでなく補助対象の2/3ないし3/4についても自前で用意しなければならない点です。

この場合は金融機関からつなぎ融資をしてもらうことが一般的です。

補助金のつなぎ融資は採択されれば返済の可能性が非常に高いので、運転資金や設備資金の融資と違って比較的簡単に貸してくれます

採択後の流れ〜補助額はまだ決定していません〜

①交付申請書提出

②交付決定:①で審査を経て交付が決定されます。

③事業の開始:交付決定日より前に支出した経費は補助対象外になります。

④状況報告書提出:事務局の指示により提出します。

⑤中間監査

⑥実績報告書提出

⑦確定検査:「実績報告書」の内容に基づき書類を検査し、必要に応じて事務局が事業実施場所を訪問します。

⑧補助金確定通知書の受領

⑨補助金精算払請求

⑩補助金受け取り

⑪書類の保管:一連の証拠書類は、補助事業の終了後も5年間は保管しておく義務があります。

⑫事業化状況・知的財産権等報告書の提出:5年間で計6回提出します。

同時に利用可能な支援措置

事業再構築補助金で購入する設備について、税制措置が適用できる可能性があります。具体的には、経営力向上計画先端設備等導入計画です。計画書のボリュームは事業再構築補助金の計画書に比べて少なく、内容も事業再構築補助金の計画書をベースにできるため作業は効率的に進められるでしょう。税額控除や特別償却などメリットが大きいので検討をおすすめします。

Webサイト〜迷ったらここで確認〜

(2)事業計画書の書き方のヒント

事業再構築の意味〜単なるコロナ対策ではない〜

本補助金はコロナ禍で苦しんでいる企業が大胆な変革を促すものです。そのためコロナ禍でどう対応するかが大切になってきます。つまり、ただ単に事業を再構築するだけでは足りず、コロナ禍でも大丈夫、むしろコロナ禍だからうまくいくんだということを説明しなければなりません。つまり、コロナ禍において伸びている市場や需要を取り込むものです。また、コロナ禍での対応といっても各業界のガイドラインで求められている程度のレベルでは厳しい可能性があるようです。具体的には、上記コロナ禍において伸びている市場や需要を取り込むために相応の投資を伴うものです。採択事例を見る限り、このような投資に対して本補助金は積極的に採択しているようです。具体例は後述の「採択された事業計画書例」で説明しているのでご参照ください。

採択された事業計画書例〜実例から学ぶのが採択への最短距離〜

前項は活用イメージでしたが、本項は第1回公募で実際に採択された計画書を要約してみました。総括では各項目について簡単に解説しています。ポイントは、どの計画書も再構築のストーリーがしっかりしている点です。

総括

再構築事業内容:本補助金においては計画書の記載レベルのみならず、どのような事業であるかがより重要であるようです。事例から印象に残った点は、デジタル化、最先端技術、コロナ禍で伸びている市場、地域性、独自性あたりが採択されやすいと思いました。

再構築性:コロナによって落ち込んだ市場・需要やサービスから、コロナ禍においてかえって増えたないしコロナ禍においても増加し続ける市場・需要やサービスへ移行した事例ばかりです。この点から、単に要件を満たすだけでは厳しい可能性があり、コロナ禍においても事業が軌道に乗ることをしっかり説明することが大切だと感じます。

投資内容:補助の対象になった投資のみを記載しています。

競争優位:競合の分析をしっかりしているとの前提の上で、説得力のある差別化が記載されています。

市場分析:市場分析は当局も再三重要だと言っており、ものづくり補助金など他の補助金よりも重視されています。事例においては市場規模の推移を記載しているケースが多かったです。また、ターゲットごとにアプローチ方法を変えて分析するのも有効だと思いました。

数値計画:費用を細かく記載している事例はありませんでしたが、売上はそれなりに細分化しているケースが多かったです。基本の単価×数量程度には細分化した方が良いでしょう。

地域への貢献:企業によってできるできないの差が大きい項目ですが、もしアピールできるようであれば有力な材料になる印象でした。

特記事項:国や自治体との連携、メディア掲載実績があれば積極的にアピールした事例が目立つ印象でした。

デジタル化によってコロナ禍で増えたサービス提供方法へ移行

種類:業態転換

再構築性:コロナ禍によって落ち込んだブライダル事業のリアルイベント中心から、コロナ禍によって増加したオンラインイベントや非接触型イベントへ移行

再構築事業内容:人の手によるイベント運営や食事の提供→①オンラインイベントシステムの開発と販売、②ロボット設備を導入した非接触型のオフラインイベント、③食の配送事業

