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経営者の必修科目(第4回)〜借入のポイント〜

中小企業の多くは金融機関から借入をしています。一方で金融機関がどのように考えているかを知る機会は少ないと思います。本記事では借入にまつわる基本的なポイントを解説していきます。

どこから借りるか

まず、金融機関の種類として民間か政府系かで分けられます。民間ではメガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合があります。政府系としては、日本政策金融公庫、商工中金などがあります。

次に、企業の段階別に付き合うことになる金融機関です。創業時は創業融資を申し込める日本政策金融公庫に申し込むことが多いでしょう。それから地方銀行や地元の信用金庫・信用組合と取引をするのが一般的です。地方銀行は各都道府県に一つから複数存在しています。必ずしも多くの金融機関と取引することが望ましいとは限りませんが、一行とのお付き合いはその金融機関がどう判断するかに極めて大きく左右されるので、一般的には複数の金融機関と取引するのが望ましいです。また、日本政策金融公庫は民間の金融機関と協調することが望まれていますので、借入先が日本政策金融公庫のみの場合も他の金融機関との取引を考えても良いです。

もっと規模が大きくなるとメガバンクや商工中金と取引が始まることもあります。このうちメガバンクは重点分野を海外にシフトしているので、国内の中小企業はこれから取引を始めるのは難しいかもしれません。

いずれにせよ、一般的には借入先を一つに絞るのはおすすめしません。地銀、信金・信組、日本政策金融公庫のうち複数と付き合うことで、借入の際の選択肢が増えることになります。

メイン行がどこかは大切

一般的に、貸出残額(企業にとっては借入額)の一番大きい金融機関のことを業界用語でメイン行と呼びます。そして、業界の慣習としてメイン行とできるだけ足並みを揃えるという暗黙の了解があります。そのため、借入先である企業にとっては、メイン行が自社をどう評価するかが大事になってきます。

メイン行がどの金融機関であるかで違いが出やすいのは、企業の業績が厳しくなったときです。企業の業績が厳しくなったとき、返済計画も含めた改善計画を作るのが通常です。この時、他の金融機関を取りまとめ、改善へのイニシアチブを取るのがメイン行になります。そのため、メイン行が企業に対して積極的に支援しようとするのかそうでないかは他の金融機関の支援姿勢にも影響することが多くなります。企業としては、なるべく債務者に親身になってくれる金融機関にメイン行となって欲しいところです。

協調融資という方法もある

企業の借入希望額が大きい時など、一行で対応するのが難しい際に複数の金融機関で貸し出すケースがあります。このようなケースを協調融資と呼びます。例えば、メイン行に借入を打診した際、一行で全額対応が難しい場合にサブの銀行や日本政策金融公庫との協調融資なら検討できると言われるケースがあります。先方からの打診がなくても、協調融資であれば応じられるケースは多々あります。そのため、一行からの借入が断られた場合の選択肢として検討するのも良いでしょう。

信用保証協会を利用する際の注意

企業への貸出が貸し倒れた際、全額金融機関がリスクを負うのがプロパー融資といいます。一方、各県には○○県信用保証協会という公的な機関があって、民間の金融機関の貸し出しについて保証をします。この場合、企業への貸出が貸し倒れた際に一旦信用保証協会が全額か一部を肩代わりし、金融機関にお金を払い、以後は代わりに信用保証協会が企業の債権者となります。この肩代わりのことを代位弁済と言います。一度代位弁済を受けてしまうと、以後他の金融機関から借入をすることが極めてハードルが高くなってしまうので、極力代位弁済を受けないように気をつけましょう。

信用保証協会は公的な機関のため、民間の金融機関がプロパー融資をするよりも企業にとってハードルが下がります。一方で保証料を支払わなければならない点は注意点です。さらに、この保証料も数年分を前払いで一括なので資金繰りに与える影響にも注意しましょう。

信用保証協会の肩代わりについて全額か一部と書きました。通常は信用保証協会を利用する場合であっても2割は民間の金融機関が負担します。しかし、コロナ禍や東日本大地震など有事の際は信用保証協会が100%保証してくれる制度もあります。このような場合、民間の金融機関は一切リスクを取らないので企業にとっては借り入れるハードルが低くなります。一方で、民間の金融機関にとって全くリスクのない企業というのは関心を持ってもらえず、放置されるケースもあるので負の側面には気をつけましょう

制度融資を利用しよう

制度融資とは、自治体が保証するケースです。貸し倒れた債権を信用保証協会が肩代わりするケースは上記に述べた通りですが、これをさらに自治体が肩代わりするケースになります。つまり、最終的にリスクを負うのは自治体ということになります。そのため自治体ごとに設けられます。ご自身の自治体でもどのような制度融資があるか調べてみても良いでしょう。制度融資も融資のハードルがプロパー融資よりも低くなるので、利用できるのであれば積極的に検討しても良いでしょう。

なお、小山市の制度融資についてはリンク先の最下部で紹介しています。

栃木県小山市事業者向け:補助金・コロナ融資一覧 

不動産担保で借り入れるポイント

金融機関にとっては貸し倒れた際のリスクを減らそうとするので、プロパー融資であっても不動産担保を設定することが多いです。通常は事業用の不動産に担保設定することになりますが、遊休資産に設定することもあります。また、企業所有の不動産だけでなく、役員や親族所有の不動産に担保を設定することもあります。

