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経営改善計画の手引き

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01.概要

経営改善計画とは、経営改善計画策定支援事業において作成される計画です。この事業は中小企業が認定支援機関の支援を受けて基本的な経営改善計画を作成する際、費用の一部が補助される制度です。通称405事業と呼ばれています。

経営改善計画と同じような計画に早期経営改善計画があります(くわしくは早期経営改善計画の手引きをご参照ください)。こちらは早期経営改善計画策定支援事業(通称ポストコロナ持続的発展計画事業)において作成される計画です。両者を比較した記事(二つの経営改善計画策定支援事業(旧プレ405事業と405事業))も書いているので参考にしてください。

経営改善計画は作成負担が相応にあり、金融支援を伴う点が特徴です。

02.検討したい会社

本計画を検討した方が良い会社は以下です。

資金繰りが厳しい会社

本計画の大きな特徴は金融支援を伴う点です。金融支援の中身としてはリスケが多いので、リスケが必要な会社と考えていただければ結構です。リスケとは、借入金の返済を一時ストップないし軽減することにより返済を後ろ倒しにすることです。全期間を通じた返済総額は変わりませんが、返済を一定期間猶予することにより一時的に資金繰りが楽になります。そのため、目先の資金繰りが厳しい会社に検討する価値があると言えます。

業績改善に本腰を入れたい会社

リスケすることで一時的に資金繰りは改善されます。この間に経営改善に専念することができます。資金繰りが厳しくなるのは業績が悪化していることが理由なので、一時的に資金繰りを楽にしても業績が改善しないと結果的に再度資金繰りに苦しくなります。そのため経営改善は必須となります。一方で、資金繰りに苦しんでいる企業は金融機関対応や売掛金の回収・仕入れ資金の支払いなど平時以上に資金繰りに追われることになります。この結果、資金繰り対応に追われて経営改善に専念することができず、経営はさらに悪化し資金繰りが一層悪くなるという悪循環に陥りやすい状況になります。このような会社にとっては経営改善計画を作成することにより資金繰りを一時的に楽にし、経営改善に専念できることになります。そのため、経営改善に専念したい会社にとっても検討する価値があるでしょう。

03.メリット

国から補助がある

計画作成費用として専門家に支援を頼むと通常は報酬が発生します。その3分の2(上限200万円)を国が補助します。この補助を受けるためにはモニタリングという継続的な報告が求められていますが、モニタリングも上記補助の対象に含まれています。

金融支援が受けられる

上述のとおり、リスケを始めとした金融支援を受けることができます。金融支援としてはリスケが多いですが、リスケ以外の金融支援としてはDDSや債権放棄が挙げられます。

DDSとは通常の借入金の一部を劣後ローンにすることでこの分を資本とみなし、財務状態を改善することです。また利率も変動し、契約にもよりますが赤字の期間は非常に低い利率となり、逆に黒字の期間は通常の借入より高い利率となるのが一般的です。

債権放棄とは、借入金の棒引きになります。この棒引き部分には法人税がかかる点には注意が必要です(DDSでは法人税がかかりません)

いずれにせよリスケよりハードルが高くなります。特に債権放棄は経営改善計画で目にすることはほとんどなく、債権放棄が必要なほど財務が傷んでいる会社は別のスキームを検討することが多いです。

04.注意点

金融調整は手間がかかる

経営改善計画のメリットは金融支援を得られることですが、逆の観点からはこの金融支援を得るために金融機関と調整が必要になります。具体的にはメイン行との調整、金融機関間における調整の2つがあります。

メイン行との調整は、金融支援の内容に応じてくれるか、計画で定める変更後の返済スケジュールや業務改善案に納得してくれるかなどです。実現可能性の低い計画では納得してくれないこともありますし、返済スケジュールでも注文が有ることが多いです。一方で、経営改善計画ではメイン行の協力が重要なので、メイン行に腹落ちしてもらうよう手間を惜しまないことが大切です。経営改善計画の存在を会社が自ら知って金融機関に打診することはまれで、資金繰りが厳しくなった会社には金融機関から経営改善計画の策定を打診されることが多いです。このような場合にメイン行から打診があった場合は協力的なケースが多いので金融調整は楽になります。

金融機関間での調整は金融支援の内容が中心となることが多いです。金融支援においては公平性が重要になるためそのような返済計画を作ります。その公平性の解釈においてすり合わせが必要な場合があります。また、金融支援に協調せず自行の回収額を最大化させようとする金融機関が出てくることもあります。このような場合には計画作成に協力してもらうよう説得することになります。

上記のように金融調整は一筋縄でいかないことも多く、非常に手間と労力がかかる場合があります。

認定支援機関の支援が必要

本計画において補助を受けるには認定支援機関による支援を受けなければなりません。認定支援機関とは、中小企業を支援する専門家として国が認めた機関です。顧問税理士を始めとした多くの士業や商工会議所、金融機関が認定支援機関となっています。また、これらの専門家に作成を依頼する結果、通常は報酬が発生しますのでこちらも注意しましょう。これらの報酬において国から補助が出るのは上述したとおりです。

想定以上に自己負担額がかかる可能性

上記の通り、本記事の経営改善計画作成には国から補助が出ます。ただし、この補助を超える部分については当然自己負担になります。例を挙げれば、専門家への総報酬(モニタリング込み)が300万円の場合、補助は上限の200万円なので自己負担は100万になります。一方、総報酬が500万円の場合、補助は上限である同じ200万円なので自己負担は300万円になります。専門家への報酬は概ね会社の規模によって異なります。そのため、規模の大きい会社が経営改善計画の策定を検討する場合、想定以上に自己負担額が増える可能性があるので注意が必要です。

05.分量と記載項目

記載の分量はA4横10ページ程度以上です。早期経営改善計画に比べてかなり多くなっています。金融支援を伴うため、保全状況など金融機関にとって重要な情報が多いのが特徴です。

≪ 債務者概況表≫

①対象先・概要

②財務内容及び問題点

③業績推移等

④銀行取引状況

≪ 概要≫

  1. 課題・問題点
  2. 計画の基本方針
  3. 計画期間・改善目標等

≪ 企業集団の状況≫

≪ ビジネスモデル俯瞰図≫

≪ 資金実績表≫

≪ 計数計画・具体的な施策≫

数値計画の概要/経営改善計画に関する表明事項

≪ 実施計画≫

経営改善計画に関する具体的施策の効果/モニタリング計画

≪ 計数計画≫

損益計算書と課税所得/製造原価報告書/販管費の内訳/貸借対照表(資産の部)/貸借対照表(負債・純資産の部)/キャッシュフロー計算書/金融機関別返済計画/金融支援計画/金融機関別保全状況

06.費用の相場

会社の規模に応じて変動しますが、私の周りではモニタリング費用込みで100万円~400万円程と幅がある印象です。

弊所でも経営改善計画の作成支援をしています。よろしければご検討ください。→あらたま会計事務所の経営改善計画作成支援を検討する

07.まとめ

経営改善計画は金融支援が得られるため、資金繰りが厳しい企業が経営改善に専念するにはうってつけの制度です。一方で、金融調整には相応の手間がかかる点や、専門家への報酬によって思わぬ自己負担額がかかる可能性がある点が注意点です。これら注意点を踏まえ、無駄のない経営改善への道をめざしましょう。

Webサイト

経営改善計画策定支援事業(通称 405事業)