投資内容:①配膳ロボット、清掃ロボット、通信設備、検温装置など②システムイベント開発③急速冷凍機、真空包装機、小型高温高圧調理器、液体凍結期、冷蔵庫、立体物用プリンター等

競争優位:①ロボットによる接触頻度減少・衛生面、ロボットに関する先行的な知見獲得、ロボットによる人件費削減と配置転換、②主催者・管理者が使いやすいシステム、低価格、リアルイベントに近い体験、③オリジナルレシピの開発、販売とイベント事業とのシナジー効果

市場分析:国内業界別の市場規模とシェア目標

数値計画:単価×件数で事業別に売上を分解

地域への貢献:自治体PR及び自治体の地場産品扱う

最先端技術によってコロナ禍で増えたサービス提供方法へ移行

種類:業態転換

再構築性:コロナ禍によって中止が増えたイベントの影響を受ける紙媒体の集客方法から、コロナ禍によって増加した非対面・非接触の個別集客へ移行

再構築事業内容:紙媒体の広告、情報誌発行、ネット印刷通販の運営→①空撮写真を登録するECサイト「ドローンフォトバンク」、②「モデルハウス、住宅展示場の内外VR動画」作成による顧客の広報支援

投資内容:ライカ社製BLK360°カメラ、ドローンフォトバンクECサイト

競争優位:低価格、生産性、革新性

市場分析:広告業界の推移、不動産業界の広告費の推移、具体的なユーザー・マーケット・市場規模

数値計画:単価×件数で事業別に売上を分解

地域への貢献:他企業のモデルになる

自治体とのつながりを軸にコロナ禍で拡大した市場へ移行

種類:新分野展開

再構築性:コロナ禍によって落ち込んだ旅行市場から、コロナ禍によって拡大するワーケーション市場へ移行

再構築事業内容:宿泊施設運営→ワーケーション施設の開業

投資内容:スマートTVシステム、インテリアデザインの委託、室内造作工事の実施・業務用家具類の購入、電子商取引サービス等

競争優位:5年以上の運営実績、地元との交流機能、独自の自社コンテンツ、メディア機能を有する、首都圏の企業群と協働体制を構築済み、技術ソリューションを実装する準備、自治体とのワーケーション連携京都や内閣府から事業の受託実績

市場分析:ワーケーション市場規模

数値計画:黒塗りのため不明

地域への貢献:都市圏と地域との交流機会増大、雇用機会創出

特記事項:中心市街地再生事業費補助金活用、ふるさと企業大賞受賞、帯広市とワーケーション推進連携協定締結、「令和3年度中間支援組織の提案型モデル事業」の採択実績

地域密着を軸にコロナ禍で増加した需要へ移行

種類:事業転換

再構築性:コロナ禍によって落ち込んだ観光客需要の代わりに、コロナ禍によって増加したワーケーション需要、移住需要などを取り込む

再構築事業内容:住宅宿泊業(民泊)→旅館業の簡易宿所に転換(ドミトリーから個室中心、4つの中期滞在プランの提供)

