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事業再構築補助金~概要とフローチャート~

令和3年度の目玉補助金、事業承継補助金の公募が近々始まる予定です。

今回はおさらいとして要点を最小限に絞って解説します。

とはいえ、事業再構築の種類によって多くの要件が設けられており、中々要件の理解が困難になっています。

また、補助の対象になるか否かはどんなに有利な補助金であろうと最初の段階で確認しなければいけないことです。

そのため、公表資料を基に事業再構築の種類別に要件を表にまとめました。忙しい方は表だけでも確認し、自社の投資は問題なさそうかだけでも見ておくと良いでしょう。

補助額

中小企業に補助される額は最低100万円、最高6,000万円、補助率は2/3です。

補助額が最低100万円ということは、補助率が2/3ですので投資額は最低150万円必要という事です。

なお、中堅企業は上記と内容が少し変わりますが、ここではわかりやすく説明するため中小企業に絞って説明します。

中堅企業と中小企業の定義についても明確にされていますが、相応の規模の会社のみが中堅企業となるため、大部分の企業は中小企業として上記の補助内容になります。

要件

1.売上が減っている

コロナ禍で厳しい状況になる中小企業を支援する補助金のため、売上減少につき下記の要件を満たす必要があります。

2019 or 2020の1~3月の売上合計 × 90% > 2020年10月以降の連続する6か月間のうち、いずれか3ヶ月どの月でもOK)

2.事業再構築に取り組む

本補助金の目的はポストコロナ時代の経済変化に対応するため、中小企業の思い切った事業の再構築を促すことです。

そのため、新分野展開、業態転換、事業・業種転換が必要になります。

具体的には、「種類別要件表」の項で整理しています。

詳しくはそちらをご覧ください。

3.認定支援機関と事業計画を策定する

他の主だった補助金と同様、認定支援機関と計画を策定する必要があります。

認定支援機関とは国が認めた専門家のことで、一応制度上は顧問税理士を想定しており8割弱が税理士または税理士法人とされています。

しかし、認定支援機関を取得していない税理士もいますし、そもそも顧問税理士を付けていない場合もあります。そのような場合は他の専門家に頼むことになります。税理士以外の専門家では、士業だと中小企業診断士、行政書士、公認会計士、弁護士などが多いです。その他、商工会議所、金融機関、コンサル会社も認定支援機関となりえます。

この要件が求められているのは、事業者が自力でそれなりの計画を作るのは難しいだろうから、専門家に相談することで負担を減らしてね、ということです。

そのため、積極的に専門家へ相談すべきです。

補助金申請はそれなりに記載のボリュームもあるので自力でやろうとするとかなりの時間を取られます。

また、加点要素や記載のコツなど申請上のポイントがいくつもあるので、質の高い申請書を書くという点でも専門家に任せた方が安心です。

緊急事態宣言特別枠

緊急事態宣言の影響により下記の要件を満たす事業者は二種類の優遇措置があります。

前年又は前々年同月 × 70% > 2021年1~6月のうちいずれかの月の売上

緊急事態宣言特別枠

補助率が3/4に引き上げられます。一方、補助金額は会社の従業員数に応じて最高1,500万円までの限度額に引き下げられます。

また、緊急事態宣言特別枠で不採択になったとして、通常枠で加点された上で再審査されます。

通常枠の加点措置

緊急事態宣言特別枠で不採択になった事業者も、緊急事態宣言枠で申し込まなかった事業者も加点の上で審査がなされます。そのため、通常よりも採択されやすくなります。

フローチャート

「事業再構築指針」「事業再構築指針の手引き」で「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」の定義が示されました。

判断の助けになるよう事業再構築の形態別にフローチャートを作成しました。申請の判断にご利用ください。

なお、「事業再編」は合併や会社分割などの組織再編に加えて他のいずれかの事業再構築が必要となっています。そのため、ここでは説明を省略します。

種類別要件表

上記フローチャートとほぼ同じ内容ですが、表の方が見やすいという方はこちらでご確認ください。「事業再構築指針」「事業再構築指針の手引き」で「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」の定義が示されました。

(事業再構築の種類別要件表)※下記の要件は種類ごとに全て満たす必要があります

具体例

表の要件だけだとわかりにくい面もあるかと思いますので、それぞれの種類ごとに「事業再構築の手引き」で紹介されている要件を満たしている例を紹介します。

新分野展開

1.航空機用部品を製造していた製造業者が、業界全体が業績不振で厳しい環境下の中、新たに 医療機器部品の製造に着手するケース

2.都心部の駅前にビジネス客向けのウィークリーマンションを営んでいたが、テレワーク需要の増加を 踏まえて、客室の一部をテレワークスペースや小会議室に改装するとともにオフィス機器を導入するケース

