経営者の必修科目(第7回)〜補助金のポイント〜
補助金は費用の一部を国などの公的機関が補助してくれるものです。そのため、うまく使えば大きな効果を生み出しますが、メリットだけでなく注意点もたくさんあります。今回は補助金のメリット・デメリットや注意点、そして自社に合った補助金をどのように見つけるかについて解説していきます。
補助金の特徴
日本には様々な補助金がありますが、共通するポイントもたくさんあります。そのため、個別の補助金の前に簡単に特徴を押さえておきましょう。
補助率・補助上限額
補助金には補助率というものが定められています。これは投資額の1/2や3/4など、一部について補助するということです。100%補助する補助金はほとんどありませんので、一部は自己負担する必要があるという点は覚えておきましょう。また、補助の上限額も定められています。そのため、高額な投資の場合は補助率に満たないでも上限額に達し、自己負担の割合が多くなります。例えば、補助率1/2、補助上限50万円の補助金があったとします。投資の総額が150万円の場合、補助率の1/2は75万円となり補助上限50万円を超えるため、50万円しか補助されません。足りない100万円は自己負担となります。また、補助の対象となるのは本体部分のみで、消費税部分については全額自己負担になる点も注意しておいた方が良いでしょう。
公募期間
補助金の申請書や必要書類を揃え、申請できる期間が公募期間です。公募期間は短いことが多く、二週間から長くても2ヶ月ほどがほとんどです。そのため、公募が始まってから準備しても間に合わない可能性があります。多くの補助金は毎年公募されたり年に数回公募されるため、公募が始まる前に準備することが大切です。
要件
補助金は申請できる企業の要件が定めらており、全ての企業が補助金に応募できるわけではありません。そのため、事前に自社が要件に合致しているか確認が必要です。また、補助の対象となる経費も細かく定められています。そのため、補助金を使おうとしている経費が補助の対象になっているかの事前確認も必要です。
入金のタイミング
補助金の入金のタイミングは遅いこと多いです。多くの補助金は、申請→採択→着工→支払い→検査→報告→入金の順になります。つまり、一旦は全額を自己で調達し、支払います。その後に補助金が入金されるという流れになります。そのために資金繰りが厳しくなる恐れがあります。そこで利用したいのがつなぎ融資です。つなぎ融資は補助金が採択された後に実行されることになりますが、その分金融機関にとって貸倒のリスクが低く、企業からすれば借りやすくなります。
専門家の利用
メジャーな補助金は認定支援機関という専門家の支援を想定しており、認定支援機関の確認書が申請書類として必要とされています。実際、一部の補助金は年々申請書のレベルが上がっており、中小企業が自力で採択されるレベルの申請書を作成するのが困難な面があります。専門家の支援を受けるには一定の報酬が必要となりますが、採択されれば経済的利益は大きいものがあるので、自信がない方は利用を検討してもよいでしょう。
専門家の利用については下記の記事も参考になるでしょう。
なお、あらたま会計事務所も認定支援機関ですのでご興味があればお問い合わせください。
補助金を使うメリットとデメリット
メリット
補助金を使うメリットの第一は、いうまでもなく補助金を得られることです。補助金によって1/2や3/4など補助率は異なりますが、企業にとって経済的負担が軽くなるのは大きな魅力でしょう。
メリットの第二は、企業の戦略をブラッシュアップできることです。申請書には補助事業に関する事業計画を記載します。事業計画には外部環境や自社の課題、それに対する解決策などを分析して記載します。これを専門家と話し合っていく中で、より実現性の高い投資計画にすることができます。
デメリット
デメリットの第一は、不要な投資を誘発しかねない点です。つまり、補助金目当てに本来はする必要のない投資をしてしまい、結果失敗するというものです。元々する予定の投資に補助金が使えるのであれば積極的に利用すべきです。しかし、本来予定がなかったのに、補助金が使えるからといって不必要な投資をしてしまえば失敗の可能性が高まります。これは事前に専門家とよく打ち合わせすることで回避できます。
この点については下記の記事で詳しく解説しています。
デメリットの第二は、相応の時間や労力が取られる点です。専門家を利用する場合でもヒアリングや資料準備で時間が取られますし、自力で作成しようとするならなおさらです。また、無事採択された後も検査対応や年度ごとの報告、資料保存など見えにくい負担があることも頭の片隅に入れておきましょう。
デメリットの第三は、専門家を利用する際に費用がかかる点です。一般的に着手金+成功報酬の形態が多いです。採択されれば費用以上のお金が入るので損はしませんが、無料ではないのでデメリットと言えるでしょう。
デメリットの第四は、投資のスケジュールに制限ができてしまう点です。つまり、補助金が採択された後に工事に着手しなければ補助の対象外となる可能性がある点です。一部事前申請により採択前でも補助の対象となるケースもありますが、この場合は不採択の場合は全額自己負担になるというリスクを負うことになります。
デメリットの第五は、補助金部分に税金がかかるという点です。補助金は企業にとって課税所得になります。そして補助金は高額になることが多いです。そのため、補助金を受領した年は多額の法人税を支払う可能性があります。こちらについては圧縮記帳という税務的なテクニックを使って補助金に課税されないようにする方法が取れる場合があります。しかし、この場合は設備の額が減るため、翌年以降の減価償却費が減るため翌年以降の課税所得が増えるという点は頭に入れる必要があるでしょう。
補助金のデメリットについては下記の記事でも解説しています。
自社に合った補助金の見つけ方
補助金は国や都道府県、市町村が実施主体となり、単純な補助金の数で言えば膨大な数に上ります。その中から自力で自社に合った補助金を選ぶのは難しいです。常に補助金にアンテナを張り巡らしているなら別ですが、ほとんどの経営者の方が本業で忙しいでしょう。そのため、効率的な入手方法をいくつか紹介します。まずは、顧問税理士など専門家から教えてもらう方法があります。補助金の多くは認定支援機関の支援が必要と書きました。認定支援機関は税理士以外にも士業が登録していることが多いです。補助金を支援している認定支援機関であれば補助金の情報に詳しいので、タイムリーに自社に合った補助金を教えてくれるでしょう。次に、地元の商工会議所に入会するという方法があります。毎月届く会報で主要な補助金を知ることができます。また、業界団体に所属していれば、そこで使えそうな補助金がアナウンスされることもあります。別の方法では、J-Net21など補助金に関する情報を配信しているメルマガに登録するという方法もあります。
どんなに有利な補助金でもその存在を知らなければ使いようがありません。なるべく労力をかけずに補助金の情報を入手できるよう、効率的な方法を選びましょう。
なお、あらたま会計事務所でも主要な補助金を紹介しているのでぜひご参照ください。
まとめ
・補助金には補助率や上限額が定められている。
・公募期間は短いことが多く、事前に準備することが大切。
・事前に要件や補助の対象経費を確認する。
・入金のタイミングは遅いため、つなぎ融資も選択肢に。
・申請書の自力作成はハードルが高く、専門家の利用も検討する。
・メリットだけでなくデメリットもある。デメリットを正確に知った上で利用を検討する。
・補助金の情報を自力で取得するのは困難。効率的に入手できる方法を選ぶ。