投資内容:消防設備、建築基準法に適合した建物改修

競争優位:低価格

市場分析:ターゲットごとに分解し、予約経路、PR方法を分析

数値計画:単価・宿泊者数・稼働率・営業日数に分解

地域への貢献:近隣飲食店紹介、体験紹介や町案内

特記事項:サントリー地域文化賞特別賞受賞実績

ブランド力を軸にコロナ禍で増加した需要へ移行

種類:事業転換

再構築性:コロナ禍によって落ち込んだ観光客需要の代わりに、コロナ禍によって増加した家飲み需要、アウトドア需要を取り込む

再構築事業内容:土産物品・飲食料品小売→地域資源を活用した惣菜製造のためのセントラルキッチン新設と食品製造卸売への事業転換

投資内容:建物工事費、スチームコンベクションオーブン、真空包装機、食器洗浄機、冷凍冷蔵庫、チェストフリーザー、瓶詰め機、ラベル貼り機等

競争優位:低価格、地域ブランドの強さ、地元素材、自社製造のクラフトビールとセット販売することによる相乗効果

市場分析:地域観光客、県内顧客、県外顧客に分けて分析

数値計画:部門別売上に分解

地域への貢献:地元の雇用

特記事項:ジャパン・グレートビア・アワーズ2020最高賞受賞、有名雑誌に掲載実績

技術力を軸にコロナ禍でも拡大する市場へ移行

種類:新分野展開

再構築性:コロナ禍によって落ち込んだ鉄鋼需要の代わりに、コロナ禍においても伸びている風力発電関連事業の需要を取り込む

再構築事業内容:改修工事向けクレーン作業や重量品輸送作業、プラント組み立て作業→①風力発電設備の運用管理及びメンテナンス事業、②風力メンテナンス技術者の養成トレーニング