事業転換

1.日本料理店が、換気の徹底によりコロナの感染リスクが低いとされ、足元業績が好調な焼肉店を新たに開業するケース(表の注記例)

2.プレス加工用金型を製造している下請事業者が、業績不振を打破するため、これまで培った金属 加工技術を用いて、新たに産業用ロボット製造業を開始(表の注記例)

業種転換

1.レンタカー事業を営んでいる事業者が、新たにファミリー向けのコロナ対策に配慮した貸切ペンション を経営し、レンタカー事業と組み合わせた宿泊プランを提供する(表の注記例)

2.コロナの影響も含め、今後ますますデータ通信量の増大が見込まれる中、生産用機械の製造業を 営んでいる事業者が、工場を閉鎖し、跡地に新たにデータセンターを建設するケース(表の注記例)

業態転換

1.ヨガ教室を経営していたところ、コロナの影響で顧客が激減し、売上げが低迷していることを受け、 サービスの提供方法を変更すべく、店舗での営業を縮小し、オンラインサービスを新たに 開始するケース

2.健康器具を製造している製造業者が、コロナの感染リスクを抑えつつ、生産性を向上させることを 目的として、AI・IoT技術などのデジタル技術を活用して、製造プロセスの省人化を進めるとともに、 削減が見込まれるコストを投じてより付加価値の高い健康器具を製造するケース

事業計画の策定

既に述べたように、事業計画策定にはそれなりの分量について記載する必要があります。認定支援機関に相談するのであれば、彼らからヒアリングされますので、その通りに答えていけば大丈夫です。

とはいえ、自力でやってみたいという経営者のために記載すべき内容を下記列挙します。

・現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性

・事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)

・事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法

・実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)

また、具体的な審査項目は公募要領に掲載予定であり、上記に追加される可能性もあります。

経費

本補助金の特徴的な点は、建物費(建物の建築・改修に要する経費)も対象となることです。

通常の他の補助金は機械装置やシステム費などを対象としており、建物費は補助の対象とならないのが一般的です。

そのため、建築や改修の予定があったら本補助金を使えないか、検討すると良いでしょう。

スケジュール

注意すべき点のみ説明します。

購入契約締結のタイミング→交付決定後

補助事業の着手(購入契約の締結等)は原則として交付決定後、つまり採択よりも後のタイミングになります。そのため、見切り発車をしないことが大切です。

一応、事前着手申請を提出・承認されれば交付決定よりも前のタイミングでも大丈夫なのですが、その場合は不採択になった場合に補助の対象にならないというリスクを抱えることになります。

補助金入金のタイミング→1年以上先

補助金の入金はかなり先になります。

具体的には採択→交付決定→設備購入→実績報告→確定検査→精算払請求→補助金の入金という流れになります。

通常は1年以上先です。

ここで何が大事になってくるかというと、補助金入金までの資金繰りです。

つまり、自己負担部分だけでなく補助対象の2/3ないし3/4についても自前で用意しなければならない点です。

この場合は金融機関からつなぎ融資をしてもらうことが一般的です。

補助金のつなぎ融資は採択されれば返済の可能性が非常に高いので、運転資金や設備資金の融資と違って比較的簡単に貸してくれます

事前準備

公募開始は令和3年3月からの予定ですが、それまでに準備しておいた方が良いことがいくつかあります。

GビズIDプライムアカウントの発行

申請は全て電子申請となり、上記IDが必要です。

発行までに2〜3週間かかりますので今のうちにやっておきましょう。

認定支援機関を見つける

本補助金は今年の1番の目玉補助金のため、申請が殺到されることが予想されています。

その結果、認定支援機関側もキャパシティオーバーとなり、一定金額以下の案件は受け付けない可能性があると言われています。

その結果、大量の事業再構築補助金難民が発生する可能性があります。

よって、今のうちから対応できる認定支援機関を見つけて相談しておいた方がよいでしょう。

まとめ

本補助金は1兆1485億円の予算が組まれており、非常に多くの事業者に行き渡る見込みです。

さらに、本補助金は他の補助金と異なり建物費も補助対象になります。

要件を満たすのが難しい面もありますが、逆に今のままでは光明が見えないという場合には大きな変化のきっかけになるのではないでしょうか。

変化にはリスクも伴いますので、気軽に実施すべきとは言いにくい面がありますが、現状をなんとか変えたいと思う経営者にとっては有力な選択肢の一つになるのではないでしょうか。

※「事業再構築指針」及び「事業再構築指針の手引き」が公表されたことにより、令和3年3月18日に大幅に加筆修正しました。また、同年3月29日に同手引きが修正されたので同じく加筆修正しました。