ここでのポイントは、貸出額と担保評価額のバランスです。つまり、貸出額(企業にとっては借入額)よりも担保評価の額が高い場合、さらに借入ができる可能性があります。これを担保余力と言います。担保評価がいくらというのは担保を設定する金融機関ごとに評価しているので企業が知ることはできませんが、固定資産税を払うために送られてくる固定資産税納税通知書における固定資産評価額が一つの目安になります。ただし固定資産評価額が実態から乖離しているケースもあるので過信は禁物です。

連帯保証人を解除するポイント

社長をはじめとする役員の方の心情としてはなるべく連帯保証人になりたくないの本音でしょう。実際、金融機関を監督する金融庁の立場としては経営者の保証を解除する流れを作ろうとしています。そのような流れの中で、平成26年2月から経営者保証ガイドラインが適用されています。それから数年経ち、少しずつではありますが経営者保証の解除が進んでいるようです。そうはいっても中には積極的に経営者保証の解除に応じない金融機関もあるようです。経営者におかれましては、経営者保証を解除するポイントを実現し、粘り強く金融機関にリクエストし続けることが大切になるでしょう。経営者保証を解除するポイントとは、①会社と経営者の明確な分離、②強固な財務基盤、③財務状況の正確な把握および適時・適切な開示になります。リンク先の記事も参考にしてください。

 経営者保証の解除が進んでいるのを知っていますか

借入返済の止め方

企業の資金繰りに大きな影響を与えるのが金融機関への借入返済です。企業活動で十分なキャッシュフローを生み出しているのであれば返済を続けていくことができますが、十分なキャッシュフローが無かったりマイナスである場合などは借入の返済をストップするのも一つの手です。これをリスケジュール(リスケ)といいます。

リスケするのに不安が大きい経営者の方は非常に多いでしょう。では、リスケするとどのようなデメリットがあるのか。大きな点は、①新規の融資が出にくくなることでしょう。金融機関は企業を格付けしており、格付け区分に基づき貸しやすさを判断しています。そして、借入の返済が止まると格付けの区分が悪くなるので追加で貸し出すことは難しくなるのが一般的です。しかし、資金繰りが厳しい企業における場合、今ある借入を返し終わったタイミングで同じだけ借入れ、また返済に苦しむというループに陥っており、追加の借入ができたとしてもお金の増減としては返済を止めた場合と変わらないケースが多いです。平たくいうと、新規の借入によって既存借入の返済額をまかなっているということです。このようなケースであれば、一度返済をストップし、腰を据えて業績改善に専念し、その後身の丈にあった返済を再開するというケースの方が結果的に金融機関の利益にもつながるでしょう。また、リスケのデメリットには②経営者の立場が弱くなるという点も考慮に入れておくべきでしょう。リスケとは当初予定していた返済ができないことによる金融機関による支援のため、金融機関の立場が強くなります。相対的に経営者の立場が弱くなります。そのため、報告を求められる回数や提出資料が増えたり事務負担が増える可能性があります。また、費用削減(冗費削減)の要求をされることもあり、役員報酬を減額することもよくあります。このようなデメリットと、返済を止めて資金流出を食い止めるというメリットを天秤にかけてリスケすべきか否かを判断しましょう

リスケをどのように打診するかですが、親身になってくれる金融機関の担当者であれば、企業の資金繰りを見て明らかに返済の負担が重い場合は金融機関の方から打診してくれます。そのようなケースではリスケ後の支援に協力的なケースも多いので前向きに検討しても良いでしょう。社長からお願いするケースもあるでしょうし、自分から言いにくければ、顧問税理士の方に自社の返済能力と借入額のバランスを見てもらって金融機関へ打診してもらうというのも一つの方法です。いずれにしても、無理に借入の返済を続けても業績回復の見込みが薄いのであれば一度リスケするのも選択肢に入るでしょう。リスケに抵抗がある経営者の方は金融機関に迷惑をかけたくないという方が非常に多いですが、身の丈に合わない返済を続けても、結局企業がだめになってしまうと金融機関に大きく迷惑をかけることになるので、そうなる前に一時的に金融機関に我慢してもらう方法があるというのは頭の片隅に入れても良いかもしれないです。

なお、企業の収益力が返済額見合っているかどうかについてはリンク先の「元利支払いの原資となる」という項目が参考になるでしょう。

経営者の必修科目(第1回)〜損益計算書の見方と注目すべき指標〜

また、こちらの記事もリスケする際の参考になるでしょう。

どうすれば金融機関はリスケしてくれるでしょうか。

まとめ

・地銀、信金・信組、日本政策金融公庫のうち複数から借り入れる

・親身になってくれる金融機関をメイン行とする

・一行借入が難しかったら協調融資を検討する

・信用保証協会を利用する際は保証料の支払いに注意し、100%保証のデメリットも理解する

・制度融資を積極的に利用する

・不動産担保は担保余力があるか検討する

・連帯保証人を解除するには超えるべきハードルを理解する

・返済が厳しければリスケも選択肢とする