投資内容:コントロールセンター、10t吊り天井クレーン、4tフォークリフト

競争優位:クレーン自社保有によるコスト優位、準備期間短縮による迅速性、多数の高度人材

市場分析:風力発電の動向、日本政府の動向、運用メンテナンス事業の市場を分析

数値計画:特筆なし

地域への貢献:日本の風力発電のベース電源課に貢献

特記事項:グローバル市場でのニッチトップを目指す

独自技術を軸にコロナ禍で増加した需要へ移行

種類:新分野展開

再構築性:コロナ禍によって落ち込んだ料飲店(居酒屋など外食産業)需要の代わりに、コロナ禍によって増加した家飲み需要を取り込む

再構築事業内容:リキュール飲料の販売→新たに開発・特許取得した「植物性乳酸菌」を活用し、乳酸菌入り果実リキュール、乳酸菌飲料、乳酸菌原液を製品化

投資内容:乳酸菌培養設備、飲料充填設備

競争優位:植物性乳酸菌効果、全国農家からの果物調達+製品種類、8mm角果実瓶詰め記述

市場分析:清涼飲料市場、アルコール飲料市場、RTD市場、リキュール消費割合、乳酸菌飲料市場を分析

数値計画:製品ごとに販路別に売上計画

地域への貢献:記載なし

活用イメージ集〜アイデアの参考に〜

表の要件だけだとわかりにくい面もあるかと思いますので、それぞれの種類ごとに事業再構築補助金のWebサイトから例を紹介します。

新分野展開

製造業:ドライブレコーダーなどの車載製品を製造していたところ、コロナの影響で売上が減少

→新たに需要の拡大が見込まれる医療用ライトなどの医療分野向け製品の製造を開始

建設業:宿泊施設や観光施設などの事業施設向けの建設業を営んでいたが、コロナにより業界全体が業績不振

→新たに需要が増しているアクリル板などのプラスチック加工製品の製造に着手

製造業:航空機部品を専門に製造していた製造業者が、コロナにより需要減少

→新たに需要が見込まれる半導体関連部品の製造に着手

宿泊業:宿泊施設を営んでいた事業者が、コロナの影響により収入が減少

→コロナ禍でのキャンプ需要を受けて、新たにオートキャンプ場施設の経営を開始

製造業:航空機用部品を製造していた製造業者が、業界全体が業績不振で厳しい環境下

→新たに医療機器部品の製造に着手

不動産業:都心部の駅前にビジネス客向けのウィークリーマンションを営んでいた

→テレワーク需要の増加を 踏まえて、客室の一部をテレワークスペースや小会議室に改装するとともにオフィス機器を導入

事業転換

製造業:航空機分野の部品を製造している事業者が、コロナの影響を受けて業績不振

→これまで培った精密加工技術を用いて、新たに医療用機器の製造を開始

運輸業:観光バス事業を展開する事業者が、インバウンド需要の低下により収入が減少

→新たに利用者が見込まれる高齢者施設向けの送迎サービスを開始

製造業:金属加工業を展開する事業者が、コロナの影響により自動車部品の需要が減少

→これまでの金属加工技術を応用し、新規事業として産業用ロボットの製造を開始

小売業:衣服品販売店を経営する事業者が、コロナの影響により売上が減少

→既に実施しているフィットネス関連事業との相乗効果を念頭に、新たに健康・美容関連商品の販売店を展開

飲食サービス業:日本料理店

→換気の徹底によりコロナの感染リスクが低いとされ、足元業績が好調な焼肉店を新たに開業

製造業:プレス加工用金型を製造している下請事業者

→これまで培った金属 加工技術を用いて、新たに産業用ロボット製造業を開始

業種転換

賃貸業:農業機械のリース事業を営んでいたところ、コロナの影響により利用客が減少

→農業に限らず多くの分野で利用が期待されているドローンの操作を学ぶための通信教育ビジネスを新たに運用

サービス業:ビル管理・施設管理業務を営んでいたが、コロナの影響を受けて業績不振

→オフィス等の施設で需要増が見込まれる空気清浄機の製造販売に新たに着手

運輸業:トラックによる輸送業を営んでいたが、コロナの影響による食材等の需要の減退で輸送量が減少

→これまでの事業で生産者と繋がりがあった食料を用いたメニューを共同で開発し、飲食店を開業

宿泊業:宿泊業を営んでいたが、コロナの影響により出張や旅行の機会が減少したことで利用客が激減

→在宅勤務者等をターゲットとして、旅館の客室の大半をコワーキングスペースに改修し、新たに運営を行う

賃貸業:レンタカー事業

→新たにファミリー向けのコロナ対策に配慮した貸切ペンションを経営し、レンタカー事業と組み合わせた宿泊プランを提供する

製造業:生産用機械の製造業

→工場を閉鎖し、跡地に新たにデータセンターを建設

業態転換

小売業:アパレルショップを経営していたところ、コロナの影響で実店舗での売上げが減少

→ECサイトや注文管理システムの構築、店頭販売からの誘導等によりネット販売を新たに開始

飲食業:レストランを経営していたところ、コロナの影響により来客数が大幅に減少

→店舗の一部を縮小し、非対面式の注文システムを活用したテイクアウト販売を新たに開始

サービス業:アーティストのライブやアート展示会等の運営を担うイベント運営会社が、コロナの影響によりイベントの中止が続出

→コロナの感染リスクを抑えつつイベントを開催するために、ライブや展示会をバーチャル上で再現するサービスの提供を開始

サービス業:美容室を経営していたところ、コロナの影響により利用客が減少し、売上が大幅に減少

→店舗を縮小し、外出の機会を減らしたいと考える利用客や、移動が難しい高齢者向けに、訪問美容サービスを新たに開始

サービス業:ヨガ教室を経営していたところ、コロナの影響で顧客が激減し、売上げが低迷

→サービスの提供方法を変更すべく、店舗での営業を縮小し、オンラインサービスを新たに 開始

製造業:健康器具を製造している製造業者

AI・IoT技術などのデジタル技術を活用して、製造プロセスの省人化を進めるとともに、 削減が見込まれるコストを投じてより付加価値の高い健康器具を製造

※事業再編は省略します。

2.べからず集〜不採択の原因〜

(1)確実に押さえたいポイント

審査項目を意識しない

不採択例として多いのは、投資の内容のアピールばかりに目がいって、採点項目を意識した記載になっていないケースです。採択は審査による採点で決まりますが、採点項目は細分化されています。具体的な審査項目は公募要領に記載がありますが、それぞれの項目を満たしていることをはっきりと書かなければ点数にならない可能性があります。投資の内容として採点項目を満たしていたとしても、それをはっきり記載しないことで採点されず、その結果として不採択になってしまったら元も子もありません。具体的な審査項目には、大胆な事業の再構築であるか、コロナによる影響を受けて再構築の必要があるかなど具体的になっていますので、満たしているのであればはっきりと記載する必要があります。

アピールポイントが弱い

その事業をすることによって、どのように差別化が図れるのか、競争優位に立てるのかが不明な計画では審査員の印象が悪くなります。もっと平たく言うと、他社と同じような案件ではだめということです。審査員は一人で多くの案件を審査するので、アピールするポイントを絞ってわかりやすく説明する必要があります。

再構築性が低い

補助金の名称にもなっているように、再構築性が低いと不採択になる可能性が高いようです。具体的には、既存事業が順調である、既存事業がコロナの影響を受けていない、既存のリソースを活かしていない、新規事業がコロナによるマイナスの影響を受ける、などです。既存事業に加えて新規事業を追加、というよりも既存事業から新規事業にシフト、それもコロナ禍に強い新規事業にシフトするという計画が採択される傾向にあるようです。

数値計画の根拠が雑

持続化補助金やものづくり補助金ではそこまで数値計画の妥当性をチェックされることはないですが、本補助金ではそれなりに数値の根拠を見ているようです。特に売上はある程度分解し、水準も妥当なレベルにし、審査員にも実現可能な水準であると印象付けた方が良いです。

要件の不備

第一回応募総数2万件強のうち、一割以上の応募が書類不備等によりシステム受付すらされていません。事務局で公表している事例としては、①売上高減少要件に必要な月別売上高が証明する書類が添付されていない or 売上高減少として選択された年月とは異なる年月の書類が添付されている、②「認定経営革新等支援機関による確認書」 に記載された法人名等が申請者と異なる or 認定経営革新等支援機関ではなく、申請者名で確認書が作成されている、③経済産業省ミラサポplusからの「事業財務情報」が添付されていない、④添付された書類にパスワードがかかっている、ファイルが破損しているが挙げられています。事業再構築補助金の申請は非常に時間と労力を必要とするため、それが内容以前に審査すらされないとは目も当てられません。当たり前のことではありますが、申請前に要件は再度確認しましょう。

一般的な補助金のべからず集

こちらの記事(補助金申請〜A to Z〜)をご参照ください。

(2)差がつくポイント

ストーリーがない

申請書が読みにくいケースも不採択につながります。読みにくい理由には、ストーリーがなくバラバラの話を継ぎ足したケースがあります。事業再構築補助金の第一回応募件数は不備がないものに限っても2万件近くあり膨大なので、1件あたりにかけられる採点時間は数十分のようです。この限られた時間から十数ページにかかれた内容を把握し、採点しなければなりません。そのため、何度も読む時間はありません。よって、記載内容は一読して理解できる文章を書くべきです。そのためには、ストーリーがあることが大切です。一貫したストーリーの流れに沿って記載をすることですんなり頭に入ってきます。審査項目を意識しつつストーリーをわかりやすく書かなければならないのでじっくりと構成を練る必要があります。本事業と関係ない記載もたまに見かけますが、無駄は極力省くべきです。

実現可能性が低い

実現可能性が低いケースも不採択になる理由として多いようです。具体的には、財務が非常に傷んでいる、実行までの人的リソースが不足している、スケジュールがあいまいすぎるケースなどがあるようです。財務面については過去の結果なので直接の対策を取ることはできませんが、不安を払拭できる材料があるなら記載すべきです。人的リソースやスケジュールにつても具体的に安心材料を記載することで不採択の理由にしないことができる可能性があります。これらのケースに共通しているのは本当に実現できるのか、という視点なので実行可能性に不安を抱かせると思うのであれば極力払拭する記載を心がけましょう。

市場分析が雑

持続化補助金やものづくり補助金と違って、事業再構築補助金では市場分析が重要になります。当局も何度か明言しているほどです。支援者側も市場分析に慣れていないようですが、やろうと思えば色々な市場分析ができます。まずはRESASやV-RESASを使って使えるデータが無いか調べるのが良いでしょう。注意点は、あまりマクロな市場を分析しても審査員に響きにくいという点です。中小企業はそもそも売上が小さいですから、日本市場全体の規模よりも地域など絞った上での市場規模が重要になります。

既存の経営資源を活かさない

「再構築性が低い」の項でも述べたように、既存のリソースを新事業に振り分けるほうが採択されやすい傾向にあるようです。それだけでなく、ノウハウや経験など、既存事業の強みは色々あるはずです。それら、既に持っている強みを新事業に活かす計画は評価が高いようです。

オンライン・デジタル・コロナ対策のアピールが弱い

コロナ禍による市場経済の変化に対応しているとは言えないというのが不採択の理由だったケースがあるようです。すべての事業では無理かもしれませんが、もしもオンライン・デジタル化・コロナ対策をしているのであればしっかりアピールした方が良いです。特にコロナ対策はすべての場合においてしっかり準備して記載しましょう。

事業再構築補助金は採択率が低いことから分かるように、難易度が高い補助金です。中には自力で申請書を作成できる企業もあるでしょうが、多くの中小企業は専門家の支援を受けることになると思います。

弊所でも補助金支援をしています。ぜひご検討ください。  

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